Phil Collins「No Jacket Required」(1985)

 ドラマーのアイデンティティを、たやすく打ち込みと調和させた快盤。
 

 LPで当時、よく聴いたな。デラックス・エディション発売のニュースを見て、久しぶりに聴き返した。フィル・コリンズがやたら活躍してた、べらぼうに上り調子な時期の盤になる。
 しかしデラックス・エディションの老いを隠さぬ20年後の同じ構図ってアイディアが凄いな。当時から髪の毛は薄かったが、今では顔中がシワだらけだ。

 本盤は3枚目のソロ。世界中で1位取る大ヒットした。やはり最初のシングル"One More Night"が印象深い。安っぽいリズム・ボックスのバラードなのに、やたらダンディなアレンジな世界観に、すごくしびれた。


 アップ・テンポも、奇妙な薄っぺら感がいいんだよね。リアルタイムで聴いてた贔屓目かもしらんけど。筆頭が、シングル・カットされた(1)。

 けっこうアップ・テンポの曲は似たようなタッチが多い。その一方で(2)のサビでガラリ変わる風景が良いなあと思ったっけ。

 本盤はドラマーのソロにも関わらず、あんまりフィルはドラムのテクを前面に出さない。もともとドラマーとして凄腕、16ビートのバタつくビート叩かせたら、独特なグルーヴを出すのに。本盤では(4)を筆頭にドラムの腕前を見せつける一方で、てらわずに打ち込みを重ねる(3)みたいな両極を、うまいことまとめた。

 今の耳だとヒュー・パジャムのゲート処理した、ドンスカな響きが古臭くはあるけれど。流行の宿命だ、仕方ない。
 80年代前半は、生演奏はダサいって風潮だった。打ち込みのクールさが幅を利かせてた。その打ち込み鍵盤やドラムをごく滑らかに取り入れる一方で、フェニックス・ホーンズのクリーンでジャストなラッパで人力の勢いも忘れない。

 エンターテインメントに徹しつつ、甘さに流れない。その両方のバランスが、ぎりぎり成立したのが本盤だと思う。本盤より前はちょっと硬く、本盤の後はぐっと甘くなる。
 ゲストにスティングやピーター・ゲイブリエルも。さりげない豪華さだ。
 
 そういえばフェニックス・ホーンズはE,W&Fのホーン4人組。てっきりこの別名であちこち活動を当時してると思ったら、フィル・コリンズとの演奏専門に近かったんだ。
 Webサイトまであってびっくり。http://www.thephenixhorns.com/
 メンバーはDon Myrick(sax), Louis "Lui Lui" Satterfield(tb),Rahmlee Michael Davis(tp),Michael Harris(tp)。

 LPでは最後が(10)だった。寂し気に歌い上げつつ、雄大な世界観が沁みたな。今のCDだともう一曲付け加えるため、どうもしっくりこない。

 当時のフルサイズなライブ映像なんてものもあるのか。


 



Track Listing:
1."Sussudio" 4:23
2."Only You Know and I Know" (Lyrics: Collins, Music: Daryl Stuermer) 4:20
3."Long Long Way to Go" 4:20
4."I Don't Wanna Know" (Lyrics: Collins, Music: Stuermer) 4:12
5."One More Night" 4:47
6."Don't Lose My Number" 4:46
7."Who Said I Would" 4:01
8."Doesn't Anybody Stay Together Anymore" (Lyrics: Collins, Music: Collins, Stuermer) 4:18
9."Inside Out" 5:14
10."Take Me Home" 5:51
11."We Said Hello Goodbye" 4:15

Personnel:
Phil Collins - vocals, backing vocals, drums (2, 4, 6, 8-11), keyboards (2, 3, 5-11), Roland TR-808 (3, 5), Roland TR-909 (1, 10), LinnDrum (2, 6), Simmons drums (3, 7), vocoder (7), kalimba (7), synth bass (2)
Daryl Stuermer - guitars (1-10), keyboards (4)
David Frank - keyboards (1, 6, 7), Mini Moog bass (1, 7), Oberheim DMX (1)
Lee Sklar - bass guitar (3-6, 8-11), Piccolo bass (3, 10)
The Phenix Horns, arranged by Tom Tom 84 - horns (1, 2, 7)
Gary Barnacle - saxophone (4, 7)
Don Myrick - saxophone (5, 9)
Arif Mardin - string arrangement (5), orchestral introduction (11)
Sting - backing vocals (3, 10)
Peter Gabriel - backing vocals (10)
Helen Terry - backing vocals (10)
Nick Glennie-Smith - keyboards (11)

Produced and Mixed by Phil Collins and Hugh Padgham
Engineered by Hugh Padgham

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