Kate Bush 「The Kick Inside」(1978)

 ハイトーンで暴れる歌声が痛快なデビュー作。
 


 ケイト・ブッシュが19歳で発表したデビュー作。Wikiによれば16歳でピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアと出会い、2年かけてレコーディングとある。才能あふれる美人の女子高生と二年間を過ごすって、なんとロリ・・いやいや贅沢・・いやいや、なにをやってた・・・いやいや、丁寧に作られたアルバムだ。
 しかもアルバムはギルモアとアンドリュー・パウエルの双頭プロデュース。同年2ndからはギルモアがプロデュースから降りてしまう。ほんと、何をやってたんだギルモア。もっと早く手を引いてたら、もっと早くアルバム発表されてたのかね。

 ファルセットも使い、軽やかかつ悪魔的なブッシュの歌声が、本盤で最大の魅力だ。演奏はシンプルなバンド・サウンド。むやみに分厚くもならず、あっさりと歌声を支えた。
 コケティッシュな魅力を持ちつつ、低い声までフルレンジで歌える驚異的な歌唱力は、なまじアレンジに埋もれてない分、本盤がもっともシンプルかつたっぷりと味わえる。2nd以降はどんどんとコーティングが丁寧になるが、本盤はまさに粗削り。コンセプトに頼らず楽曲だけが淡々と連なる。
 リバーブをうっすらまとい、きいきいと跳ね続ける歌声。その強烈な個性が、とにかく脳裏にこびりついた。

 二人のドラマーが軽快にビートを紡ぐ。本盤をぼくが聴いたのは発売から10年後くらい。完全に後追いだ。飯島真理が"ライオンハート"をFMラジオのライブで披露して興味持ち、本盤を買いに行った。たまたま本盤しか、レコ屋に無かったんだ。オリジナルとは違う写真。本稿冒頭写真の左のほう。アメリカ盤らしい。だからどうも、飾りっ気なく不思議ちゃんの盤って印象が、頭に残ってる。オリジナルが冒頭の右のほう。これはこれで、間違えたオリエンタル風味の異様なイメージな写真だが。

 本盤収録なデビュー・シングル"嵐が丘"のプロモ・ビデオがある。空手の組手や体操みたいにやたら動きがでかい、小劇場みたいなダンスが独特なセンスだ。すっとんきょうな表情も含めて、振り付けは彼女の好みかな。
 むしろ繊細で内省的な印象の歌声だが、こういうビデオ見ると途端にユーモアと躍動性が増す。
 

 2ndシングル"少年の瞳を持った男(The Man with the Child in His Eyes)"のほうが、むしろイメージに合う。やはりセクシーってよりヘルシーな、エアロビを連想させる動きもあるけれど。


 楽曲は粒ぞろい。あっさりとおざなりなほどのアレンジなため、どの楽曲もテイストが似通ってるけれど、メロディは楽曲ごとにがらり表情を変えていく。(12)のサビで高らかに跳ね上がる世界観がかっこいい。ずいぶんと素朴なアレンジで盛り上がりに欠けて惜しい。

 なお本盤に至る前、200曲もの膨大なデモを作ったそう。ブートで聴ける。Youtubeで聴いた(1)のデモは、単なるピアノの弾き縣理でなく、ダビングも施された本格的なデモ。だがアルバムほど、アレンジが厚くない。歌声の爽快さはそのままのため、素直にこのデモが聴ける。


「Kate Bush demo」で検索するといい。いろんなのが出てくる。例えば、こんなの。こっちは荒っぽい音質でいかにもデモ。しかしハーモニーはつけ、歌の肝となる要素はきっちり魅せた。


Track listing:
1. 天使と小悪魔(Moving)
2. サキソホーン・ソング(The Saxophone Song)
3. 奇妙な現象(Strange Phenomena)
4. 風に舞う羽根のように(カイト) (Kite)
5. 少年の瞳を持った男(The Man with the Child in His Eyes)
6. 嵐が丘(Wuthering Heights)
7. ジェイムズ・アンド・コールド・ガン(James and the Cold Gun)
8. フィール・イット(Feel It)
9. 恋って何?(Oh to Be in Love)
10. ラムールは貴方のよう(L'Amour Looks Something Like You)
11. ローリング・ザ・ボール(Them Heavy People)
12. 生命のふるさと(Room for the Life)
13. キック・インサイド(The Kick Inside)

Personnel:
Kate Bush - songwriter, piano, composer, keyboards, vocals, background vocals
Ian Bairnson - guitar, vocals, background vocals, bottle
Paul Keogh - guitar
Alan Parker - guitar
Paddy Bush - harmonica, mandolin, vocals
Duncan Mackay - organ, synthesizer, keyboards, electric piano, clavinet
Andrew Powell - synthesizer, keyboards, bass, electric piano, producer
Alan Skidmore - saxophone
David Paton - bass, acoustic guitar, background vocals
Bruce Lynch - bass
Barry DeSouza - drums
Stuart Elliott - drums
Morris Pert - percussion
David Katz - violin, orchestra contractor

David Gilmour - executive producer on "The Man with the Child in His Eyes" and "The Saxophone Song"

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