Sonny Rollins 「There Will Never Be Another You」(1965)

 新しさは無いが寛いだ演奏。当時のロリンズの様子を生々しく伺える。

 フェイドインでいきなり始まる本盤は、MoMA(ニューヨーク近代美術館)で雨の中、野外で行われた。サイドメンは"サキソフォン・コロッサス"(1956)ぶりのトミー・フラナガンを含む5人編成で、なぜかドラムが二人もいる。
 ボブ・クランショー(b)とミッキー・ロカー(ds)はRCAビクター在籍時に馴染みのメンバー、特にこの二人は前年に"The Standard"(1964)を吹き込んだ、当時のロリンズ・バンドだ。ビリー・ヒギンズ(ds)は62年にドン・チェリーらとセッションぶり。
 つまり "On Impulse!"(1965)の一か月前に録音が本盤となる。"On Impulse!"のピアノはレイ・ブライアントだがドラムとベースは本盤と同じ。インパルス!は本盤をレーベル・デビュー作にしたかったが、録音の質を踏まえお蔵入りさせたようだ。

 2ドラム編成とはいえ、あまり目立ったリズムの実験は無い。スピーカーだとドラムの聴き分けも難しい。本編成はこの後に継続性もない。どういう意図だろう。単に目新しいことを、オーソドックスなジャズ・スタイルで試したか。
 なお本ライブ盤には未収録だが"Will You Still Be Mine"で幕開けしたらしい。それ以外の演奏曲情報は見当たらず。
 
 ライナーによるとこの録音は"Jazz in Garden"と銘打たち週ごとに顔ぶれ変更。総じて10時間ものイベントとあり、その一環でロリンズが出演らしい。
 そうそう。全くの余談だし、当時のイベントとは全く関係もないけれど。ワシントンDCのNational Gallery of Artにて同名の週次イベントが検索に引っかかり、時を超えた類似企画の継続性が何だか面白かった。
http://www.nga.gov/content/ngaweb/press/2015/jazzinthegarden.html

 本録音は78年にようやく発掘された。当時、ロリンズが録音を気に入らなかったらしい。演奏というより、録音。ときどきマイク前を外れて吹くロリンズゆえに、サックスがオフ気味になる点か。演奏は悪くない。時代を超えたモダン・ジャズを演奏するロリンズの姿が見事に封じ込められた。
 奔放っぷりは変わらない。自由にソロを展開し、時に短く別の曲を織り交ぜる。便宜上5トラックにアルバムは分けてあるが、サックスの興が乗るまま展開していった。

 若干線が細く硬い音色ながら、ロリンズはアドリブを膨らます。短いフレーズのつぎはぎが、ちょっと物足りない。肺活量とは別次元で、数音のソロがぶつぶつとつながる感じ。タンギングは柔らかく、スラーでの奏法とほぼ落差無くつながった。
 吹きながら唐突に世界を変える、ロリンズ節のアドリブは本盤でも聴ける。アップテンポでも熱っぽく迫らず、どこかロリンズは大人しい。ふらふらと揺れた。

 自由に吹くロリンズをサイドメンはしっかり支えた。あえてぐいぐい前に出ず、それでいて伴奏にとどまらない。つまりロリンズを立てつつ、自己主張はする。そんな全員の着実な関係性が、とっ散らかりつつも不思議な一体感を産んだ。

 例えば長尺(5)の中盤、ドラムとサックスのチェイスは喧しいほど賑やかだ。けれどもロリンズが強引にねじ伏せず調子っぱずれなほどサックスを吹き続ける。いっぽうできっちり手数使って2ドラムが暴れるため、音はみっしり詰まった。
 ピアノとベースも慌てず自分のスペースを守るため、破綻はしない。インタープレイのスリルは薄いが、危ういバランス感のスリルが漂う。
 そしてロリンズも録音してることにかまわない。終盤の無伴奏は完全にオフマイク。のびのびしてるなあ。まさに、あなたみたいな人はいないよ。

 時代を超越している。ロリンズ、が一つのブランドであり時代の流行には目を向けず。つまりフリーやコンセプトなどに拠らない。縮小再生産みたいな感じがして、あまり諸手を上げたくはない。56~7年ごろの全盛期に比べ、こじんまりしてるから尚更だ。
 別にジャズが常に時代へ寄り添う必要はない。けれどこの時代に、なぜこの演奏?って消極性は問いたくなる。なにせ、相手はロリンズだもの。もっと贅沢になりたくなる。

 しかしエンディングも中途半端だ。演奏中にメンバー紹介が始まり、そのまま消え入るように終わってしまう。

Track listing:
1. "On Green Dolphin Street" (Bronislaw Kaper,Ned Washington) - 7:22
2. "Three Little Words" (Bert Kalmar,Harry Ruby) - 9:13
3. "Mademoiselle De Paris" (Henri Contet,Paul Durand,Eric Maschwitz,Mitchell Parish) - 1:47
4. "To a Wild Rose" (Edward MacDowell) - 5:54
5. "There Will Never Be Another You" (Mack Gordon,Harry Warren) - 16:40

Personnel:
Sonny Rollins - tenor saxophone
Tommy Flanagan - piano
Bob Cranshaw - bass
Mickey Roker - drums
Billy Higgins- drums


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