TZ 8326:John Zorn "The Hermetic Organ, Vol. 3: St. Paul's Hall, Huddersfield"(2015)

 ジョン・ゾーンのパイプオルガン即興演奏の第三弾。

 場所は英ウェスト・ヨークシャーのハダースフィールド大学にて。13年11月21日にHCMF(Huddersfield Contemporary Music Festival)として、ゾーンの生誕60周年ライブが行われ、その一環で本演奏が披露となった。当日のレビューはこちら。
http://5against4.com/2013/11/22/54-at-hcmf-2013-john-zorn-day/
 三曲にトラックが切られているが、実際のライブは一本勝負。カットなしの全演奏が本盤に残された。観客ノイズもそのまま。


Graham McKenzie on hcmf//'s monumental John Zorn day from hcmf// on Vimeo.



 すべて即興だがむちゃくちゃな音運びに終わらず、ポリフォニックでメロディ感のあるインプロだ。
 しかし(1)冒頭でのハードな低音クラスターや、(3)の初めなどで超高音倍音など、パイプオルガンから様々なノイズを引き出すテクニックが驚異的だ。どのくらいリハーサルをしたか不明だが、パイプオルガンの機能や音色を様々に使い分けた。
 単なるインプロにとどまらぬ。弾きこなしている。

 音楽としては作曲部分があるにせよ、かなり瞬発力ある展開で構築度は低い。さらに録音の限界か、多少音が潰れており、細かいニュアンスもわかりづらい。やはりパイプオルガンは生演奏でないとダメか。残響や空気感も含めて、味わいたい。

 暗黒芸能な漆黒のフレーズやサウンドが全編を覆う。荘厳さはとっつきにくいほど強く立ちのぼり、クラスターと和音が交錯しノイズまでが吹きすさぶ音列は、かなり強固な集中力なしには聴けない。
 けれどもパイプオルガンを楽器として、自在に操るダイナミズムとスリルこそが本盤の真の魅力だ。曲の最後はちょっとあっけない、かな。

 本来はキリスト教会で宗教儀礼に使うこと前提、ホールに据え付け移動は叶わず、楽器ごとに異なる構造や構成を持った特殊な楽器なパイプオルガン。
 オカルティック趣味と数秘術に凝ったゾーンへ、まさにぴったりな楽器だ。

 ゾーンは作曲家としてパイプオルガンに向かっている。手癖や音色の好奇心にとどまっていない。何度も繰り返すが、即興ながらもゾーンは楽器に弾かされていない。弾き遊んでもいない。
 重厚で広大で鮮烈で崇高な響きを、我がものとして表現している。

 このアイディアと表現力こそが、本盤の魅力だ。

Personnel:
John Zorn - Pipe organ
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