Sonny Rollins 「What's New?」(1962)

 とことんラテンの実験を施したデモテープみたいなアルバム。


 LPの副題に"南米から新しいリズムをジャズへ"とある。
 "セント・トーマス"が示すように、ロリンズはラテン系音楽に親近感があるようだ。アフリカよりも南米か。なぜだろう。
 本盤は一時的な引退から復活、RCAビクター移籍の2作目。前作同様にジム・ホールを招き、ピアノレス・カルテットで演奏した。4日間にわたりセッションを繰り返し、良テイクを抜き出してる。これがまた、色々と深読みしたくなる録音経緯だ。

 今聴いてるCDは全6曲入り。(2)がCD化にあたりLP未収のボートラとなる。あえてLP順ではなく、録音順に聴くとロリンズの迷いがイメージわく。ただ、
資料によって録音日とテイクの記述が異なる。どれが正しいんだろう。以下は本CDジャケに記載の情報を正とした空想になる。
 ジャケット記載の録音順に並べると、まず(1)。半月後に(2)と(6)。一週間後に(5)。さらに一週間後、まだ飽き足らず翌月半ばに(3)と(4)を吹き込んだ。

 (1)は冒頭からラテン風味いっぱい、ボサノヴァを連想するリズム感で小粋に弾む。ホールが軽やかにリズムを刻み、たっぷりとロリンズにソロのスペースを与えた。柔らかいリードで、サブトーンを軋ませながら、大らかにテナーが長尺のソロをとる。ほのぼのと明るく、それでいて軽やか。後半でぐしゃぐしゃフリーなフレージングに走るが、大ざっぱでも暴力的なスリルとは逆ベクトルだ。
 唐突なエンディングで、すらりと曲を着地させる名演だ。

 しかしステレオ・ミックスに不満残る。本曲に限らないが、ロリンズは思い切り右にミックスされてる。どうせなら中央にどかんとミックスしてほしい。サックスが主役なんだから。

 そして (2)と(6)。双方をアレンジしたジミー・ジョーンズはエリントン楽団やサラ・ヴォーンなどの歌伴オケで活躍した人らしい。ロリンズはこの2曲だけ、敢えてアレンジャーを立てた。意図は、ラテン追求で歌を入れたかったのかな。ちょっと迷走と思うが。
 先にLP OKテイクとなった(6)から。これはサルサとかの流れ、かな。本盤でロリンズは南米リズムの様々な要素を盛り込みたかったみたい。冒頭で歌が入り、そのあとテナーのソロへ。サックスの音色は(1)と似ており、柔らかくノイズを含んだ響き。
 ギターへつながる流れが良い。軽快なフレージングでホールはくいくいと旋律を操った。しかしエンディングはフェイド・アウト。まだまだ続くノリを意識させてアルバムをしめたかったか。

 (2)が異色作。ボーカルの掛け声が冒頭から目立ち、サックスは歌伴っぽい。カリプソ的な響きを持ったこの曲、しかもロリンズのオリジナルだ。ばっさりボーカル部分を切り落とし、ギターとサックスの掛け合いとラテン・リズムでも楽曲は成立したはず。ロリンズのアルバムなんだから。

 だがロリンズはあえて、歌を冒頭に配置した。よほどラテンの陽気な歌を入れたかったみたい。結局、LPからは落ちるけれど。ギターと2バーズ・チェンジで掛け合うフレージングは、トロピカルな陽気さあり。ロリンズが引退して橋に向かい吹きまくり、やりたかったのがこのラテン風味?うーん、なんなんだ。
 こちらはきっちりコーダを決め、明確なエンディングを付けた。
 
 そして一週間後に(5)へ。これはサンバでいいのかな。ラテン音楽はよくわからない。パーカッションやコーラスを抜いて、ギター入りのカルテットに。シンプルで滑らかなアドリブをロリンズは聴かせた。幾分硬いリード風の芯ある音色で。

 なおも飽き足らぬロリンズはギターも抜き、コンガを入れたトリオ編成へ向かった。双方がロリンズのオリジナル曲。おそらく力こもったハードバップと、洗練さを狙ったと思われる。
 コンガを叩くCandido Cameroは、50年代から活動開始したアフロ・キューバンのジャズ奏者。つまりロリンズはジム・ホールの親しみやすさも排除して、ごつっと骨太で真摯なジャズを追求した。
 けれども2曲ともフェイド・アウトで終わる後始末の悪さ。セッションは熱いが、構成はやりっぱなし。

 それぞれのセッションでアルバム一枚づつ、計四枚のLPも作れた。だとしたらラテン・ジャズの雄としてロリンズは評価されたろうし、それは本意ではなかろう。
 とはいえ様々なセッションをごちゃ混ぜにするのは、ちょっとやりすぎ。アイディアが無垢なままLPに詰め込まれた。この辺が、デモテープっぽい。どうせならこれらすべてを没にして、改めてコンセプト練り仕切り直しの手もあったのでは。
 ロリンズのソロを踏まえ、個々のセッションは悪くない。だがプロデューサーは何やってたんだ、と言いたくなる。
 アイディア一杯のロリンズを制御しかねたのかも。

 そしてこの2ヶ月後、ロリンズはドン・チェリーとの双頭カルテットでヴィレッジ・ゲートでの4daysに雪崩れ、フリージャズへ興味を示す。
 あまりにも振り幅が大きい、この時期のロリンズ。好奇心旺盛ともいえるが、やはり散漫で迷走な気もする。

Track listing;
1. "If Ever I Would Leave You" (Alan Jay Lerner,Frederick Loewe) - 11:58
2. "Don't Stop the carnival"
3. "Jungoso" - 10:51
4. "Bluesong" - 4:41
5. "The Night Has a Thousand Eyes" (Buddy Bernier,Jerry Brainin) - 9:08
6. "Brown Skin Girl" (Norman Span) - 6:48

Recorded in New York City on April 18 (1), 26 (2&6), May 8 (5), and 14 (3&4) 1962

Personnel:
Sonny Rollins - tenor saxophone
Bass - Bob Cranshaw
Congas - Candido Camero (tracks: 3, 4)
Drums - Ben Riley (tracks: 1, 2, 5, 6)
Guitar - Jim Hall (tracks: 1, 2, 5, 6)
Shaker - Willie Rodriguez(tracks: 2 and 6)
Bongos - Franck Charles(tracks: 2 and 6)
Percussion - Dennis Charles(Conga on 3,bongos on 4)
Singers(tracks: 2 and 6) -H.Roberts,M.Stewartm,C.Spencers,M.Burton,N.Wright,W.Glover
Arranged By - Jimmy Jones(tracks: 2 and 6)

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