Sonny Rollins 「Easy Living」(1977)

 どうもロリンズの顔が見えない。今の耳では古臭さも漂ってしまう。

 良い演奏と名盤は違う。上手い演奏と個性的は違う。本盤はタイトなビートと整った鍵盤を筆頭の、抜群に滑らかな演奏が聴ける。ロリンズはテナーとソプラノを使い分け、ちょっと線が細い感じだけども長尺ソロを吹く。
 しかし他のメンバーのソロにもたっぷり尺を取り、サックスのアドリブは上滑りするぶんだけ、カラオケみたいな印象も受けてしまう。
 完全ダビングではあるまい。たぶん、同時録音だと思う。けれども破綻無いアンサンブルに支えられたロリンズのソロは、奔放に吹けてるとはいえ、今一つ覇気がない。
 
 フュージョン時代に生き残るべく、時代と折衷が伺えるアルバム。ジョージ・デュークは"Nucleus"(1975)で共演歴あるものの、あまり継続性ある関係ではない。ベースはハンコックのヘッドハンターズで活動したPaul Jackson。若き日にマイルスで鍛えられ、当時はライフタイムで気鋭のトニー・ウィリアムズがドラム。バッキングは売れ線をそろえた感が漂う。
 あまりロリンズは深く考えず、無造作に吹き込んだ一枚か。プロデューサーのオリン・キープニューズとロリンズ、互いはどれだけ主導権を握り合ってたのだろう。

 前年にヒットしたスティーヴィー・ワンダーの(1)で幕開けなあたり、なんとも選曲があざとい。ロリンズである必然性は、と思いたくなる。全6曲中、オリジナルは3曲。とはいえごった煮感漂うアルバムだ。
 繰り返す。凄腕メンバーぞろいで演奏は確実。ロリンズのソロはバックに埋もれ気味だが、粘っこく太いトーンでアドリブをとる。とはいえサックスとバッキングはあんがいキメも多く、細かくアレンジされていそう。
 
 演奏は意外とエレキギターが目立つ。なおギターを弾いてるCharles Icarus Johnsonは今や、ブロガーとし活動とあった。面白いキャリア変遷だな。http://littlegreenfootballs.com/

 ロリンズのフレーズは切れ目なく次々溢れだす。時代なのか、同じフレーズを繰り返す場面も目立ち、アドリブを派手に展開はしない。
 テナーとソプラノを使い分け、流麗な音色からサブトーンまで幅広い音使いを聴かせた。この辺がどうも統一性無く、オムニバス的なアルバム・イメージになってる。散漫とは言い難い緊張感あるのが救いだ。

 ソプラノでしみじみメロディを歌わせる(3)は、サブトーンが軋み味わい深い。けれどせっかくなら、テナーで野太く聴きたいと思う俺は、アナクロニズム主義者だろうか。
 せっかくの持ち味を、ロリンズはわざと外してるように思えてならない。

 ラテン風味の熱い盛り上がりの(4)も、ロリンズはソプラノ。けれどもしゃがれて濁る音色は、この曲には合ってる。本盤で最も面白く聴けたのが、これ。手数多く埋め尽くすドラミングと、空間をひょいひょい弾むエレピ。ベースはうねりながら煽る。
 派手な太鼓に乗って、ぐいぐいとトロピカルなサックスを吹き散らすロリンズの様子が、かっこいいなと思った。もろにフュージョンだが、この曲はひねった爽やかさがある。

 昔ながらのロリンズ節を味わうなら(5)。硬いタッチのピアノ・トリオへ併せるでもなく、ロリンズは自在にメロディを放出させたバラード。柔らかいリードなのか、やたらブワブワと軋む音色が頼りないけれど。
 ラフなタッチながら、思い切り整った伴奏を踏みにじるような、テナーの荒々しさがロリンズらしい。しかしアンサンブルでなく、伴奏とテナーに聴こえてしまうな。サックスのみくっきり目立たせたミックスのせいか。
 
 最後の(6)は爽やかなロリンズのソロに沿って、吸い付くようなコード・チェンジを魅せる鍵盤とベースのバッキングが凄まじい。煽り立てるドラムも痛快だ。
 テナーを豪快に展開するさまは、(4)のバリエーション。しかしこの曲はあまりに伴奏の見事さに、サックスのソロよりドラムや鍵盤、ベースの妙味に耳が行ってしまう。
 これもちなみに、テナーは音色が妙に上ずっている。とはいえエレキギターを抜いて、サックスのソロをもっと長く聴きたかった。ロリンズのリーダー作だし。

 ロリンズは50年代、自らを目立たせるためピアノすら抜いたワンホーンでの実験を繰り返した。時代、かもしれないが。なぜロリンズは鍵盤もギターも入れた分厚い音色を求めるのか。もっと我を通し、自分だけを目立たせればいいじゃないか。
 僕が本盤を素直に聴けないのは、そんなアプローチのせい。どうもブレていやしないか。

Track listing:
1. "Isn't She Lovely?" (Stevie Wonder) - 6:39
2. "Down the Line" - 7:59
3. "My One and Only Love" (Robert Mellin,Guy Wood) - 5:05
4. "Arroz con Pollo" - 5:37
5. "Easy Living" (Ralph Rainger,Leo Robin) - 6:09
6. "Hear What I'm Saying" - 9:40

Recorded at Fantasy Studios,Berkeley, CA, on August 3 - 6, 1977

Personnel:
Sonny Rollins - tenor saxophone,soprano saxophone
George Duke - piano,electric piano
Tony Williams - drums
Paul Jackson - electric bass(tracks 2-4 & 6)
Charles Icarus Johnson - guitar(tracks 1-3 & 5-6)
Byron Miller - electric bass(track 1)
Bill Summers - congas(track 1)



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