Curtis Mayfield 「Honesty」(1983)

 再び仲間うちで作った良盤。しかし時代の趨勢とは乖離した。

 本盤が出た83年のヒット・シングルは、"Down Under"Men at Work、"Billie Jean"Michael Jackson、"Flashdance... What a Feeling"Irene Caraなど。派手なMTV時代の到来だ。そんな時代に、誠実だが地味で優しいアルバムの本盤は、まったくマッチしていなかった。ずっと聴き洩らしてたが、惜しいことした。

 前作"Love Is the Place"(1982)はDino Fekarisを共同プロデューサーに立て、スタジオ・ミュージシャンを集めて隙の無いアルバムづくりを目指した。だがコマーシャルなヒットを得られなかった反動か、本作はRich Tufo(key)、Joseph Scott(b)ら昔なじみを集めて、たぶん好きなようにカーティスが作り上げた。
 リリースは前作同様、The Boardwalkから。もとブッダの役員、ニール・ボガードのレーベルだ。カーティスとはブッダ時代の知り合いかな。

 アルバムはシンセを使いながら、生演奏も捨ててない。トロピカルで高音強調のアレンジは、華やかな世界を作った。今聴いても、古びない魅力あり。とはいえ70年代後半のイメージがどうしても抜けない。これが83年の盤とは・・・。カーティスはどこか、時代との接点をなくしてた。作り上げる音楽は、素晴らしいとしても。

(1)はマーヴィン・ゲイっぽいニュアンスも漂った。"セクシャル・ヒーリング"を意識してそう。シンセで弦や管を代用したチープさは、流行だとしても今では安っぽい。シンセを代用物でなく、代替と捉え新たなニュアンスを模索したマーヴィンと、今一つ違う。
 途中で生のホーンを足すセンス、コンガをぐっと前に置くカーティス流の意地など、アレンジには聴きどころもあり。

 (2)シティ・ポップ風で、チョッパー気味のベースが古臭いが、跳ねてて心地よい。ちょっとテンポが遅めだけど、この整ったアンサンブルの演奏も、さりげないカーティスの歌声も良い曲だ。シングルでもいい。
 エンディング間際のナンバー1になりたい、とだんだん階段上っていくような歌詞と曲のムードもかっこいいな。多重ボーカルがきれいだ。

 伸びやかなカントリー風ソウルな(3)も多重ボーカルのコーラスが良い感じ。コンガの乾いた響きが、広々と素朴な風景を爽やかに描く。ハーモニカも彩りを添えた。あえて打ち込みにせぬ、ホーン隊の柔らかい響きと、エレキギターのボトルネックのオブリ。
 隅々まで音を詰め込み、ふっくらした音像を作った。
 カーティスのファルセットがきゅっと前に出て、地味だがほのぼのした楽曲を丁寧に飾った。
 
 ドゥワップっぽい(4)は、逆にハーモニーを抑えて物足りない。これこそ分厚いコーラスが似合いそうなのに。インプレッションズを思い出す。もちろんサビではハーモニーつくけど、物足りないんだよ。
 83年の派手な時代に、本盤のような音楽が出ていたとは。リアルタイムでさっぱり気が付かなかった。

 (5)は70年代ニュー・ソウルの香りがどっぷり。弦も管も当時の様相を振りまき、スリリングな雰囲気をばらまいた。録音技術の向上か、すっきりした音像が逆にイミテーションくさい。下手くそで猥雑なムードそのものが、ニュー・ソウルのうさん臭い魅力でもあったし。
 イントロは長く、じっくりと高めていく。歌声が入ってきても、まるでバック・コーラスのよう。この気配消したムーディさも、カーティスの魅力と言えなくもないけれど。
 ラップのようにしなやかな歌声も、いい感じ。
 
 ひときわラテン風味が前に出た(6)で、不思議なムードを出した。ビートに途切れは無いけれど、変な浮遊感がいっぱいだ。ダブ風、もしくは酩酊さというか。いきなりフッと音楽が切れそうな危うさを、聴くたびに思う。レゲエの裏拍ビートをあえて強調せず、しかし構造はレゲエ。そんな、ユニークなアレンジ。
 メロディはシンプルで、ただただ、畳みかける。今聴くと面白い。
 
 アルバム最後の(7)はシンセの弦っぽい響きと、ホーン隊を融合させた。80年代風に70年代ソウルを再解釈した、自己再生産なアレンジ。カーティス流のシカゴ・ソウルへシンセを大胆に取り入れた、ともいえる。
 スリルが減じ、甘さを増したとこがパンチ力に欠ける。
 本来、もっともカーティスらしい楽曲だし、往年サウンドを求めるときに似合うのに。薄っぺらいシンセのせいか。ぱしゃぱしゃと軽薄に鳴るリズム・ボックスのせいか。
 アルバムを締めるには、ちょっと物足りない。

Track listing:
1."Hey Baby" 4:42
2."Still Within Your Heart" 4:24
3."Dirty Laundry" 4:07
4."Nobody But You" 4:41
5."If You Need Me" 5:06
6."What You Gawn Do" 5:25
7."Summer Hot" 5:13

Personnel:
Curtis Mayfield - vocals, guitar
Michael Ingram - percussion
Joseph Scott - bass
Harry Hagan - trombone
Morris Jennings - drums
Rich Tufo - clavinet
William Puett - alto saxophone, flute
David Arenz - violin
Christopher Rex - cello
Frances Jeffrey - violin

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