Sonny Rollins 「Newk's Time」(1957)

 あまり語られないが、強烈な凄みと、わずかな実験性が伺える傑作。

 ワンホーン編成カルテットの本盤は、外人部隊のような混成メンバーだが、一期一会な熱く激しいジャズを紡ぎあげた。
 ダグ・ワトキンスは名盤"Saxophone Colossus"ぶりで、逆に本盤以降の共演盤は無いようだ。ウィントン・ケリーはロリンズが活動初期のBabs Gonzalesオケで共演歴はあるものの、以降は初のBL盤"Sonny Rollins, Vol. 1"まで録音は飛んでいる。売れっ子フィリー・ジョー・ジョーンズはマイルスのマラソン・セッション・バンドつながり。
 つまり初顔合わせではないし、芳醇な結果を残してきたメンツばかりだが、あまり過去にロリンズが積極的なブッキングをしてきたメンバーではない。
 
 新味を狙ったか。ブルーノート側の指定で、あまり必然性ない組み合わせだった気がしてならない。なぜならこの後、ロリンズは本メンバーで録音を残してないからだ。内容は素晴らしいが、ロリンズの好みとは違ったのかも。

 けれど本盤は(4)が白眉だ。ドラムとのデュオ。ベースすらいない。当時にしては斬新なアレンジではないか。それでいてコーダルな世界から外れない。フリーの展開は無く、あくまでベースやピアノが加わってもおかしくない。
 この不思議な喪失感と、純粋さはなんだろう。誰のアイディアだろう。今に至るまで、この路線を追求した盤は、ぱっと頭に浮かばない。たいがいはフリーに寄ってしまうから。
 たとえば本盤の10年後にコルトレーンが吹き込んだ"Interstellar Space"(1967)。音楽の地平は全く本盤と違う。

 この曲ではベースもピアノも夾雑物としてドラムと対話をしながら、ジャズの既定路線を外さない。のびのびとアドリブを奏でるロリンズは、ベースの拍頭から解放されつつ、ドラムのハイハットを軸に譜割を構成した。
 ジョーンズはスネアでノリを揺らしながら、キックで煽る。いまひとつバスドラが聴こえづらい。キックが迫力あったら、もっと違う音像だったかも。

 ぶっちゃけこれまで、本盤をぼおっと聴いてた。(4)がデュオと気づかなかった。この感想書くのに、改めてじっくり聴き返して、色々と調べてて初めて気が付いた。言い訳じみるが、それくらい本曲でのデュオは過不足なくスイングしてる。

 なお以下のディスコグラフィーが正しいならば、この録音は13テイク目。19テイクまで記載ある本盤のセッションで、ちょうど真ん中あたりに収録された。
 すなわち思い付きや遊びでなく、明確な意思とコンセプトを意識して録音と言える。ロリンズは15年くらい早かった。どうせなら同じアレンジで、LP一枚を吹き込んでほしかった。
http://www.jazzdisco.org/sonny-rollins/discography/

 他の曲も聴きどころが一杯。せわしなく巻き込むハイハットをイントロに、野太くテーマを奏でる(1)は、真っ黒なグルーヴが最高だ。特にピアノの和音とタッチが素晴らしい。
 ロリンズの解放されたほとばしるソロを、上品かつ丁寧に支えていく。途中でピアノが抜け、トリオ編成で音程アウト気味にスラー多発でテナーが疾走した。やがてピアノが再びコードを鳴らし、アンサンブルがくいっと締まる。このダイナミズムが聴きもの。
 
 ドラマティックな(2)の荒ぶる勇ましさも素晴らしい。地を這うテナーのアドリブを、くすぐるようにピアノが撫ぜた。たんなるランニングにとどまらず、空気をぐいぐい震わせるベースと、タイトに手数多く刻みつつ微妙にタイミングずらすリズム隊のノリもばっちり。一瞬たりとも弛緩せぬ刺激的な演奏だ。

 (2)と似たような大ぶりのスイング感でテーマを作り、滑らかにアドリブと溶かす。ワンホーンでのびのびとアドリブをとる、ロリンズの本領が全面的に発揮された(3)だ。
 テーマを執拗に取り出し、短いアドリブと前後させるアレンジの部分が特に気持ちいい。決して飛翔しきらず係留感を残した理性あってこそ、直後の芳醇に展開するサックスのアドリブが引き立つ。

 前述のピュアなデュオな(4)に続く曲は、まさにジョーンズへ捧げた。ロリンズの、本盤唯一なオリジナルである(5)。しかしこの盤、とにかくテナーが前面に録音バランスとられた。
 でかい音でメロディを雄大かつ耳ざわり良く投入する。ときどきスラー多発の場所は手癖ぽいけれど。次の瞬間に一転して風景変える新鮮なメロディ遣いが、ロリンズの魅力だ。メロディだけでなく、展開そのものに波と集中力のばらつきを感じて楽しい。
 なんというか、生き様そのものをアドリブになぞらえて聴きこめるよう。言い換えると、ロリンズはアドリブへ聴くほうの思い入れを容易に投影しやすい。

 本盤最後はムーディなバラードの(6)。もっともピアノのしゃっきりなタッチと、粒立ち良いシンバル・ワークで寛いだ雰囲気より、クールダウンするような緊張感あり。

 うーん、やはりどの曲を聴いてもばっちりだ。ハードバップの名盤として、素直に大推薦する。



Track Listing
1."Tune Up" (Miles Davis) - 5:44
2."Asiatic Raes" (Kenny Dorham) - 5:57
3."Wonderful! Wonderful!" (Sherman Edwards-Ben Raleigh) - 5:59
4."The Surrey with the Fringe on Top" (Richard Rodgers-Oscar Hammerstein II) - 6:32
5."Blues for Philly Joe" (Sonny Rollins) - 6:44
6."Namely You" (Gene de Paul-Johnny Mercer) - 3:18

Personnel:September 22, 1957
Sonny Rollins - tenor saxophone
Wynton Kelly - piano
Doug Watkins - bass
Philly Joe Jones - drums

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