TZ 7136:Marty Ehrlich's Dark Woods Ensemble "Sojourn"(1999)

 ユダヤ系の多様なメロウさが豊潤に溢れた、穏やかな構築性高いジャズ。

 東洋的なセンチメンタルさに通じる響きがそこかしこに感じられ、奇妙な親近感を覚えてしまった。

 リーダーのMarty Ehrlich(cl/ss)は、ジョン・ゾーンの初期作"The Bribe"(1986)や"Filmworks I"の86年録音に参加していた。サイドメンとしてTZADIKの数作に参加、リーダー作では本盤が初となる。TZADIKとの関連は続いてるらしく、本盤のあと"Fables"(2010)のリリースも行った。
 70年代から演奏をはじめ、フリージャズ界隈で鳴らした人。アンソニー・ブラクストンやジュリアス・ヘンフィルのサイドメンで活動し、"The Welcome"(1984)を筆頭にリーダー作も多数ある。Discogsを見ると、参加アルバムはさらに膨大だ。
http://www.martyehrlich.com/

 本作のMarty Ehrlich's Dark Woods Ensemble名義では91年の1stから数えて、本作が4thとなる。
https://www.discogs.com/ja/artist/507388-Marty-Ehrlichs-Dark-Woods-Ensemble
 今回はゲストにマーク・リボーを迎え、のびのびとシンプルな編成で演奏した。サイドメンがチェロにベースと低音強調のふくよかな編成でリズム隊がいない。けれどベースの響きが柔らかなパーカッションとなり、聴いててグルーヴがいっぱいだ。
 なお本メンバー編成は2nd"Just Before The Dawn"(1995)から。TZADIK馴染みのErik Friedlanderがいるけれど、きちんとしたメンバーでセッション的な参加ではない。

 本盤は父親、Ira Ehrlichに捧げられた。父親とは数々のNigunを歌ったとある。ユダヤ宗教歌のことらしい。Wikiによると即興要素も受け入れる歌のようだ。
https://en.wikipedia.org/wiki/Nigun

 いわゆるフリージャズの斬り合いでなく、構築度高い演奏だ。(1)は弦二本ならではのふくよかでしっとりした響きのテーマ。おもむろにクラリネットが寂し気なアドリブへ向かう。単なる伴奏にとどまらず、さりげなく低音部隊もクラリネットへ絡んでいく。ギターもお客さんの立場でなく、きっちりとアンサンブルに溶け込んで心地よい流れを作った。

 (1)もそうだが(2)の冒頭も、クラシカルに重厚な響きを聴かせる。(2)ではじわじわと崩れ、ジャズ的に溶けていくさまが美しい。

 本盤で聴ける楽曲は、さまざまな表情の抒情性を表し、多彩な切なさを味わえる。(3)では日本的なセンチメンタリズムを漂わせ、最初に流して聴いてるときは驚いた。 
 穏やかなギターに乗って、ソプラノ・サックスがしみじみとメロディーを紡いでゆく。
 クレツマー的な起伏と跳躍のメロディな(4)は、ひときわベースの打楽器っぽさが強調された。ぐいぐいと弾かれる弦は、柔らかいがしっかりと空気を刻んだ。クラリネットが力強くメロディを貫く。対話のようなベースとクラリネットのやり取りが気持ちいい。

 一転して穏やかな佇まいで静かにたゆたう(5)は、ベースが一歩引いてチェロとソプラノ・サックスの二人を前面に出した。さりげなくギターも加わる。このギターの馴染みっぷりが素敵だ。
 ひとしきり演奏が続き、終盤で緩やかに現れるソプラノのアドリブが切々として良い。
 幻想的な(6)のすっきりした鳴りでも、それぞれの楽器は細かく丁寧に演奏してる。すごいなあ。チェロの滑らかな旋律と、アルコ弾きのコントラバス。クラリネットは静かに副旋律を吹き、クラシックの三重奏のようだ。いや、ジャズ的なダイナミズムももちろんあり。自由で、構築されている。
 
 (7)はユニゾン気味でメロディが奏でられた。涼しく見通し良い旋律感は、りりしい力強さと抒情性の双方を内包した。ソプラノとチェロのすっきりしたアンサンブルが美しい。
 クラリネットの独奏がイントロな(8)は、楽器が加わるとバスキング風のしたたかさと寂しさを表現した。いやはや、本当に多様で抜群の演奏が詰まった。 

Personnel:
Clarinet, Soprano Saxophone - Marty Ehrlich
Bass - Mark Helias
Cello - Erik Friedlander

Guitar [Special Guest] - Marc Ribot

ベースがDrew Gressに変わっているが。2013年11月17日ライブで、NYのStoneにて。



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