TZ 9005:Matthew Barnson "Sibyl Tones"(2014)

 空気の振動を強調した、吹きすさぶスリリングな弦楽四重奏を収めた。

 作曲家のマシュー・バーンソンはアメリカの現代音楽作曲家。
http://www.matthewbarnson.com/
 彼の第一作~第三作までの現代四重奏は、メロディよりも軋む音そのものを強調するかのよう。変則技法のみではなく通常の演奏もしてるようだが、出てくる音は抽象的でスピーディな風切り音が一杯に詰まった感触あり。

 それぞれ違う場所、違う時期に収録の作品をまとめた。つまり本盤ではTZADIKが発売レーベルの受け口とのみ機能し、特に楽曲へのプロデュースは無い。

 本盤のタイトルトラックにして第一作は、なぜか本盤の一番最後に配置された。5分強の長さで04年の作曲。
 バイオリンはIrvine ArdittiとGraeme Jenningsの編成だ。二作目ではバイオリン奏者が一人、入れ替わっている。

 第二作目は本盤の冒頭に置かれた9分強の作品。2005年に作曲された。バイオリンがIrvine ArdittiとAshot Sarkissjanだ。冒頭の激しい弓さばきで音楽の奔流が降り注ぐ。鋭くも厳しいテンションで、鋭利な雰囲気で疾走した。

 第三作目は47分に及ぶ大作で6楽章編成で2011-12年の作品。この曲のみ、Jack Quartetの演奏になる。
 第6楽章がひときわ美しい。中盤での静謐な響きは、弦楽四重奏にもかかわらず女性コーラスの讃美歌のように一瞬聴こえた。素晴らしい透明感だ。この世界観で終わらせず、展開させ変貌させるのが現代音楽家らしいアプローチだ。アカデミズムよりも心地よさを音楽に求める無責任な聴き手の立場としては、ややこしいこと考えず、この静かな響きに浸っていたいのに。

 全編に漂うのは性急な畳みかけと硬質な進行性。神経質な繊細さがぴりぴり溢れる。のどかさや寛ぎとは全く逆ベクトルだ。焦りか意気込みか。張りつめた緊迫さを音楽へ詰め込んだ。
 ひりひりするざらつきを味わうのに、いい盤かもしれない。

Personnel:
Jack Quartet:
Ari Streisfeld: Violin
Christopher Otto: Violin
John Pickford Richards: Viola
Kevin McFarland: Cello

Arditti String Quartet
Irvine Arditti: Violin
Ashot Sarkissjan: Violin
Graeme Jennings: Violin
Ralf Ehlers: Viola
Rohan de Saram: Cello


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