Sonny Rollins 「on Impulse!」(1965)

 自らをブランド化した象徴的な一枚、と思う。


 ブルーノート、リバーサイド他のレーベル渡り鳥した57-58年。2年間の隠遁から"The Bridge"で復帰した62-64年のRCAビクター時代。これらを経て、インパルスへ移り、リリースとしては初が本盤となる。実際にはオクラ入りのライブ盤"There Will Never Be Another You"(1978年発売)があったけど。
 橋に向かってテナーを吹き鳴らしたロリンズが選んだのは、自らのブランド化だったと思う。RCAビクター時代は色々と企画盤めいたアルバムを連発し、商業的な成功もしくは時代との融和を図った。が、あまり成功したといえない。ロリンズはそこまで、器用じゃないみたい。

 そこでロリンズが選んだのは、時代と乖離したハード・バップ。自らの持ち味であり強みのテナーを頼りにし、まっこうからジャズに向かい合った。いささか時代遅れだとしても、ロリンズの音色やアドリブ・センスは十分に価値がある。それゆえに、ロリンズは時代から視線を離してしまった。
 したがって時代の必然性が無くなり、Milestone移籍であれこれと試行錯誤をしてるように見えるが。Milestone盤はあとでじっくり聴いていこう。

 さて、本盤。初顔合わせのベーシストWalter Bookerを迎え、ドラムは直近で共演を重ねてたMickey Rokerがリズム隊。てっきりベースは当時の相棒Bob Cranshawかと思った。ピアノはマックス・ローチのバンドで共演を重ねたRay Bryant。
 ロリンズはどうもブレている。今一つサイドメンに一貫性が無い。

 選曲はボツった"There Will Never Be Another You"でも演奏の(1)と(5)が、当時のお気に入りか。オリジナル曲は無く、すべてカバーを取り上げた。
 
 演奏は、悪くない。ロマンティックで骨太なモダンジャズが味わえる。55年、いや58年ぐらいでもこの演奏にリアリティはあったと思う。けれど本盤時点で65年。古めかしさは否めない。
 本来、ロリンズが演奏してきたスタイルだ。別に引け目を感じることは無い。けれどこういう盤を聴くと、ジャズが時代に乖離してしまったことを、スタイルとしてジャンル化した悲哀を覚えるのは僕だけか。
 
 ちなみにコルトレーンがこの数週間前に吹き込んだのが、"Ascension"。"A Love Supreme"が、前年の12月だ。そんな、時代にロリンズの新譜がこれか。
 甘く太いロリンズのサックスは、朗々と歌っている。リズム隊は破綻なく、滑らかにスイングした。陽気でロマンティックで、スマートで洗練されてる。ジャズの二極化が目立つ。

 ロリンズの選んだ道は、間違っていない。いまだに生き延びてるのがその証拠だ。
 ひりひりする刺激や、空気の必然性を追わなくともご機嫌なジャズは演奏できる。ましてやロリンズの伸びやかな音色で、前のめりの速いフレーズを聴けば熱くもなれる。片手に酒の入ったグラスでも傾けながら。
 これも、ジャズだ。隙は無いしね。

 本盤を聴いてて、ライブ盤的な躍動感が香る。どの曲も演奏に集中してミリミリとグルーヴさせる、ミュージシャンたちの意地は伝わってきた。 
 密度濃いハードバップ盤、ではある。

Track listing;
1. "On Green Dolphin Street" (Bronislaw Kaper, Ned Washington) - 7:10
2. "Everything Happens to Me" (Tom Adair, Matt Dennis) - 11:14
3. "Hold 'Em Joe" (Harry Thomas) - 5:30
4. "The Blue Room" (Lorenz Hart, Richard Rodgers) - 3:44
5. "Three Little Words" (Bert Kalmar, Harry Ruby) - 6:56

Recorded at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, on July 8, 1965

Personnel:
Sonny Rollins – tenor saxophone
Ray Bryant – piano
Walter Booker – bass
Mickey Roker – drums


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