Sonny Rollins 「East Broadway Run Down」(1966)

 数度目の隠遁寸前、フリージャズを振り捨てた一枚。

 Impulse!での最終アルバムとなった本盤は、コルトレーンのリズム隊二人を招いた。A面は長尺1曲、フレディ・ハバードと2管ピアノ無し、B面は1ホーンでがっつりとロリンズは吹いた。
 A面ではロリンズがマウスピースのみで吹く変則奏法も取り入れてる。本盤で改めて、時代を睨んだ鋭いジャズへ立ち位置を求める、可能性を追求か。
 
 RCAビクター時代に"Our Man in Jazz"(1962)でドン・チェリーと共演、フリージャズに興味を示しつつも、根本でロリンズはコーダルな旋律感あふれるアドリブから大きくずれなかった。Impulse!移籍した2枚のアルバムは、サントラに目配りしたりと活動のすそ野を広げつつ、オーソドックスへ向かおうとしたのに。
 もっとも本盤もフリージャズの再挑戦よりも、コルトレーンへの対抗に聴こえる。奴の音楽スタイルを、おれならこう表現するってふうに。

 だがしっくりこなかったか、ロリンズは数度目の隠遁に突入し、Milestoneで復帰後はフュージョンへも大胆に寄り添い、自らの豪放なサックスそのものをセールス・ポイントにブランド化し、伸び伸びと肩に力入れない活動へ進んでいく。

 テクニック的にも我の強さからも、ロリンズはフリージャズな世界にも行けたはず。だがコルトレーンとの差別化を図ったか。結局、神格化よりも末永い活動で、着実な伝説をゆっくりと作り上げた。このロリンズの生き方も、素晴らしい。生きていてこそ、味わえる音楽もある。だが甘さに流れる前に、こういうアルバムを残してくれたことも嬉しい。ロリンズの振り幅広さを明確に楽しめる点で。

 あえてアルバム一枚をトリオにせず、片面にトランペット入れたのはレーベルの判断か。正解だと思う。あまり二管の斬り合いは無い演奏だが、単調さを避けメリハリある盤に仕上がった。
 
 (1)の聴きものは、長尺で突き進むフリー寄り。ロリンズは吹きまくりとロングトーンのメリハリつける独特のスタイルで鷹揚にアドリブを重ねた。ちょっとタンギングを甘くして、コルトレーン風な風景もみせる。
 煽りまくるリズム隊に釣られず、独特なタイム感を貫くところがロリンズならでは。
 ハバードの存在はバラエティ付けの感じが強い。溌剌ながらうっすら影をまとったフレージングで、破綻無い存在だ。

 ロリンズが16分過ぎからと、17分半くらいからマウスピースのみで吹く場面は、実験狙いの堅苦しさより、音色や特殊奏法をそのものを面白がってるっぽい。
 特に後半のマウスピース場面には、うっすらと残響を加えた。したがって耳を貫く鋭さよりも、抒情的な雄大さや幻想性が付与される。なおテーマに戻るのはあまりにも早い。よくネックに刺せたな。特に2回目のほう。最初聴いたときは編集ありかと思った。

 (2)以降はせっかくのフリーも行けるリズム隊を、ぐぐっと自分の世界に引きずり込んだ。ねっとりのグルーヴ感なテーマで、オーソドックスな4ビートを作る。とうぜん跳ねて引っかかる粘っこいリズムを作る二人だが、なぜこの時期にこの二人?って疑問はわく。
 ちょっと色気を出した(3)は、演奏がこの中で最も良い。滑らかに太いロリンズのサックスも、爽快な音色だ。ほんのりラテン気味の小刻みなシンバル・ワークと、拍頭を叩きながら付点フレーズを緩やかにグルーヴさせるベースのコンビネーションも抜群。
 
 こうしてみるとこのアルバム、フリーとハードバップとラテン風味。いろんな要素を曲ごとに試しつつ、ロリンズ色をブレさせない盤だ。なぜロリンズはこのあと、沈黙に入るのか。マンネリズムの打破かな。

Track listing:
1."East Broadway Run Down" - 20:27
2."Blessing in Disguise" - 12:27
3."We Kiss in a Shadow" (Oscar Hammerstein II, Richard Rodgers) - 5:40

Personnel;
Sonny Rollins - tenor saxophone
Freddie Hubbard - trumpet (track 1 only)
Jimmy Garrison - bass
Elvin Jones - drums


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