Sonny Rollins 「Next Album」(1972)

 何度目かの新生ロリンズな、五目味アルバム。

 不敵な表情の42歳なロリンズの顔を大きくジャケットにデザイン。脂ののった男の生きざまが封じ込まれた。アルバムでいうと、コルトレーンのリズム隊と組んだ"East Broadway Run Down"(1966)の6年ぶり。奏者としても4年ぶりの復活作になる。
 ロリンズは数度目の隠遁を69年から71年に敢行、ジャマイカへ赴くなど充電に励んだ。
 71年にライブ活動を再開、おもむろに録音したのが本作となる。
 
 発売レーベルはマイルストーンでの、初吹き込みとなる。マイルストーンはリバーサイドを立ち上げたオリン・キープニュースらが、66年に起こした新興レーベル。昔なじみで自由が効くのだろう。ロリンズはレーベルの大きな柱として、こののち2000年まで28年間在籍する。

 本盤のサイドメンは朋友ボブ・クランショー(b)以外は、新しい顔ぶれかな。一番続いたのが向こう数年でドラム叩くDavid Lee。ほぼ本作のみの付き合いもあり、あまりロリンズは深く考えてサイドメンを選んでなさそう。レーベルの意向か。
 ジャック・ディジョネットの名が光るが、これもレーベル側の勧めっぽい。ディジョネットは本作に先立ちソロをマイルストーンからリリースしており、レーベルとも親しかったと思われる。

 だがサウンドは多彩だ。ロリンズの柔軟性と、時代と折り合いつける立ち位置の模索ともいえる。ロリンズのサックスも爽快で、今聴いてもさほど古めかしさは無い。むしろ生き生きした躍動を感じた。

 (1)はR&Bを通過したファンク・ジャズ。時代ならではのサウンドだ。ロリンズのソロはふくよかでいいけれど、George Cablesのエレピが古めかしい。あまりダイナミズムが無い。ファンキーだが手癖っぽいフレーズの応酬に飽きてしまう。
 とはいえエレべで巧妙にグルーヴさせるクランショーのテクニックと、ディジョネットの軽快にハタくリズムの妙味で最後まで聴かせるのだが。各人がソロを取る、至極オーソドックスな仕上がりと、ソウルフルなリズムの対比がなんとも今では居心地悪い。当時の流行狙いと、手堅さが同居しちゃってて。

 (2)はロリンズの新境地。ソプラノ・サックスを吹いた。たぶん公式録音では、本作が初めての披露だ。同じB♭管で指使いはテナーと一緒だが、フレージングのイメージはかなり違う。こっちは爽やかさが強調され、かつ滑らかだ。息の量がテナーと違うせいかな。のびのびと鮮烈な風景を、スマートに強調した。
 リズムは(1)とは別の、最新鋭なフュージョン・スタイル。クランショーはウッド・ベースだが、全く違和感なく滑らかに弾きこなす。彼の懐深さは本作で、改めて痛感した。

 2曲続けて10分程度の比較的長い曲。(3)からアコースティック強調のアレンジに。しかもこれは、ロリンズ流のカリプソだ。よほど好きなんだな。
 テナーでのびのびとソロを、ロリンズは延々吹きまくった。ちょっと考えては全く違う世界に飛ぶ、ロリンズ節をたっぷり堪能できる。難しいこと考えず、趣味全開だ。

 オーソドックスなハードバップ路線が(4)。これもディジョネットが叩いた初日のテイク。George Cablesは生ピアノを弾くが、エレピよりずっと良い。サイドメンが多い手堅いミュージシャンだ。ブレイキーの"Child's Dance"(1972)にも参加してた

 アルバム最終曲もモダン・ジャズを手堅く披露した。冒頭で無伴奏ソロを比較的長めに配置し、今のロリンズをじっくり聴かせた。
 甘い雰囲気のレストラン・ジャズ。スリルは希薄だが、これはこれで気持ちいいし、アメリカの市場的にはこういう演奏も必要なのだろう。
 しかしロリンズのソロは、時に奔放に飛び散らかる。手癖や安定を好まぬフレージングだ。それが、個性。

 ロリンズは本盤で自らのサックスを、完全にブランド化した。そのうえでソプラノを披露しミュージシャンとしての意地も匂わせる。現役感の維持、とでも言おうか。時代との折り合いを探り続ける、ロリンズの長い旅が本作から改めて始まった。

 まさにこの次、を見据えた"Next"アルバムだ。

Track listing;
1. "Playin' in the Yard" - 10:25
2. "Poinciana" (Buddy Bernier, Nat Simon) - 9:58
3. "The Everywhere Calypso" - 7:54
4. "Keep Hold of Yourself" - 4:30
5. "Skylark" (Hoagy Carmichael, Johnny Mercer) - 10:17

Recorded in NYC, July 14 (tracks 1 & 3) & 27 (tracks 2 & 4-6), 1972

Personnel:
Sonny Rollins - tenor saxophone, soprano saxophone (track 2)
George Cables - electric piano (tracks 1 & 2), piano (tracks 3 - 5)
Bob Cranshaw - bass, electric bass (track 1)
David Lee - drums
Jack DeJohnette - drums (tracks 1 & 4)
Arthur Jenkins - congas, percussion (tracks 1 & 3)

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