Sonny Rollins 「Tenor Madness」(1956)

 コルトレーンとロリンズの共演が聴ける、唯一の盤。緊迫より落ち着いた香りだ。

 マイルスのマラソン・セッション・バンドにロリンズが加わった格好だ。タイミング的にも、最初のマラソン・セッションが終わった約2週間後になる。本来、ロリンズがマイルス・バンドにいたころ。
 しかしよくわからないのが、コルトレーンが1曲参加のみ。たまたまのコルトレーン参加か、敢えて話題作りに一曲混ぜて、あとはロリンズの個性を明確にさせたか。どちらだろう。

 今の視点では巨匠二人の共演、になる。神格化したコルトレーンを軸にすら取りかねない。だが、当時は全く逆。あくまでロリンズの後釜でマイルス・バンドに加入、の立場だった。年齢的にはコルトレーンが上のため、本盤録音時にロリンズが26歳、コルトレーンが30歳だったが。

 で、(1)。ずるずると線の細い音色でスラーを多用のコルトレーンと骨太のロリンズの対比だ。あくまで共演って位置づけで、それほど突出した演奏ではない。
 このディスコグラフィーの記録が正しければ、マトリクス番号は本曲が一番最後。一通り録音が終わって。最後に一曲ゲストでってコルトレーンの立ち位置だ。
 http://www.jazzdisco.org/sonny-rollins/discography/
 終盤でテナー二本のチェイスが聴ける。ここで互いの音色違いやアプローチの立ち位置を聴き比べられるのが妙味か。
 もっともこの録音のみで二人の共演が終わってしまうのは、確かにもったいない。コルトレーンが生き生きしてた時点で、もう一度くらい邂逅が欲しかった。

 (2)はミディアム・テンポのモダン・ジャズ。ある意味、破綻の無いカッチリしたアンサンブルの上で、寛いだ面持ちでテナーがアドリブを取る。テンポ的な解釈も含めて、やたら音を埋めずに一呼吸をときおり入れながら、ソロを展開するテナーがいかしてる。
 レッド・ガーランドのピアノも良い。1テイクで快演を連発したこのバンド、隙すらどこにもない。

 ふっくらしたテナーと小粋に弾むリズムの対比が抜群な(3)が傑作。ぼくはこの演奏、好きだ。ロリンズのアドリブはここでも、フレージングに気を配ってる。アクセントや譜割をあちこちにバラケさせ、単調さを注意深く外して生き生きした世界観を作った。 
 サブトーンでずるずる響かせながら、淡々と2音を繰り返す終盤のフレージングですらも、かっこいい。終盤の二拍三連の連発もおおらかさを見事に表現した。

 (4)も落ち着いたパターン。本盤ではあまりアグレッシブに斬り合わない。むしろ大人のロリンズを演出するかのよう。さらにロリンズはアドリブで軽やかにメロディを跳ね上げさせ、躍動感も披露してる。ガーランドもあわてず騒がず、頼もしい印象だ。
 滑らかなメロディをふっくらと料理した(5)も良い演奏だ。しゃっきりとリズムが駆け抜け、穏やかな雰囲気のテナーが泳いでいく。
 
 大人で隙の無い演奏が詰まっており、パワフルな炸裂とはちょっとベクトルが違う。ともすれば、ちょっとばかり地味に聴こえてしまうが、凄腕な面々がマイルスのプレッシャーに影響されず、寛いだ風景を封じ込めた盤だと思う。



Track listing:
1."Tenor Madness" - 12:16
2."When Your Lover Has Gone" (Einar Aaron Swan) - 6:11
3."Paul's Pal" - 5:12
4."My Reverie" (Larry Clinton, Debussy) - 6:08
5."The Most Beautiful Girl in the World" (Rodgers, Hart) - 5:37

Personnel:May 24, 1956
Sonny Rollins - Tenor Saxophone
John Coltrane - Tenor Saxophone (#1 only)
Philly Joe Jones - Drums
Red Garland - Piano
Paul Chambers - Bass

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