TZ 8041:Richard Crandell "Spring Steel"(2007)

 シンプルでミニマルな、不思議と寛げる金属質で柔らかい音楽。

 TZADIKでは"Mbira Magic"(2004)に次ぐ、アフリカの親指ピアノ、ンビーラを使った音楽。
 コンセプトはミニマルにしてアンビエント。生演奏の一方で、繰り返されるフレーズはサンプリング・ループのように正確だ。
 (1)がシロ・バチスタと共演ってライナーに明記あり。さらに(3)でのシェイカーや(5)のブラシによるスネアなど、他の曲で聴けるパーカッションもすべてバチスタか。

 ンビラだけの音数も多いが、録音手法が何とも判断つきづらい。
 ダビングとループを重ねた楽想に聴こえるが、すべて生演奏の可能性も捨てきれず。
 ライブ映像を見ると、いともたやすく強靭なリズム感でミニマルな演奏を繰り返す。これを見る限り、ものすごいテクニックの持ち主っぽい。

 どういう音楽経歴でンビラを演奏に至ったかは不明だが、ライナーには「トーマス・マフプーモから貰った楽器」なコメントも。アフリカ系ミュージシャンとも交流あるらしい。

 なお(4)~(6)は日本のペンタトニック・スケールをもとに作曲という。録音とミックスはNYだが、日系の下田けんじの担当がきっかけか。
 確かに不思議と日本風味のガラガラみたいな音色感が(4)から伺えた。

 (1)や(8)は即興要素ありとライナーに書かれている。けれどもアルバム全体のトーンは端正にコントロールされた。メカニカルなフレージングが乱れず演奏のテクニックが凄い。やはりループかなあ。

 
 圧巻の14分越え(8)は、さすがにダビングだろう。ループかと思うほど正確なオスティナートが延々続く中、即興フレーズがかぶさっていく。1テイクで完成とライナーにあり。
 鉄板の細片をはじくンビラは、金属質な硬い響きが耳に刺さる。淡々と鳴る振動が、柔らかい残響をまとった。マレットやスティックでなく、指先ではじく鉄板。その温かくも不安定な存在が、美しい落ち着きを演出する。鋭さを秘めた音色で。

 響きはテクノに似ている。ミニマルな展開も。だが、どうしても人間臭い柔らかさを持った。そんな相反する二面性をたやすく表現した面白いアルバム。
 アンビエントや商売っ気をあえて前面に出さないところが、勝因だろう。

Personnel:
Mbira - Richard Crandell
Percussion - Cyro Baptista

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