TZ 5012:"Painkiller"(2003)

 NYのTonicで2003年9月に一ヶ月連続で開催のジョン・ゾーン生誕50歳記念ライブ。TZADIKから第12弾にして最終となった本盤は、往年のバンドであるペインキラーの再結成。

 9/6の2ndセットが収録された。ペインキラーの流れは"Collected Works" (1998)や"The Prophecy: Live in Europe" (2013)の稿でも書いたが、本ライブはオリジナル・ドラマーでなくハミッド・ドレイクが担当した。
 91-94年頃に活動したペインキラーが約10年の歳月を経て、ゲストでマイク・パットンが参加の、お祭り的な再結成か。

 同時期に活動したネイキッド・シティを構築/高速とすれば、ペインキラーは混沌/即興。良くも悪くも構築度高く低音をばらまくビル・ラズウェル次第で、音像の広がりは変わる。この盤ではダブ的な処理もそこかしこで聴けるが、ラズウェルがその場でエフェクタ操作しながら演奏か。

 ナパーム・デス流の炸裂が味だった、オリジナル・ドラマーのミック・ハリスと違って、本盤でのドレイクはジャズメンなアプローチ。勢い、かっちりときれいにサウンドがまとまった。テクニカルなスティックさばきで、着実なビートを叩いた。
 ペインキラーとして奔放さを狙い、ゾーンが次に吉田達也をペインキラーへ起用したのが、しっくりくる。もっとも吉田とラズウェルの相性が今一つだったが。

 本盤はパットンが冒頭から叫ぶけれど、あくまでゲスト。音像破壊まではせず、遠慮がちだ。エフェクターはパットンも弄ってるのかも。
 ラズウェルと思われるダブ処理の低音が奇妙な停滞アンビエント感を漂わせ、あまり強烈な疾走は無い。むしろ(1)の中盤で極端なストップ&ゴーをドレイクが提示し、ゾーンが合わせてサックスを軋ませるような、構築度高い即興の瞬間のほうが刺激的だ。

 (2)の冒頭は電気的なノイズ。ゾーンのお株を奪うような潰れた響きを、エフェクターで絞り出してる。派手だがペインキラーのダイナミズムとは少し違うような。このパワーを生演奏で披露こそが、魅力ではなかろうか。
 直後に現れる循環呼吸でのフラジオ連発なサックスが、どうにも大道芸っぽい妙な安心感を持ってしまう。スリルが欲しいのに。危なげない貫禄がむしろ強調された。
 でもまあ本盤では長尺一辺倒でなく、3曲に分けてメリハリを持たせたところがせめてもの良心か。
 
 ゾーンはペインキラーだと、のびのびサックスを吹いている。譜面やコンセプトに縛られず、吹き倒すことがペインキラーでの立ち位置だ。
 ハイテクニックをさりげなく繰り出して。本盤はどこか余裕あり。オーバートーンがむしろ爽快に轟いた。

 パンキッシュな暴力性を求めるならば、本盤はちょっと拍子抜け。ある意味、大人になったペインキラーが聴ける。それを商売っ気と取るか、ファンサービスと取るか。聴きやすくはある。刺激よりも「伝説よ、もう一度」のショーを見てる安定感が先に立った。

Personnel:
John Zorn: Vocals, Alto Sax
Bill Laswell: Bass

Hamid Drake: Drums

Special Guest
Mike Patton: Voice

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