Sonny Rollins 「Global Warming」(1998)

 編成違いのセッション二種類で構成な、爽快でブルージーな盤。

 ベースとピアノを固定し、ドラムと上物を変える。88年1月7日はトロンボーン入りで、2月28日はパーカッション入り。すっかり丸くなり、ピアノを入れるのも躊躇ない。サックスは柔らかい音色でのびのびと吹いている。おおらかなフレージングは健在で、きっちりロングトーンを伸ばすブレスも悪くない。

 68歳にしてブランド・イメージをしっかり守る、気軽に聴けるジャズだ。
 さらに一曲を除き5曲の新曲を投入と、創作力が衰えてないところもアピール。ほんのりラテン風味を漂わせつつ、ブルージーさも前面に出した。経験の貫禄がそこかしこに滲む。
 サイドメンは目立ちすぎず、バッキングに徹する。その一方でボブ・クランショーは馴染みの手数多いベースで華やかにサックスを支えた。

 作曲も丁寧だ。(2)のテーマは途中で弾むフレーズがユニゾンで登場。それがキュートでなんとも浮き立つ。ムーディな曲で、ひときわ軽やかさが強調された。
 ロリンズはずっと時代の牽引や親和から距離を置き、自らをブランドとしてまさにマイペースな活動を続けてきた。その寛ぎと余裕が、本盤を産んだ。先鋭性とは真逆で、親しみやすい。そして手なりのやっつけ感は皆無。するりとBGMも成立するが、じっくり耳を傾ける味わいも、内包してる。

 カリンバとベースからトロピカルに盛り上がる(3)もロリンズならでは。カリプソにアフリカ風味の付与か。カリンバを取り出すメリハリあるアレンジを施した。
 小節線をまたぐ譜割で二拍三連を、テナー軋ませるロリンズ。もごもごフレーズを繰り返し、いきなりメロディアスに展開するロリンズ節は50年代から変わらない。この辺は、すっかりロリンズのイメージ通りの爽快な演奏。
 ピアノ・ソロは逆に鋭角な譜割で、ロリンズとの対比を作る。のびのびしたトロンボーンのスイング風なフレージングに流れ、三者三様の雰囲気でロリンズの魅力を強調した。
 あからさまにブルーズとタイトルつけた(2)や(4)を筆頭に、ブルーズへ強い興味示したところも、ロリンズとしては意外に珍しい。ほとんど過去から、ブルーズにあまり軸足置かなかったのに。
 この辺は、円熟と取るべきか変わらぬ好奇心と解釈するべきか。(4)のアドリブは、ときどきアウトしそうな危うい音程感で、柔らかなリードの音色が奔放に響いてる。

 アルバム全体に漂うのはコントロールされた演奏。決して斬り合いではない。整ったアンサンブルだ。けれどもカラオケとテナーサックスの対比まで衰えず、ぎりぎりバンド的なダイナミズムは有してる。

 特に(6)の煙ったファンキーな雰囲気が秀逸だ。カッチリ構成されたクールなアレンジが、緊迫感漂わせ進んでいく。このアルバムではむしろ異なる曲調だが、なんか好き。

 ロリンズの代表作とは言わないが、聴いて損するアルバムでもない。
 「終わりだ、もうやらないよ」とアルバム最後でしゃべる老人の声が、ロリンズか。これで新作発表が終わってしまったら、非常に象徴的な一言になるところだったが・・・幸いにして、ロリンズは本作の2年後に"This Is What I Do"(2000)をリリースしてくれた。 

Track listing:
1."Island Lady" - 9:07
2."Echo-Side Blue" - 7:15
3."Global Warming" - 6:30
4."Mother Nature's Blues" - 11:26
5."Change Partners" (Irving Berlin) - 8:36
6."Clear-Cut Boogie" - 7:07

Recorded in NY on January 7 (tracks 2, 4 & 5) and February 28 (tracks 1, 3 & 6), 1998

Personnel:
Sonny Rollins: tenor saxophone
Stephen Scott: piano, kalimba
Bob Cranshaw: electric bass
Idris Muhammad: drums (tracks 2, 4 & 5)
Clifton Anderson: trombone (tracks 1, 3 & 6)
Perry Wilson: drums (tracks 1, 3 & 6)
Victor See Yuen: percussion (tracks 1, 3 & 6)

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