TZ 8032:Derek Keller "Impositions and Consequences"(2007)

 ロック要素を取り入れ、断片を積む現代音楽。どうも安っぽい。

 (1)は03年の楽曲で、デレク自身のエレキギターと、Cristyn MagnusのProgramming による幻想的な曲。ディストーション効かせ歪み倒したエレキギターが乱暴に鳴り、穏やかな電子音が断続的に広がって包む。
 ヘビメタと現代音楽の融合か。ギターは弾きっぱなしでなく、ループや音色加工してそうな場面も。即興でなくあくまで楽曲のようだ。最初は新鮮だが、ロック的なダイナミズムに欠けるため、炸裂も欲しくなる。この点はアカデミック寄りで中途半端。

 (2)-(8)は「アンプを通したフルート、ギター、チェロ、打楽器と器楽的な声」の副題がついた04年の作品。7楽章形式で抽象的な室内楽が提示された。
 アンプ加工のフルートは、尺八を連想する響きだ。メロディよりも音色や打音など全体的にパーカッシブなアプローチが強い。
 13分ほどの作品だが、楽章ごとにトラックを分けてくれたのが嬉しい。ともすれば聴き流しそうなところを、トラックの切れ目でメリハリついて構成を意識しながら聴ける。
 
 楽曲として非常に雅楽もしくは侘び寂びに通じるものを感じた。性急さや不協和音は異なるが、妙に間を意識するところや、フレージングの展開から。余韻よりも理解できぬ不可思議さを表現してるような風合いだ。
 淡々と盛り上がり無く、けれども変な高いテンションだけはぷんぷんと漂わせる。聴いてて寛ぎとは少々違うアプローチだが、日本人なら体の奥底の琴線へ、なんとなく振れない?親しみ感じるかは別として。
 数値的な冷たさや、理論優先の堅苦しさよりも奏者の即興っぽさを伺わせる、生々しさが特徴か。
 
 (9)は生ギターとパーカッション・カルテットの演奏。ばらつくフレージングや唐突な展開は即興よりも奔放な譜面って感じだ。前曲とは打って変わって、現代音楽風の構築度合いを感じた。その奥に、ランダムに鳴るパーカッションの響きや展開が、ガムランなどオリエンタルな打楽器音楽のエッセンスを強引に抽出、練りこんだ風にも聴こえる。

 テクニックや展開よりも神秘性を、パーカッションに求めてるかのよう。
 空間が小気味よく、しかし脈絡なく埋められていく。あまりカタルシスや物語性なく、ふっと聴き流してしまう。
 打楽器の残響を生かしつつも、余韻狙いでないため、少しばかりせわしない。

 (10)以降が11楽章に分かれた楽曲で、エレキギターのバンド編成っぽい楽曲。スキャット風の声やストリングスの音色も聴こえる。メロトロンのサンプリングかな?
 指揮者もクレジットあり、コブラ風にハンドキューで場面転換か。作曲のケラーは、ディストーション効かせたエレキギター演奏で加わり、指揮はせず。

 ぱっと聴きは、ハードロック的なフュージョンかチェンバー・プログレの断片に思えてしまう。どうも本盤はクラシック的な格調高さは無く、ロック要素を中途半端に挿入して安っぽい。
 ジョン・ゾーンが昔にやっていた、ファイル・カード式ともとれる。だがゾーンほどスピードや意外性が無い。むしろゾーンの鋭さや凄さを逆に実感する。本盤はゾーンのフォロワーもしくは模倣に聴こえてしまって。

 一応一発録りのようだが、こういう曲は構造やアイディアを明確に説明され、解釈しながら聴きたいな。いまひとつ、この曲もカタルシスが無い。

Track listing:
1.Attitudes...Self-Reflection (Version 2) 2003

Fear...Ever Present 2004
2.7
3.6
4.5
5.4
6.3
7.2
8.1

9.Morpheus 2000-1

Impositions and Consequences 2005-6
10. b3
11. D1
12. Improvisation over AJ
13. AM
14. Improvisation over ONM #1
15. AJ
16. Cd2
17. Improvisation over ONM #2
18. Improvisation over AM
19. Ac4
20. Ba


Personnel:
Cristyn Magnus: Programming (tracks;1)

Noise with conducting - Harvey Sollberger (tracks: 2 to 8)
Cello - Carolyn Lechusza Aquallo (tracks: 2 to 8)
Flute - Lisa Cella (tracks: 2 to 8)
Guitar - Colin McAllister (tracks: 2 to 8),
Percussion - Rob Esler (tracks: 2 to 8)

Red Fish Blue Fish with conducting - Steven Chick
Percussion - Aiyun Huang,Ivan Manzanilla,Morris Palter,Greg Stuart

Conductor - Fabio Fonseca De Oliveira (tracks: 10 to 20),
Double Bass - Scott Walton (tracks: 10 to 20)
Drums - Nathan Hubbard (tracks: 10 to 20)
Guitar - Derek Keller (tracks: 1, 10 to 20)
Piano, Mellotron - Christopher Adler (tracks: 10 to 20)
Saxophone [Baritone] - Alan Lechusza (tracks: 10 to 20)

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