Sonny Rollins 「The Sound of Sonny」(1957)

 いい感じで肩の力抜き、のびのびと自らの音楽を追求した傑作。

 リバーサイド初録音の本盤は、セッションは57年の3日間、6/11,6/12,6/19に録音された。マックス・ローチとの西海岸ツアーや"Way Out West"の吹き込み。NYへ戻ってローチやケニー・ドーハムのバンドに参加した。
 リーダー作ではブルーノートBLの"Sonny Rollins, Vol. 2"セッションののち、本盤のセッションへ至る。
 
 メンバーはソニー・クラーク(p)、ロイ・ヘインズ(ds)、パーシー・ヒース(b)のピアノ・トリオが伴奏した。ただし6/19のみベースがポール・チェンバーズに変わる
 ヘインズとヒースはデビュー当時に録音はあるが、ひさしぶりの共演か。
 ソニー・クラークとは本盤のみの共演に終わった。静かでしっとりしたピアノは、大人しいムードを施した。これはこれでロリンズと、良い相性のピアノと思うのに。

 本盤は自作曲こそ少ないが、様々な珍しい曲を取り上げ技巧に凝った。耳馴染み良く音色もふくよかなロリンズ節だが、演奏のアイディアは濃い。
 特に(7)。無伴奏のアレンジが、当時のパワフルさを彷彿とさせる。この当時、サックスのソロはかなり異色だ。それだけロリンズが自らの音楽に自信を持ってた現れだろう。
 さらにロリンズはむやみにアップテンポで攻めない。テンポは穏やかに、メロディは流麗に。しかし目線は気高い。
 なお(10)は同時期の録音だが当時のLPに未収録。当時は別のコンピに振られた。CDにてボートラとしてまとめて聴けるようになった。

 本盤はアレンジも凝っている。例えば(1)。ソロが始まると一拍目にベースとドラムが一打ち。それがずっと続く。たぶんロリンズが自らのソロを目立たせるためと思うが、ここまで極端な指示は、今でも新鮮に聴こえた。
 結局最初のアドリブ部分は全部、このアレンジだ。ロリンズは奔放にソロを展開して楽しんだ。
 テーマを挟んだ後は、普通の4ビートで短いソロで前半との対比も忘れない。この曲はピアノレスでくっきりとサックスを浮き彫りにした。
 
 ピアノやリズムとの譜割を合わせたテーマの(2)も、サックスのアドリブ部分でピアノはぐっと後ろ。
 本盤でロリンズはわずかに音の末尾を濁らせながら、次々に魅力的なフレーズを溢れさせる。ときどき変な和音を作り緊張感を抱かせて。ピアノ・ソロのスペースも作った。軽く連打するキックの響きが緩やかな煽りを演出する。

 あまり一曲を長くせず、しゃきしゃき進むのも本盤の特徴だ。LP時代で長尺が当たり前な当時において、本盤は一曲が3~5分程度。ソロを凝縮して小粋なスタンダードをかっこよく表現した。
 起伏激しく、ときにがらり場面が変わるロリンズの強みがたっぷり聴ける。ソロをとるときのピアノも軽やかにスイングし、決してロリンズとバトル形式をとらない。一歩引いた立場を保った。そのぶん物足りなくもあるが、明確にリーダーがだれかはわかる音構造になってる。
 ドラムは時々4バーズで暴れるが、ベースなんてすごく大人しいもの。むしろ西海岸的なクールに仕立てる構築性を感じた。
 
 (3)は速めのテンポで洗練を、(4)はバラードでしみじみ太いサックスを。楽曲ごとに雰囲気を変えてロリンズはアルバム全体の流れも明確に意識した。
 特に(5)でドラムがグッと打点を抑え、密やかなビート感でサックスを浮き彫りにするアレンジにしびれた。これもロリンズのアイディアか。

 (6)の冒頭でやたらリバーブ深い音像、テーマの途中からドライな音色に変わるのは何だろう。テープの問題か、スタジオでなんらかのマイク位置の変化があったのか。さりげない変な音世界が、面白かった。

 そして(8)。無伴奏でリバーブ深く吹くテナーは、小節線やビートから解放された。気の向くまま緩やかにメロディを重ねていく。ハードにブロウせず、ゆったりしたイメージで。この時点のロリンズは、無敵だ。

 響きの少ないパーカッションとドラム・セットを混ぜラテン風味を、すっきり演出が(9)。前曲のストイシズムを、滑らかなムードに変えてアルバム余韻を静かに終わらせる。この選曲っぷりも憎い。

 ボートラの(10)は6分と本セッションがらみにしては長め。短くまとめきれず、本盤未収録になっただけか。ロリンズにはあまりない、ブルーズをじっくり吹いた一曲となる。
 
 結果的にロリンズはリバーサイドへ残した盤は、これと"Freedom Suite"(1958)のみ。どちらも挑戦的なアルバムだ。リバーサイドは実験性を受け入れやすい気風だったのか。本盤の手柄がロリンズか、オリン・キープニュースかは知らない。しかし本盤で聴けるような楽曲丸ごとでの挑戦を本レーベルで続ける選択肢もあった。ロリンズは結局、自分自身のブランド化路線へ、進んでいくのだが。

 ともあれロリンズはこのとき、絶好調。数か月後に大傑作"Newk's Time"に向かう。ここではサイドメンを総とっかえする。ブルーノート側の意向かもしれないけれど。

Track listing:
1. "The Last Time I Saw Paris" (Oscar Hammerstein II,Jerome Kern) - 2:58
2. "Just in Time" (Betty Comden,Adolph Green,Jule Styne) - 3:59
3. "Toot, Toot, Tootsie, Goodbye" (Ernie Erdman,Ted Fio Rito,Gus Kahn,Robert A. King) - 4:25
4. "What Is There to Say?" (Vernon Duke,E.Y. "Yip" Harburg) - 4:56
5. "Dearly Beloved" (Jerome Kern,Johnny Mercer) - 3:05
6. "Ev'ry Time We Say Goodbye" (Cole Porter) - 3:23
7. "Cutie" (Sonny Rollins) - 5:54
8. "It Could Happen to You" (Johnny Burke,Jimmy Van Heusen) - 3:47
9. "Mangos" (Dale Libby,Sid Wayne) - 5:34
10. "Funky Hotel Blues" (Sonny Rollins) - 6:00

Recorded in New York City 1957
 on June 11 (tracks 5, 6 & 8),
   June 12 (tracks 2, 3, 7 & 9)
June 19 (tracks 1, 4 & 10)

Personnel:
Sonny Rollins - tenor saxophone
Sonny Clark - piano (tracks 2-7 & 9)
Percy Heath - bass (tracks 2-3 & 5-7)
Paul Chambers - bass (tracks 1, 4 & 10)
Roy Haynes - drums (tracks 1-7 & 9-10)


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