Sonny Rollins 「The Bridge」(1962)

 2回目の引退から復活盤。のびのびと、しかし時代潮流から目を背けた盤。


 50年代後半、人気があるなかロリンズは引退。自分の音楽を見つめ直す、ためという。彼のエピソードで有名な「近くの橋で練習してた」が、この時期だ。復活した61年、RCAビクターと契約して初のLPが本盤にあたる。

 コンボ編成の、唯我独尊振りはそのまま。ピアノ無し。ただしジム・ホールを加えた変則カルテットだ。ジムの参加がレコード会社の意向かは知らない。けれどジャズ・ファンへ、ロリンズの復活劇へ重ねる保険的な話題作りとしてジムを加えたって、事情でも不思議はない。日本語Wikiによれば、ロリンズらしいが。

 確かにギターとのカルテットは、テナーを目立たせるのに適切だ。ギターはコード楽器でありながら、ピアノほどジャズ・コンボで音的な剛腕な主張をこの当時はしないから。

 ともあれロリンズは本盤で、往年の朗々たる旋律を提示した。サブトーンをうっすらまとわせ、わずかに絞り込んだ細身の音色で。
 そしてアルバム通して感じるのは、時代から遊離した感じ。時代を超えた50年代の名盤群で聴けた、溢れるパワーは減じた。老成した、ともいえる。
 いっぽうでフリーやフュージョンなど、時代へのすり寄りもない。(3)でリズム隊がクールに60年代ならではのスピーディな刻みで寄るが、ロリンズは古めかしいハード・バップで応えた。

 すなわち、ロリンズは自らのブランド化を選んだ。ワン&オンリーの道を。本盤を聴いて、そして以降の盤を聴くたびに思う。
 ロリンズは不器用だが、若いときは溢れるメロディの奔流が独特な生命力をみなぎらせた。本盤ではロリンズ節は聴ける。だが時代を切り裂くパワーまで達しない。あえて、そう決めつけたい。
 本盤には明確なコンセプトは無く、50年代のジャズを丁寧に再現するロリンズがいる。悪い、とは言わない。一つのスタンスだし、自らをブランディングする音色と独自性を持つのは、ロリンズの強みだ。しかし本盤以降のロリンズは、どうも聴くのにためらいがある。そう、ワクワクしない。

 サイドメンは全とっかえ。あえて新しい血を入れたか。ジム・ホールとの共演も悪くないし、破綻もない。
 演奏は悪くないし、スマートにまとまってる。ボリューム上げてガツンと聴くにはいいだろう。
 タイトル曲(4)が筆頭だ。小刻みに振れるテクニカルなテーマと、柔らかいタンギングでスラー奏法を混ぜながら奔出する、前のめりなテナーのアドリブに溺れるのは良い。縮小再生産って言葉が頭に浮かんでしまうけど。やはりぼくは、破綻してても何か、これまでと違う新しい何かが聴きたい。

 本盤は3日間かけて録音された。どうせ昔ながらのジャズをやるなら、一日ですべて吹き込むとこまで真似てほしい。因縁つけてるに等しいけど、一日で録り切る集中力に至れなかったのか、と邪推してしまう。

 繰り返す。本盤へ音楽的に不備はない。良く練って溌剌なモダン・ジャズだと思う。ロリンズのアドリブに危なげなさは無く、ところどころのフレーズにハッとくるきらめきもある。上記のぼやきは、本当に僕の主観だ。

 たとえば本盤の最後、(6)の冒頭でロリンズが無伴奏ソロをちょっと吹く。その無伴奏ソロだけで、アルバム一枚吹ききる。それくらいの突き抜けたコンセプトを見せてたら、僕は全く評価を変えてたと思う。挑戦や冒険してくださいよ、と思うんだ。それができたミュージシャンだったろうに。ちなみにロリンズ、このとき32歳。60年代なら確かに、守りに入ってた年齢だな。



Track listing:
1."Without a Song" (Edward Eliscu, Billy Rose, Vincent Youmans) - 7:28
2."Where Are You?" (Harold Adamson, Jimmy McHugh) - 5:10
3."John S." (Sonny Rollins) - 7:43
4."The Bridge" (Rollins) - 6:00
5."God Bless the Child" (Arthur Herzog Jr., Billie Holiday) - 7:27
6."You Do Something to Me" (Cole Porter) - 6:48

Personnel: January 30 and February 13-14, 1962
Sonny Rollins - tenor saxophone
Jim Hall - guitar
Bob Cranshaw - bass
Harry "H.T." Saunders - drums (without 5)
Ben Riley - drums (on 5)

 



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