Sonny Rollins 「Saxophone Colossus」(1956)

 メロディアスなサックスが堪能できる傑作であり、歴史に残る一枚。

 個人的にも思い入れが一杯ある盤で、色々と感想書くのに苦労する。なるべくサラッと書こう。ジャズ史の観点では入門盤や基本としてたびたび語られる盤だ。モダンジャズの大傑作な一枚であり、植草甚一の文章も興味深く読んだ。モダンジャズの浮き立つムードと、ダンディさを見事にまとめてる。
 
 サイドメンは馴染みのローチを押さえ、ピアノとベースは過去のロリンズ盤に無い顔ぶれを選んだ。心機一転ってことか。前作でマイルス・バンドの精緻なアンサンブルから離れ、セッション的な新しさを選んだのかもしれない。メンバーはやはり、凄腕ぞろい。

 僕が本盤を聴いたのは、たぶん中学生頃。父がLPを持っていて、ブレイキーの"モーニン"と合わせて、何度も聴いた。高校でブラバン入り、テナー吹いたのも本盤を聴いてたからだ。楽器で音を出せるようになったら、さっそくテーマの音を探り吹いたことを思い出す。

 ジャズを聴く観点でも、本盤のアドリブは衝撃的だった。特に(1)。上へと向かう華やかなテーマの直後、ロリンズは数音をメカニカルに加工させる。ぶはぶはと同じ音を繰り返し、一転して流麗なメロディへ。本ブログで何度も「ロリンズ節」と呼ぶパターンの、典型例だ。
 今聴くとフレーズの一部を下降展開し、ブルージーな旋律へ変化させる助走かも、と思う。だが初めて聴いたとき、テーマのメロディを"大切にしない"発想に度肝を抜かれた。
 ジャズがテーマを軸にアドリブをする音楽だって知識のみで触れた本盤は、なんでテーマがいるんだ?と衝撃を受けた。今の耳だと、色々と解釈はできる。けれども当時は自由な発想にものすごく惹かれた。

 音色的にサブトーンが多いのも本盤の特徴だ。楽器の音もさりながら、録音としてもぐっとマイクに近づき生々しい音色を収録してる。これが、いかんかった。高校のブラバンは比較的クラシック寄りのアプローチで、サックスの音色でサブトーンって悪と定義した。したがってそちらの価値観に耳が慣れると、本盤の音色は気持ち悪くて仕方ない。
 音楽は素晴らしいのに、生理的に気色悪く聴けない。そんな矛盾する感じを、ずっと覚えてた一枚だった。さらに歳を取り、自然に本盤を聴けるようになったときは嬉しかったな。

 さて、本盤。とにかく(1)の印象が強烈だった。A面ではほぼこれしか、印象に残ってない。ブルージーで歯切れ良い(2)や、ファンキーに跳ねる(3)ももちろん名演なのだが、「そういえば本盤、こんな演奏もあったよな」程度しか、脳に刷り込まれてない。
 B面も同じ。超傑作と語り継がれてる(4)はもちろん印象あるが、(1)ほどではない。あくまで僕の個人的な印象だけど。
 なお本盤、最初は長尺ってのも印象深かったな。特に(4)を含むB面。ポップスに慣れた価値観だと、LP片面は5曲がお約束だった。でもジャズは違う。特に本盤はB面に2曲しか入ってない。損したような気分。もちろん演奏聴いてると、時間を忘れる長さだ。聴き終わって「2曲しかなく損した」などと思ったこともないけど。

 本盤のために改めて聴き直すと、長尺テナー・ソロで存分にロリンズが自己主張しまくった一枚、と思う。だがサイドメンは決して添え物や、伴奏ではない。主役はロリンズ。これへは変わらない。けれど抜き身の鋭さをリズム隊からしばしば感じる。
 強く跳ねるロリンズを立てながら、隙を許さない。そんなリズム隊のスリルが滲んで聴こえた。

 基本盤と言われる本盤を、僕はいまだにきちんと聴きこめてない。良いのやら、悪いのやら。いまだに本盤は新鮮な魅力を聴くたびに放つ。

Track listing:
1.St. Thomas 6:46
2.You Don't Know What Love Is 6:28
3.Strode Rode 5:13
4.Moritat 10:06
5.Blue Seven 11:18

Personnel:June 22, 1956
Sonny Rollins - tenor saxophone
Tommy Flanagan - piano
Doug Watkins - bass
Max Roach - drums

関連記事

コメント

非公開コメント