Curtis Mayfield 「Back to the World」(1973)

 アレンジの分岐点となった傑作アルバム、と思う。


 "Superfly"の大ヒットを踏まえ、オリジナルとしては3rdスタジオ作。本盤はRich Tufoがアレンジ、以外は特にミュージシャンのクレジットが見当たらない。けれどカーティス流の豪華さが、次第に内省的に変化してく。その変換点が本盤と感じる。
 明確ではない。じわじわっと。

 シカゴ・ソウルもしくはカーティスの趣味や流行が変化のためか、他の要因かはわからない。けれどどんどんと、このあとはカーティスのアレンジはシンプルになっていく。それを突き詰め、バンドのアレンジを強調したのが"There's No Place Like America Today"(1975)。そして以降はどんどんと甘く丸くなっていった気がする。

 だが本盤は明るい。華やかだ。初期の政治的メッセージも上手いことアレンジに溶け込ませ、親しみやすさを増した。さまざまな完成度が、きれいにまとまった傑作だ。

 カーティスの初期ソロのサウンドは、ゴージャスだ。それともシカゴ・ソウルは、かな。ストリングスが流麗に鳴りホーンが厚みを出し、バンド・アンサンブルが畳みかける。
 そんな典型的なアレンジが、本盤の(1)。線の細いファルセットなカーティスのボーカルと、ミックスもばっちり。ストリングスが、ホーンが、ギターが、それぞれフレーズのアクセントを変えて、サウンドの揺れを絶妙に表現した。訥々とドラムが響き、他の楽器が総力戦で華やかな世界を描く。
 震える繊細なボーカルを、温かく深く包み込むように。そしてファンキーに。伴奏が素晴らしく華やかだ。夢を見せる、もしくは豪華さを強調するかのように。

 だが本盤は、一方でうっすらと内省さを漂わせた。(2)はストリングスやホーンが彩りを出すものの、くっきりとドラムとベース、エレキギターのコンボ編成を前に出した。
 シンプルなリフを繰り返すファンク・スタイルで。例えばJBのように煽りはしない。しかし弾力性と、はじける力を貯めたパワーはしっかり滲ませる。

 (3)でも吹きすさぶストリングスの厚みは健在だ。(1)に似た豪華さはある。けれど低音を出し重心を低くして、寂し気なハードボイルドさを匂わせた。終盤でのインストが続き、最後はじっくりとストリングスが轟く。これが何かの終わりを、静かに表現した気がしてしまう。

 一転して賑やかでホーンがシンプルなリフを繰り出す(4)。ドラムが賑やかに刻む一方で、なんだかノリは妙に重たい。前に進まず、ぐっと腰を落とした感じ。
 破裂しそうなパワーを引き留めてるかのよう。涼やかなボーカルは軽いのに。"Hey,"って低めの音程で軽く掛け声入れる瞬間が、すごくかっこいい。

 (6)もホーンとバンド・サウンドが綺麗に混じった。この曲に限らず、この盤はなるたけヘッドフォンで聴きたい。音量を上げて。細かい楽器の絡みが、本盤はすごく凝っている。それぞれのフレーズは特に難しいことをしてないのに、入れ代わり立ち代わり現れるフレーズの複合技が、とびきりの弾むノリを作り出した。

 ハイトーンのボーカルが爽やかな(7)は、イントロの歌声とストリングスの足し算が堪らない。ぐっと音色を軽くしたドラムに、高音域のボーカルと滑らかな弦がふうわりと降り注ぎ、ベースが芯を支えた。ストリングスで飾りながらも、ドラムとベースが本曲ではきっちり主役を張っている。

 最後が(8)。ぼくは96年の再発CDで本盤を聴いてるため、この曲が最後だって知ったのは、本当につい先日。この感想書こうとDiscogs見て、初めて知った。なぜか96年のCDでは、これが4曲目、B面トップな位置に置かれてる。
 特徴はコーラスのリフレイン。カーティスが多重録音で、"Heavenly Father"って繰り返すメロディが、異様に頭へ残る。
 この曲もシンプルなメロディだが、芳醇な味わいを持つ。

 本当に捨て曲の無い、充実した作品だ。

Track listing:
1. “Back to the World” – 6:45
2. “Future Shock” – 5:15
3. “Right on for the Darkness” – 7:27
4. “If I Were Only a Child Again” – 2:49
5. “Can't Say Nothin'” – 5:13
6. “Keep on Trippin'” – 3:12
7. “Future Song (Love a Good Woman, Love a Good Man)” – 4:58

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