TZ 7164:Steven Bernstein "Diaspora Blues"(2002)

 寂し気なフリージャズが詰まった。コンボ編成のわりに音像が太い。

 ラウンジ・リザーズからSEX MOBと活躍するSteven Bernsteinの「ディアスポラ」シリーズの2作目。編成を今作ではグッと減らした。

 ユダヤ教の先唱者(教会音楽家の一種)で20世紀前半に活躍したMoshe Koussevitzkyの歌を下敷きに、(1),(6),(10),(11)は演奏された。
 

 (2)と(3)はユダヤの伝承曲。つまり11曲中、オリジナルはほぼ半分。
 そして演奏はサム・リヴァース(sax)トリオの共演と、奇妙なコンセプトで製作された。
 
 つまりアイデンティティはユダヤ人のルーツでありながら、フリージャズ的なサム・リヴァースに胸を借りるという。リヴァースとユダヤの親和性はわからない。
 この当時は吹き込みこそ減っていたが、たぶんフロリダに在住して地元でリヴァースはぶいぶい言わせてたのでは。

 全編に漂うのは切ないムード。ソロや楽器で斬り合うイメージは希薄で、抽象的で自由なフリージャズが漂う。寛ぎとも、悲観とも異なる。流浪するディアスポラの投影か。
 サイドメンのドラムとベースも、鋭い演奏を聴かせる。2曲でそれぞれ木管に持ち替えのプレイも達者だ。すごいな。

 テーマから雪崩れるアドリブ部分は、いわゆるビートの刻みよりも自由なテンポで小節感を希薄なフリージャズが軸だ。だが演奏しっぱなしのインプロではなく、きっちりとSteven Bernsteinのアレンジが成立し、一過性には陥っていない。

 トランペットはむせび泣くように、メロディよりも細かな旋律の流れを吹き散らかした。
 爽快感とは違う方向性だ。悲しみが柔らかく伝わってくるかのよう。
 編成だけ見るとMASADAと一緒だ。けれどあれほどの一体感は無い。セッション的な味わいが滲む。スピードもぐっと本盤は抑えたトーンが全編を覆う。

 だからあまり積極的に聴きたくなる音楽ではない。重厚なムードが漂うため、よほど気持ちが上がってないと、音楽に釣られて沈んでくる。
 けれども音楽は素晴らしい。じっくり聴くほどに確かなテクニックと即興の攻防の妙味は、味わえる。

Personnel:
Trumpet, Trumpet [Slide] - Steven Bernstein

With Sam Rivers Trio
Double Bass, Bass Clarinet(on 3,11) - Doug Mathews
Drums, Tonor Saxophone (on 3,11) - Anthony Cole
Saxophone [Alto, Tenor], Flute - Sam Rivers

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