Curtis Mayfield 「Heartbeat」(1979)

 凝った製作が空回り気味で、ミュージシャンの矜持と経営者の苦悩が相克した。

 良いとこ探しする?良くないとあげつらうのも不毛だ。面白く感じないものを繰り返し聴くのも変な話だが。
 本盤はディスコへ最接近した"Do It All Night"(1978)の翌年に発表。前作ほどの売れ線と自己エゴのあからさまな乖離は無くなったが、逆にカーティス自身が自らを素材と割り切り、今一つ遠慮がち。ミュージシャンのカーティスでなく、カートム経営者がいかに自分を売るか、とビジネス的な視点が前に出た盤と思う。必死に違う血を入れようとした。成功したとは、言い難いのがつらい。

 どうせなら中庸でなく徹底的に我を追求して欲しい。聴き手のエゴだ。売れなきゃいけないのが宿命なのに。カーティスはディスコという怪物と、折り合いの付け方探しを本盤で試みた。
 全編を覆うのはくっきりしたメロディ。(1)では女性の喘ぎ声も入れて、セクシーさ追求もあからさまになってきた。わかりやすいと取るか、下世話と取るか。
 何曲かで聴けるシンセの扱いも時代だ。今聴くと安っぽさが否めないけれど、当時はまだ斬新狙いかも。少なくとも弦や管の前世代ゴージャスさと、新奇狙いを強引にハイブリッドしたアレンジは、奇妙なキッチュさもある。

 本盤は三種類の録音を混ぜた。PIR急接近と、NY、そして地元シカゴ。地元での帝王性を放棄し、カーティスは異なる売れ線を求める。バラバラに曲順を配置し、確かにアルバムとしてバラエティには富んだ。

 (1)と(4)はフィラデルフィア。既にPIRは失速気味と思うが、敢えてカーティスは往年のブランドを意識したか。ノーマン・ハリスらを起用し、華やかで派手なひたすら甘く切ないフィリー色を投入した。
 シカゴ流のスリルとは異なった豪華さは確かに耳へ心地よいが、何もカーティスがやらなくても。双方とも曲はカーティス自身。フィリーとシカゴの合体を覗き見趣味に見るなら面白いかも。どうせなら5年前、双方がもっと跳ねてるときに遊んで欲しかったが。

 (2),(5),(6) はNYにて。PIRとなじみ深いバニー・シグラーをプロデュースに立て、アレンジはJBがらみのフレッド・ウェズリー。いかにも芸能界的な豪華スタッフ狙い。しかしファンクでなくポップ的なアレンジをウェズリーが施したため、変なキッチュさが付与された。
 このブロックでは作曲もシグラーに任せ、カーティスは歌手に徹する。売れれば儲けもの、の実験かも。この録音群で、シンセの扱いが流行り狙いのきわどさ。ベース・ラインやホーン隊のフレーズにファンクネスを感じるが、シグラー流のキャッチーなメロディと豪華なアレンジに埋もれた感あり。今ふっと思ったが、フレッドのアレンジってホーンだけかな?

 (3).(7),(8) が地元シカゴの自己プロデュース。アレンジは前"Do It All Night"(1978)に続き、ギル・アシュレー。これも売れ線狙いか。本盤の良心となるべきが、この録音のはずだった。

 まず(3)の甘々バラードに驚く。あまりにもメロディがわかりやすい。カーティスでなく職業作曲家の作品みたいだ。すぐさま口ずさみたくなる。歌は間を生かしながらで、上手いけれど。リンダ・クリフォードをデュエット相手に招いた。
 カーティスがここまで、どポップが書けるのか。バニー・シグラーへの当てつけか。いや、書けるんだろうけど、自分で歌うかと驚く。アルト・サックスが硬質にソロをとった。

 (7)の涼やかな緊迫する弦使いがシカゴ流。フィリー録音と並べたら、よくわかる。カーティスの軽やかなギターも味を足す。パーカッションも加わり、シカゴ・スタイルのアレンジだ。本盤でどうしても一曲選ぶなら、これか。キャッチーさでは(3)ながら。
 
 タイトル曲は(8)。これまた華やかなポップ。NY録音と比べて欲しい。カーティスが同じセンスをシカゴ流に処理したか。シンセの代わりにカリンバみたいな音でキラキラ感を出す。

 アルバムを通して聴くと、次々に異なる録音場所の楽曲が出てきて、散漫さが先に立つ。
 敢えて今回録音場所ごとにまとめて聴いてみると、違う地域のアレンジを取り入れても売らねばならぬカートム経営のつらさと、各地域の特色を自分流に解釈できるとのミュージシャンの維持がぶつかり合う、複雑に屈折したアルバムにも聴こえてきた。

 本盤でカーティスは時代へ媚びをいったん吹っ切り、ぐっとミュージシャン目線に戻した"Something to Believe In"(1980)に向かう。

Track listing;
1.Tell Me, Tell Me (How Ya Like To Be Loved) 6:20
2.What Is My Woman For? 7:15
3.Between You Baby And Me 4:40
4.Victory 3:15
5.Over The Hump 5:15
6.You Better Stop 6:51
7.You're So Good To Me 6:52
8.Heartbeat 4:23

(1),(4) Recorded and mixed at Sigma Sound Studios, Philadelphia
Produced by Norman Harris and Ronald Tyson, Arranged by Norman Harris (on 1),George "Go-Modd" Bussey (on 4)

(2),(5),(6) Recorded at Blank Tapes, Inc., New York and Kendun Recorders, Burbank
Produced by Bunny Sigler, Arranged by Fred Wesley

(3).(7),(8) Recorded and mixed at Curtom Studios, Chicago
Produced by Curtis Mayfield, Arranged by Gil Asley

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