TZ 7604:Wadada Leo Smith "Golden Quartet"(2000)

 固定観念を外したフリージャズ。トランペットは釣られず、自由だ。

 あんがい、聴きやすい。ストイックな厳しさはあるけれど。
 息をつめて我慢比べではなく、隙間を変に埋めないゆとりを持った即興だ。

 70年代初頭から活動のAACM系フリージャズなTp奏者、ワダダ・レオ・スミスはTZADIKから何枚もアルバムを出している。ゾーンの好みか。高らかな音色でメロディを踏まえ吹き、前衛の小難しさに陥らない。楽器そのものの勇ましいかっこよさは意識してる。
 とはいえ観客へのサービス精神は希薄で、聴くのに集中力いる盤ではあるが。

 本盤はこの後に"The Year of the Elephant"(2002)を重ねたカルテット編成の1st盤。
 なお04年にはGolden Quartetの名はそのままに、メンバーは総とっかえしてる。この映像時点では、Vijay Iyer(p),John Lindberg(b),Ronald Shannon Jackson(ds)だ。


 本盤でのメンバーは同じくAACM系のジャック・ディジョネット(ds)参加が目玉か。他はAnthony Davis(p),Malachi Favors(b)の二人。
 調べてみるとアンソニーは75年からスミスと共演歴あり。フリージャズ系かな。80年代にグラマビジョンから何枚もリーダー作あり、新主流派が幅を利かせた80年代当時にしっかり活動してたみたい。ぼくは彼の音はきちんと聴いたことが無い。
 Malachi FavorsもAACM系でアート・アンサンブル・オブ・シカゴのメンバー。全員が尖った経歴の持ち主だからこそ、"ゴールデン"のバンド名をきちんと挙げられたのか。

 00年1月3日、一日で録音の本盤は凛々しくそそり立つフリージャズを、気高く演奏した。速いフレーズで斬り合う場面も、リズミックに盛り上がる箇所もあるけれど。全体的には雄大な風景のイメージが強い。
 小節線から解き放たれ、大らかにジャズを紡いでいく。和音の響きはきれいに整って、聴き苦しくはない。
 作曲はすべてスミス。(1)はディジョネットの名前をそのまま苗字にし、(3)は前年に他界したレスター・ボウィ(アート・アンサンブル・オブ・シカゴ)の思い出と副題あり。
 (2)は当時のパートナーで"Condor, Autumn Wind"(1998)を残した詩人、牧野はるみのことだろう。

 全体的に中心が見出しにくい。ディジョネットは刻みに走らず、細かいリズムをランダムに繰り出し、ベースやピアノもプッシュせずノリをかき回す。そしてトランペットは涼し気に、ぴいんと張った音色で空気を貫いた。
 たぶん生演奏聴いてたら、呼吸も含めたやり取りで楽しめるジャズと思う。音だけだと、かなり集中力が必要だ。コツなりポイントなりが腑に落ちたら、すごく刺激的に聴けるはず。

 時間が小節単位でなく、もっと細分化。拍ごとに細かくディジョネットはビートを揺らした。
 ピアノはフレージングで世界を描く。流麗なタッチで大きく音の布を広げ、ディジョネットのリズムと織物を紡いだ。ベースがそれに頼らず、ドラムとは違う譜割で複雑なノリを構築する。
 いわゆるソロ回しなお約束は無いけれど、なんとなく流れでそれぞれの見せ場がじわじわと現れた。

 とにかくディジョネットらのあおりに釣られず、緩やかで高らかな音色で進むトランペットのりりしさが、最大の聴きもの。
 ドラマティックな盛り上がりは計算じゃない。その場の空気でするすると変わっていく。物語性のない、自由なインプロの展開が聴きどころか。

Personnel;
Wadada Leo Smith - trumpet, flugelhorn
Anthony Davis - piano
Malachi Favors - bass
Jack DeJohnette - drums


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