Sonny Rollins 「Road Shows, vol. 3」(2014)

 21世紀の12年(!)を通覧したライブ集の第三弾。

 超ベテランの長いキャリアを痛感するシリーズだ。01年から12年まで5ヵ所6曲のライブ音源を収録した。ここでは新分野開拓よりも、伸び伸びと好きな音楽を披露する楽しさが詰まった。
 ロリンズ71歳から82歳の記録。敬意を表し、寛いで聴く盤だ。だが現役感バリバリ。営業っぽいおざなりさや、息切れ感が無い。タフさと脂っこさにしびれる。

 なおこの盤、編集も良い。拍手が長く続き、きれいに次の曲へ。切れ目がわかりづらい。12年の時代を経つつ、同じ日のように表現した。実際にはテナーの音色で時代は感じるけれど。

Track Listing:
1.Biji 8:32
2.Someday I'll Find You 15:19
3.Patanjali 12:26
4.Solo Sonny 8:31
5.Why Was I Born? 23:39
6.Don't Stop The Carnival 4:22

 演奏は破綻無く、ロリンズのサックスも甘く太く鳴る。だがデータを見てると面白い。
 以下のようにメンバーが曲ごとに違う。共通するのはボブ・クランショー(b)と、近年にパートナーであるクリフトン・アンダーソン(tb)のみ。のんびり大人の(爺さんの)ジャズを楽しみながら、思ったことをメモしておこう。

1.Biji (Rollins)
 
 "Sonny Rollins + 3"(1995)で発表のオリジナルで、ちょっとラテン風味。アルバムはトミフラ参加のピアノ・カルテットだったが、本盤はトロンボーン入りで小粋さを強調した。パーカッション参加はロリンズ・バンドならでは。ロリンズ・バンドって書くと、違うハードコアを連想しちゃうな。
 ライナーによればこの時期、この曲はコンサートのクライマックスで演奏してたそう。

 01年と本盤で最も古い(?)音源で、なんと日本公演。ソロごとに律儀な拍手あると思ったら、そういうことか。01年11月11日、さいたま市文化センターでのライブ。たぶん大ホール、キャパ2000人のハコだ。
 基本を外さないスイング感あふれるジャズは、どこか古めかしい。だが場面ごとにリズム・パターンを変えて変化つける躍動性と、丁寧にソロ回しするお行儀良さが同居した。
 ライブ・メンバーは"This Is What I Do"(2000)の7/29セッション・メンバーにKimati Dinizulu(per)を加えた。彼の当時のツアー・バンドかな。

Sonny Rollins - Tenor Saxophone
Clifton Anderson - Trombone
Stephen Scott - Piano
Bob Cranshaw - Bass
Perry Wilson - Drums
Kimati Dinizulu - Percussion



2.Someday I’ll Find You

 "Freedom Suite"(1958)で取り上げたノエル・コワードの曲。06年5月15日、仏トゥルーズのHalle aux Grainsにて。ここもアドリブごとに拍手はきっちりあり。
 (1)から5年後。クリフトン・アンダーソン(tb)と2管編成はそのままに、ピアノを抜いてギターを足した。さらにドラムも変わってる。けっこうロリンズは時代ごとで、メンバーだけでなく編成も弄ってるのが興味深い。70歳過ぎて、まだ変化を求める脂っこさか。

 緩やかなムードのジャズで、ロマンティックに仕立てた。ロリンズのソロは緩急決めながら、迷いなくふんだんにメロディが溢れて心地よい。さらにきっちり楽器を鳴らしており、柔らかなリードを操ってきれいにタンギングも決めた。7分過ぎでリードミスっぽいフレーズあるのもご愛敬。激しさは無いが、生き生きしてるのがさすが。

 ロリンズ一人でステージを仕切れるが、敢えてトロンボーンを残すのはなぜだろう。ロリンズがヘタった時の保険かな。音楽的にはトロンボーンの必然性が薄い。

Sonny Rollins - Tenor Saxophone
Clifton Anderson - Trombone
Bobby Broom - Guitar
Bob Cranshaw - Bass
Victor Lewis - Drums
Kimati Dinizulu - Percussion

3.Patanjali (Rollins)

 オリジナルだがスタジオ盤には未収録で、本盤のみにて聴ける曲。この後に及んで新曲投入までしてライブ・アルバムを仕上げるか。つくづく現役感ある。
 本盤でもっとも最近の12年7月25日、仏マルセイユのPalais Longchampにて。残念ながらブレスやタンギングがちょっとぬるい。年齢的なものか、たまたまか。
 メンバーはギター入り6人編成はそのままに、(2)からギター、ドラム、パーカッションが変わってる。もっともKimati Dinizulu(per)は翌2013年に他界、変更はやむを得なかったのかも。

 ドラムのタイトな突っ込みがまず耳を弾く。着実でメロディアスなベースと、間をおかず細かなフレーズを足すギターを、エイトビートっぽいリズムで前のめりにドラムは引き締めた。パーカッションはコンガかな。彩りをビートに加えた。

