Curtis Mayfield 「Love Is the Place」(1982)

 悪くないがカーティスらしくない。なんとも不思議な盤だ。

 82年はMen at Workがチャートを席巻し、ポールとスティーヴィーが"Ebony and Ivory"をヒットさせた年。イギリス勢が押し寄せる前夜だ。売れ線バブルの直前でもある。
 そんな中、本アルバムはちょっと古めかしい。77年くらいの感覚かな。すっかり時代の趨勢とは離れてる。

 映画音楽の作曲などのDino Fekarisとカーティスの共同プロデュースなアルバム。すっかり丸くなり、ラブソング中心の穏やかでごきげんなソウルを披露した。伴奏は一流セッション・ミュージシャンを集めた。マイケル・センベロの名もあり。

 (1)から爽やかなソウルが溢れてくる。カーティスの明るく甘い世界が広がった。初期から聴いてるとずいぶん違和感あるものの、この開放感は素晴らしい。
 アレンジもすっきり華やか、ストリングスもずいぶん柔らかい響きだ。しかし名手Paulinho Da Costaを迎えたパーカッションつきアンサンブルは健在。カーティスのこだわりか。ドラムと合わせた複合リズムにはこだわってる。

 ホーンとストリングスでスリル漂わす初期カーティスを換骨奪胎みたいなアレンジが(2)。シカゴ・ソウルの形式取りつつも、どこか雰囲気は軽い。曲もシンプルな言葉を繰り返すカーティス節だ。すっきりとヌケのいいアレンジ。

 (3)で穏やかに心地よいストリングス中心のオケに乗るのは、語り口調。ラップというよりナレーションだ。じっくりイントロを奏でた後に、ファルセットがふわり漂う。美しい世界が陰りなく広がった。この屈託のなさが、初期のカーティスから考えられない。何が一体、あったのか。
 ふっくらと膨らみある演奏は隙が無い。シンプルながらリズム隊も綺麗に鳴った。

 逆にうっすらとラテンっぽい(4)は過去のカーティスに無いテイストだ。耳ざわりはとても良い。アルバム・タイトル曲ながらカーティスの作品でなく、プロデューサーDino Fekarisの楽曲。この辺の力関係というか、構成の不自然さが本盤の象徴であり、違和感。あくまで聴き心地良さを追求し、カーティスらしさも無いわけではない。しかし、根本のところでカーティスの色はオーバー・プロデュースされている。
 ただし楽曲はよくできている。とはいえちょっとリズムが重たいというか、野暮ったい。
 ドライに歌いかけるカーティスはファルセット声域だけでなく、普通の声も使いこなした。
  
 (5)も異色。SSW風の爽やかな楽曲で、白人作品のよう。カーティスの自作だが。フルート中心の管や弦、そっと刻むアコギのアルペジオ。ソウルとは全く違うベクトル。
 楽曲はカーティス節だが、アレンジの力技。リズムをこんなフォーク風にするだけで、がらり印象が変わる。シンプルなメロディを、カーティスが歌うのは少々痛ましいが・・・聴いてる風景は悪くないのが、何とも複雑な気分。この路線を肯定したくないが、楽曲としては良いんだよ。

 もう一度(6)は、シカゴ・ソウルのスタイルにて。跳ねるリズムやコーラスの感じはニューヨークっぽい。ちょっと重めのリズムでスリルを出す。弦が風切り音を出すけれど、シカゴの風景ながら書き割りのよう。
 ただしこれも、曲そのものはメロウな魅力がある。サビでがらり転調するコード進行が鮮やかだ。和音の感覚や展開が素晴らしい。
 テンポは遅め。もうちょい早くしても良かった。いや、このルーズな感じが味か。どっちだろう。難しいな。

 (7)がこれまたソウル色を抜いてAOR路線に飾った。カーティスの歌声はソフトな感じで、独特の色気が抜かれてる。けれど小刻みなキックを筆頭の跳ねるドラムに支えられた、丁寧なポップ・センスは悪くない。カーティスの作品と思わなければ、だけど。
 うーん、本盤は全部、こんな補足が付く。

 アルバム最後の(8)は西海岸風の落ち着いた洗練さを出した。ギターのストロークもスマートで洒落さを狙った。サビの和音がほんのりシカゴ・ソウルっぽい。カーティスの意地か。平歌とサビの落差が面白さ・・・かなあ。
 リフレインはカーティスの色が出てる一方で、アレンジが今一つ明るすぎ。何とも中途半端。しかし爽やかな聴き心地ではある。

Track Listing:
1."She Don't Let Nobody (But Me)" (Mayfield, Dino Fekaris)
2."Toot An' Toot An' Toot"
3."Babydoll"
4."Love Is the Place" (Dino Fekaris)
5."Just Ease My Mind"
6."You Mean Everything to Me"
7."You Get All My Love"
8."Come Free Your People"

Personnel:
Curtis Mayfield - vocals, guitar
Fred Tackett - guitar
Michael Sembello - guitar
Dennis Belfield - bass
Paulinho Da Costa - percussion
Carlos Vega - drums
Sam Small - Theremin


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