Sonny Rollins 「Freedom Suite」(1958)

 B面から聴いて、A面へ行こう。才気走ったロリンズだ。

 リバーサイドから唯一のアルバム。57-59年のロリンズは1ショット契約なのか、ブルーノートを中心にアルバムごとと言えるほど、頻繁にリリースするレコード会社が変わってる。良しにつけ悪しきにつけ、散漫さも見られた。

 本盤はピアノ無しのワンホーン・トリオ。馴染みのローチを招き、Oscar Pettifordを投入し奇妙に理知的なジャズを描いた。時代、かもしれない。

 時代を切り開く新機軸狙いでコンセプチュアルなジャズ狙いはわかるが、今聴くと頭でっかちな感は否めない。力任せでなく、理性的で社会性を持ったジャズをやりたかったんだろう。
 盟友ローチのドタバタするリズムと、しなやかなロリンズのアドリブは整いすぎたバックのアレンジに潰され気味。
 本盤のロリンズ自作は(1)のみ。アルバム全体をコンセプトで埋めきれないところも、ロリンズのコンセプト整合性、もしくはレーベルの強権を跳ね返すパワーの中途半端さではないか。
 (1)は長尺で奔放なロリンズのアドリブが続く。けれど妙に整いすぎたベースラインに堅苦しさを感じてしまう。

 そのベーシスト、オスカーがソロを始まっても拍頭を律儀に叩く、朴訥なフレージングは変わらない。オスカーの持ち味かな、このベースは。
 アンサンブルはピアノレスゆえの浮遊感がうまく出て、空虚な理性っぷりを丁寧に表現した。意図とは別に空回りする理論構築の虚しさが滲む。

 楽曲構造は組曲そのままに、短い尺で次々に場面が変わって、テナーのムードも吹き分けた。それがロリンズの足かせか、聴いてる僕が構造を読もうとするせいか。どうにも窮屈な印象だ。盛り上がりそうなところで、場面が変わってしまう。
 しかしこれ、一発録音だろうか。15分半あたりのドラムが入る瞬間は、ふっと空気が変わる。複数のテイクをブロック編集した気もした。

 録音時期でいうと、この(1)のみ別日。同じメンバーで58年2月11日にB面収録の4曲を吹き込み、一か月後の3月7日に(1)を録音した。流れとしては普通にジャズを録音し、物足りずにアグレッシブな組曲(1)の製作になる。だがロリンズは本作以後、とくにプログレ的なコンセプト中心のジャズにはいかない。むしろローチの影響でロリンズが組曲を試しに作ってみただけ?

 時間軸通り、B面を先に聴くとアルバムの印象がガラリ変わる。理知的なコンセプチュアル盤が、普通に録ったジャズに飽き足らずもう一歩先を踏みたくて、組曲形式で実験してみた茶目っ気もしくは勇み足の盤に聴こえた。

 そう、(2)以降では冷静なオスカーのベースを挟むように、ドラムとサックスが好き放題に演奏してる。
 オスカーの安定っぷりが頼もしい。隙間多いフレーズも、ランニングで埋める場合も、ベースはきっちりとノリをキープした。だからこそ、ドタバタ跳ねるローチのドラミングががっちりと係留される。
 (3)の途中でブロウが熱くなるテナーだが、すぐさま切り落としベースのソロに。ドラマティックだがフリーの力任せでなく、小節数できっちりアレンジとロリンズ持ち前の物語性が滑らかにまとまった。

 ビートルズですっかり耳馴染みのスタンダード、(4)はくつろいだ譜割のテーマからぐいぐい迫ってきた。サブトーンを響かせるロリンズは本来ならロマンティックな世界へ向かうのに。ピアノもなく、ドラムも控える。ベースの緩やかなカウンター・フレーズに乗ってしみじみ吹くことで冷徹な繊細さを表現した。
 あとから加わるドラムも叩きっぱなしではない。シンバルを静かに、時に叩きやめて。明確にロリンズとオスカーの世界を構築に一役買った。

 (5)も大人しいな。もっと強烈なブロウへ行けるだろうに、遠慮がちにアドリブをテナーは展開した。続くベースが生真面目にソロをとる。その後のテナーも、どこか煮え切らない。これが当時のダンディズム?
 ドラムの大人しさゆえか。ローチはシンバルを賑やかに鳴らすものの、空回り気味っぽい。

 これを成熟した落ち着きとは言いたくないな。迷い、か。

Track listing:
1."The Freedom Suite" (Sonny Rollins) - 19:17
2."Someday I'll Find You" (Noel Coward) - 4:35
3."Will You Still Be Mine?" (Tom Adair, Matt Dennis) - 2:54
4."Till There Was You" (Meredith Willson) - 4:54
5."Shadow Waltz" (Al Dubin, Harry Warren) - 4:08

Recorded in New York City on February 11 (tracks 2-5), and March 7 (track 1), 1958
Personnel;
Sonny Rollins - tenor saxophone
Oscar Pettiford - bass
Max Roach - drums

 
 


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