 ロリンズは思い切り長尺のソロで、時折考え込むようにフレーズを繰り返してくロリンズ・スタイル。はじけっぷりがちょっと物足りないが。アドリブの終わり方も、力尽きるように唐突な崩れ方。少々衰え気味ながら、達者なソロだ。決しておざなりじゃない。ほんとすごい。
 ギター・ソロにつながり、直後にクロス・フェイドでもう一度テナーのソロへ。軋みながら、ロリンズはもうひと踏ん張り。トロンボーンの出番は?と思ってしまう。元気で我が強いよな。

Sonny Rollins - Tenor Saxophone
Clifton Anderson - Trombone
Peter Bernstein - Guitar
Bob Cranshaw - Bass
Kobie Watkins - Drums
Sammy Figueroa - Percussion

4.Solo Sonny (Rollins)

 本盤最大の聴きものにして、ロリンズの至高。09年9月19日、ミズーリ州セントルイスはBlanche M. TouhillPerforming Arts Centerでのライブ。
 無伴奏ソロだ。ライブ一本を無伴奏で通したわけじゃないが。

 8分間、ソロでロリンズは吹きまくる。もごもごとフレーズを揺らし、次の瞬間深く強く響かせた。
 ホールの残響をたっぷり生かし、テンポも小節も解体した自由な展開。だがコード感は残し続けてる。5分過ぎでのひねるようなフレージングが心地よい。7分過ぎに出てくる曲は何のメロディだっけ?思い出せない。

 即興的なフレーズで、ときおり曲を演奏してるっぽい場面も現れる。さすがの貫禄だ。

 なおクレジット上は独奏名義ながら、7分半過ぎからバンドが加わりコーダを支えた。

Sonny Rollins - Tenor Saxophone

5.Why Was I Born

 違う意味で、本盤の聴きもの。23分以上の長尺で、たっぷりと暴れるロリンズを堪能できる。
 録音は07年8月11日仏マルシアックはLe Chapiteauでのライブ。同地でのジャズ・フェスに出演の音源だ。当時の記事はこちら
 
 曲は"Here's to the People"(1991)で録音した、ハマースタイン二世とジェローム・カーンのスタンダード。なにげに曲を使い捨てず、きちんとそのあともレパートリーとして演奏し続けてるなあ。

 バンドのメンバーは(2)から1年たった時点で変化しており、ドラムがスティーヴ・ジョーダンに変わった。まさに"Here's to the People"(1991)でのドラマー。もっとも長続きせず、(3)の時点でKobie Watkinsへドラムは変わってしまう。

 リズムは軽快、4ビートを支えつつスネアが音数多めに鳴る。あいまにコンガが足され賑やかだ。ぐいぐいとベースが揺らぎグルーヴに味をたっぷり足す。ギターも止まずにブライトな音色でアンサンブルに幅を出した。

 4分20秒からロリンズのアドリブが始まる。4バーズ・チェンジをドラムとかましながら、ずっとソロが止まらない。約20分、最後まで吹きっぱなし。あれまあ。

 フレーズはところどころで燃料切れっぽいタレたところもあるけれど。なんというか、元気すぎ。若手に場所を譲れ、と突っ込み入れたくなる。リーダーシップを明確に、しっかり取り続けたテイクだ。

Sonny Rollins - Tenor Saxophone
Clifton Anderson - Trombone
Bobby Broom - Guitar
Bob Cranshaw - Bass
Steve Jordan - Drums
Kimati Dinizulu - Percussion

6.Don’t Stop the Carnival

 録音は(3)と同じ12年7月25日、仏マルセイユのPalais Longchampのライブにて。
 トラッドらしい曲はスタジオ録音は未発表が続いたが、ずっと演奏され続けてたようだ。
 "What's New?"(1962)セッションのアウトテイクでまずスタジオ録音。復刻されるまで、きちんと日の目を見たのは
 そのあいだロリンズはライブ盤で幾度も発表してきた。"Island Lady"(1977),"Don't Stop the Carnival"(1978),オムニバスの"Milestone Jazzstars In Concert"(1979),ロリンズ単独名義の"G-Man"(1987)、そしてオムニバス"Dream Teams"(1994)。とても大量のテイクがある。

 ライブのクロージング・テーマ曲って位置づけかな。観客は拍手喝采、手拍子で応えてる。ほんのりカリプソ風味で2バーズ・チェンジでトロンボーンとアドリブを分け合い、ほのぼのと和むジャズを聴かせた。
 
 まさにこの曲こそ、よけいな解釈はいらない。スラー連発の指まかせなフレージングをにこやかに聴きたい。

Sonny Rollins - Tenor Saxophone
Clifton Anderson - Trombone
Bobby Broom - Guitar
Bob Cranshaw - Bass
Steve Jordan - Drums
Kimati Dinizulu - Percussion


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