TZ 8317:John Zorn "In The Hall of Mirrors"(2014)

 クラシック系のStephen Gosling(p)を起用し、疑似ピアノジャズ・トリオを演奏した。

 即興と書き譜、どっちがえらいのか。いや、優劣は無いのだが。そんなことを考えさせる一枚。
 書き譜のピアノに即興リズム隊をぶつけるコンセプト。2010年から14年にジョン・ゾーンが作曲した6曲を収めた。ピアノはゾーンらしく、ミニマルなメロウさと、脈絡なく複雑に跳躍する旋律の嵐。ぱっと聴きはピアノすらも即興に聴こえる。

 ピアノ書き譜とリズムの即興形式は、他にもゾーンはStephen Goslingの演奏で行ったことがある。例えば、この映像。2013年にポーランドのWarsaw Summer Jazz Daysにて、
"Illuminations"のユニット名でピアノ譜面とリズムの即興をコンセプトにライブが披露された。この時のリズム隊は、TREVOR DUNN(b),KENNY WOLLESEN(ds)。


 この二人もTZADIKでおなじみの凄腕だが、本盤では盟友グレッグ・コーエンに、おそらく本盤で初共演の中堅Tyshawn Soreyと、ちょっとひとひねりしたメンバーを起用した。なおこのトリオでライブも行った記録あり。

 精妙で複雑な譜面を弾ききるピアノの実力も、リズム・キープに留まらぬグルーヴィなビートの展開を魅せるリズム隊のしたたかさも、どちらもすごい。そしてセッションに見せかけて、実は高度な計算と偶発性を内包させるゾーンのコンセプトも卓越している。
 さまざまな才能や視点を凝縮した一枚だ。

 サウンドはとっちらかった激しさと、整った雰囲気の度合いが曲や場面で大きく異なる。ピアノの安定感にリズムが襲い掛かる、逆説的なアプローチも感じた。仮想のピアノ・トリオ構築を目指しつつ、さらに次へ。そんな流れか。

 聴点をどこに置くかで、ガラリ変わる風景が本盤の愉しさだ。
 ピアノを従と聴いたら、ピアノのアクセントに合わせ、ドラムがリズムを引っ掛ける。ベースもキープせず、拍頭をズラし自由にフレーズを展開に思える。
 だがピアノを主としたら、リズム隊の変則フレーズに釣られず、かつ小刻みなビートに吸い付き、高速でヘンなフレーズをたやすく弾きのけるピアノ・テクニックに呆然だ。

 ゾーンの狙いは別として、譜面と即興のせめぎ合いが本盤で最大の刺激。ピアノだってメカニカルに譜面を追うだけじゃない。ロマンティックな音色で、りりしく旋律を操ってる。
 タイトなキメがそこら中にばらまかれ、比較的ミニマルなアプローチで冷涼に舞い上がる。そのスリルが、本盤の美味しいところ。ハードな場面より詩的な急展開が、より味濃く感じる。

 例えば(4)。ひそやかなピアノへ、小節感の希薄なブラシや弓弾きも混ぜたアプローチで戯れるドラムとベースの物語性が美しい。

Personnel:
Stephen Gosling: Piano
Greg Cohen: Bass
Tyshawn Sorey: Drums

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