TZ 8323:John Zorn "Valentine’s Day"(2014)

 ハードコアな十二音技法な曲集を、ドラム入れて再演した。

 楽曲は"Enigmata"(2011)の再演。(8)でブライトな音色になるところも同じだ。奏者のマーク・リボーとトレバー・ダンも同じ。

 かなり作曲されてるようで、冒頭の旋律はすべて同じ。曲のタイム感もさほど両作で変わらない。完全に聴き比べたわけではないが、"Enigmata"でギターとベースのデュオにドラムを混ぜて、さらにハードコア要素を増し、ダイナミズムを強調した。

 ジャケットにはジョン・ゾーンが指揮とクレジットあり。バンド的なダイナミズムは薄く、かなりゾーンの意思が込められた楽曲だ。だがなぜ、このタイミングでこの曲集を、改めて編成変えて再演したかはわからない。あんがい単にドラムを入れたときの面白さを試みたくなり、さくっと録っただけかもしれない。
 
 ただし確かに、ドラムが加わって奇妙な「喧しいわかりやすさ」が付与された。
 セリー音楽をディストーション効いたエレキギターがわめくことで、抽象性や取っつきにくさを消すのが前作のアプローチだった。本作はドラムが足され、よりアグレッシブで即興っぽい迫力が増している。

 実際は複雑な譜面をそのまま弾いていたとしても、剛腕なエレキギターと打ち鳴らされる手数多いドラム、そして蠢くベース。三位一体の骨太な凄みが、この取っつき悪い曲群を、即興っぽいスピーディで過激な印象の盤に仕立てた。

 "Enigmata"も面白かったが本盤のほうがインプロ好きには、すんなり馴染めると思う。まさに斬り合いをしているかのよう。譜面物のようだが。
 前作でギターやベースの弾いてたフレーズをドラムに分け与え、よりアンサンブルが複雑にアレンジされた。
 主旋律は一応エレキギターだが、メロディと伴奏の構図でなく、ドラムやベースと主軸を分け合う場面もしばしば。

 "Enigmata"と同じくジャケ裏には"Res ipsa loquitur, sed quid in infernos dicet(事実そのものが語る、だが地獄では何と語られる?)のラテン語が記された。正確になんと訳せばいいのか、よくわからない。引用されたラテン語に関しては、このブログが興味深い。
http://www.kitashirakawa.jp/taro/?p=3387

 しかしエレキギターの歪みがもつロックなニュアンスは強烈な説得力だ。複雑な旋律や展開をすべて、なんとなくインプロ的な暴力性へ強引に翻案してしまう。
 予備知識なしで本盤を聴いたら、ギター・トリオの即興に聴こえるはず。ハードコアで整合性ある、ちょっとひねったアプローチの旋律使いって感じで。ビシバシ決まるフレーズ展開は息が合ってるなあ、と。とても緻密な譜面物とは思うまい。
 
 ジョン・ゾーンの狙いはわからない。けれども複雑なものを、一回りして取っつきやすくするアプローチは、単純に面白い。
 そもそも音楽そのものがドラムも加わり、かっこよさを増したしね。

Personnel:
Trevor Dunn: Electric 5-string Bass
Marc Ribot: Electric Guitar
Tyshawn Sorey: Drums

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