TZ 7373:John Zorn "Filmworks XXIII: el General"(2009)

 切ないミニマル風味のラウンジ型アンサンブルが聴ける映画音楽。

 ジョン・ゾーンの映画音楽集、第23弾はNatalia Almada監督"El General"のサントラ。

 ゾーン特有の順列組み合わせによる疑似バンド編成だ。オリジナル・アルバムで本編成が既に存在するかは確認できず。バーガーのリーダー作"Lost Photograph"(2002)に、マーク・リボーが加わった編成、ともいえる。

 しとやかなラウンジ・ミュージックを奏でた。フレーズがかなり譜面で構築され、同じ旋律が幾度も淡々と繰り返される。そしておもむろに短いアドリブ・ソロが披露される構成だ。ロブ・バーガーのスケール大きい抒情性が、ピアノやアコーディオンで滑らかに包まれる。
 さらにリボーの整ったギターが空間を清廉とかき回した。そのうえケニー・ウールセンは時にビブラフォンやマリンバでメロディ役も務める。
 三者三様のリーダー楽器が存在する、アンサンブルだ。淡々と着実に低音でしめるグレッグ・コーエンの確かさもばっちり。

 本盤のきっかけは、監督がマーク・リボーの知り合いでゾーンに話がつながったらしい。08年は夏までで既に4本の映画音楽を書き、うんざり気味のゾーンだったという。
 もともと監督はSundanceのワークショップ(これのこと?)で映画音楽を探す予定だったが、うまくいかず。さらに紆余曲折あり、ゾーンが音楽を担当となった。監督はもともと音楽にも意見を言いたかったらしいが、結局はゾーンが自由にさっくり一日で録音素材をつくる、独特の制作プロセスを受け入れたとライナーにある。
 ゾーンは映画二作分の楽曲を書き下ろし、没曲はDreamers"O'o"(2009)に投入されたそうだ。

 録音はゾーン主体で行われ、監督へ送ったメールには「暫定のミニマルな音楽(フィリップ・グラスをつかってたそう)よりも、もっとドラマティックさが似合う。テンポもスローより、アップが良い。前へ進んでいいかな。キャンセルなら今のうちだよ?」とあったそう。
 つまり監督の意向と全く異なる音楽をゾーンは手配した。そして監督は音楽を聴かず、「Adelante!(どうぞ前へ!)」と一言の返事を返したとある。

 映画のテーマは20世紀初頭のメキシコ大統領プルタルコ・エリアス・カリェスのドキュメンタリー。独裁者、で良いのかな。Wiki見る限り、市民にとって良い政治家とも言えなかったみたい。トレイラーはこちら。

 映画のフルサイズはこちらで見られる。
https://vimeo.com/92270451

 ライナーでゾーンは「監督の意向と逆」と書きつつも、本盤で聴ける音楽はミニマルな要素が滲んでいる。情感あふれるメキシカンなメロディ・ラインが噴出しつつも、端正で穏やかな雰囲気と、酩酊するような連続性あるフレーズ。淡々とテーマやパターンが繰り返され、おもむろに展開されるアドリブ・ソロ。
 情感と統制と自由と制約。様々な要素が、詰まって聴こえる。

Personnel:
Rob Burger − piano, accordion
Greg Cohen − double bass
Marc Ribot − electric guitar, acoustic guitar
Kenny Wollesen − drums, vibraphone, bass marimba


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