Konchuuki (2015:Essence)

 ビート性を前面に出した、特異なアプローチのアルバム。ジャケットも凝っている。 ぼくのWebに掲載はこちら

Masami Akita - music
Recorded and mixed at Munemihouse, Tokyo, Dec 2013-Feb 2014.

 ブラジルのレーベルから発売、400枚限定のCD。さらに114枚限定のBOXもあり。後者には2曲入りおまけCD-R付きというが、僕は未聴。
 本レーベルからは"Sha Mo 3000"(2004),"Camouflage"(2009)に続くリリースとなる。このレーベルは日本の音楽にも興味あるようで、BorisやAcid Mothers Templeも発売あり。
 本盤のタイトルは"昆虫器"を指すらしい。ヴィーガンから一歩進み、昆虫がテーマとは。秋田昌美の発案か、レーベル側のアイディアかは不明。特にこの時期、昆虫に傾倒したメルツバウの新譜はない。とはいえ曲名は秋田の発案だろうし。どの昆虫も知らない名前ばかりだ。詳しい。それとも単に「ファーブル昆虫記」がモチーフかな。メルツバウが取り上げる脈絡がいまいち想像つかないが。

 どの曲も強烈に小節感を連想させる、パターンが全編を漂う。リズミックなアプローチや、ドラムの使用をメルツバウは過去に披露してきた。だが本盤ではむしろ、足枷のように明確な小節感が提示された。

<全曲感想>

1."Hanamuguri" 10:31
 
 コガネムシの一種、ハナムグリがタイトル。
 断続的なノイズの噴出が、一瞬ドラムのように聴こえた。沸き立つ音像が寸断ぎりぎりに脈動する。フィルター加工されひとまとまりへよじり、震える。複数の音にバラけ、それぞれのテンポ感で混ざり、滴った。
 アナログ・シンセ的な太さを持ちつつ、細部まで密度濃いデジタルっぽい色合いを持つ。
 ループするフレーズへ、絡む新たな電子音も周期が次第に合ってテクノ色のダンサブルな世界を作る。このポップさがエレクトロな親しみやすさを持つ。メルツバウのフロア対応か。
 ざらついたハーシュさえなければ、いや、音色も次第にアブストラクトな電子音楽に収斂した。どんどんとシンプルにまとまる。ボリュームをあげると、分解能が上がり細かなきらめきを感じる。しかしぱっと聴きは、えらくわかりやすい響きにまとまった。

 繰り返されるメロディアスなフレーズ。フィルター加工された電子音が、ぶつかっては混ざり、すぐさま離れていく。肌触りの不格好さを除けば、構造はしごくビートに馴染むアレンジだ。今の、メルツバウがこれか。 

 電子音がキックとなり、明確な小節感を作る。密度濃く複数の音を混ぜるメルツバウ流のアレンジはそのままに、幾分古めかしいテクノな構造を構築した。
 急峻なフェイド・アウトで幕を下ろす。

2."Yumimonkuchiba" 14:30

 タイトルはユミモンクチバ。ヤガの一種だ。
 これまた冒頭からリズミック。本盤のメルツバウはクラブ志向だ。いくつかの音がハーシュなだけ。4拍子を刻み、カウンターのフレーズを入れる。
 いきなり炸裂のホワイト・ノイズは本来ならば主役なのに。明確に刻み続けるビートのおかげで、凄みある奔放なノイズは飼いならされた猛獣のよう。

 冒頭から一本道でアレンジが明確化され、ハーシュの背後でエレクトロなパターンがきらめき続けた。そしてハーシュは太く高らかに中央に鎮座する。ときおり細密な子分を周りに、はべらせて。

 6分前後でいったんビートが後ろに隠れても、ベースは残ってる。背後にしっかりと、強固に。上物のフィルター・ノイズが暴れるが、しごくわかりやすい構造は変化しない。
 ループは存在を主張し、ハーシュを喰って生き延びた。

 9分半あたりで倍テンとなり、脈動を速めて加速した。拍の周期は変わらない。くっきりとビートが、形を変えつつ残る。低音が、ループが、吹きすさぶハーシュすらも。
 この曲はどこまで行っても、根本の構造が崩れない。
 最後の最後で、ぐっとリズムが強調された。 

3."Uzumushi" 18:56

 ウズムシ、か。Wikiによれば昆虫の分類群の一つとある。まず低音で7拍子のオスティナート。ハーシュが鋭く沸き立つが、明確にビートは維持した。
 ノービートの電子音に身を任せようとしても、強固な小節感に縛られる。細密なノイズで塗りつぶされる空間。8分過ぎでは別のハーシュ・ループがガツガツと咀嚼を繰り返し、ポリリズミックな展開にも。

 本来は奔放なノイズが、奇妙に居心地悪い。変化なしに延々とオスティナートが続くせいだ。これもまた、ノイズの印象を変える、逆説的なノイズか。9分45秒あたりでは、すべての音がいったん消えて7拍子のパターンだけに。DJ風に醜悪なパターンが抽出された。だが、すぐにノイズに溶けていきホッとする。

 リズムから、パターンから解放されたいのに。本盤では執拗に小節感から逃げられない。いったんのブレイクのあと、オスティナートは10拍子っぽく変化してる。
 さらにバスドラ風の電子音。スネアを連想するシンセの音。複数のパターンが現れ、リズム構成は複雑になる。
 ハーシュ・ノイズの嵐は空気を埋め尽くすように、噴出のままで。

 メルツバウとしてより、ノイジーなテクノして聴いたら、これはこれで刺激的なのだが。
 いちばん最後は、ノービートになった。ギター・ソロのように。

4."Douganebuibui" 20:52

 タイトルのドウガネブイブイも、コガネムシの一種。
 さて、これも冒頭から3拍子のパターンが現れ、補完するフレーズが足される。おもむろに炸裂するハーシュ、の構造がイントロだ。
 音色を変え、ノイズのバランスを変え。表情が常に変わりながらも、ビートのループは変わらない。いつの間にか2拍子の速いフレーズに変わり、小節感よりもパルス的な趣きだ。
 ハーシュはうねりながらも繰り返さないため、強迫的な小節っぽさはだいぶ希薄になった。

 鈍い低音成分を滲ませながら、きめ細かくざらついたハーシュが一面に立ち上る。この耳ざわりはむしろ、PC加工的なノイズでアナログ風の荒っぽさは低い。
 周波数帯域を弄りながら、表面が変化していくメルツバウ・スタイルだ。やがてうねりは規則正しい波打ちに変わる。

 いくぶん単調になりかけたところで、新たなノイズが現れ表情が変わる。この常に変貌し続けるさまは、通底している。13分過ぎあたりで、アナログっぽいつんざきも牙をむいた。
 身をよじる蠢きはメカニカルな前半部分と対比され、ひときわ生々しく響く。
 のっぺりとした揺れと、強靭に鋭い立ち上がり。双方が混ざった。

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