ライブ感想:16/4/9  明田川荘之ピアノ・ソロ

自分のWebにアップしたライブ感想を、こっちにも書いてみる実験。
2016/4/9   西荻窪 アケタの店 
出演:明田川荘之ピアノ・ソロ

 普段と少し違うピアノ・ソロな夜だった。0時を少し回った頃合いで、ライブが始まる。
 硬質な鳴りで、少しびいんとうねる響きのピアノ。最初はとつとつと鍵盤に明田川は向かった。コツコツと、爪が鍵盤に当たる音が小さく響く。

(セットリスト)
1. ?
2.テイク・パスタン
3. ?
4. アローン・トゥギャザー
5. アフリカン・ドリーム
6. ?
(休憩)
7. フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン
8.  ?
9.  ?
10. りぶるブルース
11.オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート

 たぶん、こんな感じ。このところめっきり記憶力が減退している。
 まず一曲目はスタンダード、かな。聴きおぼえあるメロディ。リズムをまっすぐに、スイングしながら揺れない。残響もあるけれど、ペダルをほとんど踏まない印象だった。緩めのミドル・テンポで、明るく、しかし影をまとってピアノが奏でられた。

 これまで何度も明田川のライブや、CDを聴いてきたが。なんだかちょっと違う雰囲気だった。
 今夜はオカリーナ演奏が一切なし。内部奏法も後半で一回だけ、ざらりと弾いたのみ。終盤でクラスターな状況も飛び出したけれど、あまり奔放にはじけない。
 どこか内にこもり、静かなパワーが滲む。

 一曲終わったところで「椅子の具合が変わった」と、ちょっと調整。ピアノの上の明かりも消して、仕切り直した。ピアノの足元にも手を伸ばし、置かれてると思しきタンバリンやパーカッションらしき音も、ちょっと響く。位置を確認、かと思ったら。結局最後まで、これらに手も触れなかった。

 (2)の冒頭でペダルを踏む演奏。しかしこの曲、新鮮だった。キーも違う、のかな。これまで馴染みのメロディだが、フレーズ展開も和音の響きも、アクセントの位置もずいぶん違う。
 明田川の醍醐味の一つに、リフレインを重ねながら感情を没入させ、ぐいぐいとドライブさせていくところがある。今夜も同様の場面はあったが、なんだか硬い。大観衆の前で演奏するときは、また違うのかもしれないが。

 しっとりと、着々と奏でられるメロディ。アドリブでフレーズが展開しつつ、雰囲気は緊張が漂う。テーマがグッとテンポを落とし、じっくりと紡がれた。
 左手が跳ねない。拍頭をきっちり叩くように、まっすぐなノリを作った。グルーヴを内包させ、容易に表へ出さない。着実に、スイング感をじわっと滲ませた。
 この曲は結構長く演奏した。次第に演奏へ没入し、終盤にはがっつりと音楽をうねらせる。大きなストーリー性を持たせた。

 次がたぶん、スタンダード。なんて曲だっけ。思い出せない。ロマンティックな和音と情感あふれるメロディを、さりげなく明田川は披露した。朴訥な左手が、緩やかなノリを楽曲に加えた。
 今夜はほぼ、メドレーだった。そのあとの"アローン・トゥギャザー"も、重たかったな。ともすれば大グルーヴ大会でぐいぐいファンキーに盛り上がるこの曲だが、がっつり鈍く重たいムードを漂わす。それでもノリは溢れてくるのだが。

 前半のクライマックスが続く"アフリカン・ドリーム"。ピアノ・ソロで雄大な風景が、たやすく広がる。低音を唸らせ、高音が華やかに。
 唸り声も現れた。譜割を時に大胆にモタらせる。どの曲もがらり印象変わるレパートリーが続く今夜だが、この曲はもどかしい躊躇いをほんの少しだけ感じた。あとは、どっぷりと広がる。ただし完全に開放されないのは、やはりライブごとの雰囲気ってやつか。どんな観客かって状況でも変わるだろう。

 1stセット最後の曲も、聴きおぼえある。日本風味のこのメロディは、明田川のオリジナルだっけ?ある意味、ここまでの重苦しさをきれいに拭う。穏やかな雰囲気が広がった。
 だいたい45分。今夜はここでライブが打ち止めかと思ったら、「ちょっと休憩」と、まだ続けてくれるようすでビックリ。
「どっか違わない?」と一声かけてこられた。たしかにいつもと違うけれど、どう表現したらいいんだろう、こういう時は。体調が悪い、とかではないそうだが。

 調律して10分かそこら休憩して、後半セット。とたんにピアノの鳴りが落ち着いた。
 まずはリクエストに応えてくれて「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」を。初期のLPに収録のみ。あまりライブでもやってないみたい。
 しっとりムードで演奏のこの曲、ある意味リクエストのせいか、全く他の楽曲と違う雰囲気だった。コードを緩やかになぞる左手と、テーマをしとやかに奏でる右手。アドリブもテーマが崩され、そのままじわっとソロに向かっていく。破綻無く、きれいに。
 もともと全く弾く予定無い曲だったがゆえに、きれいにまとまる。他の楽曲が、憂いや陰りを匂わせてたのと対照的に、この曲だけは明るく滑らかに聴こえた。

 次はオリジナル。なんてタイトルだっけな。思い出せない。以下にライブをさぼってるか、だ。ゴツッとした情感が美しい曲。明田川流の情感が、ハードボイルドな色で染まった曲だと思う。
 これも左手は大人しめ。ゆっくりとランニングし、右手が曲を牽引する。そういえば今夜、ハードにドライブしまくる左手ってパターンは無かった。

 続く曲も聴きおぼえある。スタンダードかな。後半はオリジナルだったような気も。雰囲気は前の曲から地続きだが、和音や進行がおしゃれというか、明るい。
 演奏そのものは重たさを漂わせ、容易にグルーヴしない。目の前で聴いてると心地良いが、単純に夢見心地へ聴き手を連れて行かぬところが、ちょっと違うか。

 明田川のピアノ・ソロの醍醐味として、自由なグルーヴもある。リズムや共演者が無いゆえに、テンポもビートも自由だ。ぐいぐい時空を自分のノリに引き込み、聴き手を没入させる。その剛腕さが、深夜の雰囲気もあいまって、ゆるやかな夢見心地を味あわせてくれるのだが。今夜は歯ぎしりするような、絞り出す強さをそこかしこに漂わせた。甘やかな和音と、優しいタッチにはまると、よけいなことは考えず演奏に深く引き込まれていくけれど。

 次もリクエストで"りぶるブルース"。ぼくはこの曲が、すごく好き。
 「11小節展開で難しいんだよな」とぼやきつつ、演奏が進む。訥々なフレージングと、ロマンティックなメロディが交錯するこの曲だが、今夜はいくぶんパーカッシブなアプローチ。左手が断続的に跳ね、情感を容易に溢れさせない。
 これもリクエスト曲のわりに、じっくり演奏してくれた。終盤ではクラスター風味にはじけ、豪快に展開した。

 終わりかと思いきや、さらにもう一曲スタンダードを。オカリーナの雑誌で連載コラムの次回テーマにこの曲を取り上げて、自分のアドリブをちょうど採譜してたとこだそう。もっともオカリーナは今夜登場せず、すべてピアノでの演奏だった。
 左手が力強く鍵盤を押さえ、岩のように固くざらついたノリを作り出す。右手も奔放にメロディを紡いだ。最後はちょっとフリー気味に。一気にテンポを加速させた。

 終わってみたら2時近く。後半セットもたっぷり。もっと客で満載にならないかなあ、この深夜ライブ。すごく気持ちいいと思うけれど。

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