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Daevid Allen 「Self Initiation」(2004)

 じわじわ変化していく緩やかなドローンに、アレンが乗っかる。

 英VoiceprintがBananamoon Obscuraのレーベル下で、デビッド・アレンの関連盤を各1000枚限定で発売したシリーズの一枚。
 2004年発売当時は手に取りそびれていたが、今はサブスクで容易に聴けるのが嬉しい。

 アレンが本盤をどのようなつもりで製作かはわからない。一般リリースを考えていたのか、ごく限られた用途に限定か、発表を考慮せず製作か。
 少なくともリリース時に裏ジャケットへは、豪ニューサウスウェールズ州北部のマランビンビー山のふもとで作られ、のちに英グラストンベリー周辺の自己通過儀礼ワークショップに使われたとある。

 収録曲は4曲。タイトルでは自己啓発セラピーめいたタイトルと関連性が付けられているけれど。音楽そのものは、極端な連結は感じられず。
 アレンのグリサンド・ギターが棚引き、マザー・ゴング/ゴングメゾンのハリー・ウィリアムソンらがシンセなどを足した。
 曲によってはコーラスを入れたり、アレン自身も声を重ねる。

 全体的には淡々とした電気仕掛けのドローン。けれど持続や繰り返しが目的ではない。ことさらに変化や深化を強調しないが、ミニマルさよりも緩やかなインプロを狙ったようす。

 前半はギター寄り、中盤がシンセ強調。最初に15分程度の長さでじっくり整わせ、(3)は20分越えで没入。
 最後に5分程度で余韻を促すと、流れや構成が考えられている。けっして手持ち音源を無造作に寄せ集めって乱雑さではない。

 例えば岩盤浴とか、オシャレな店のBGMとか。この手のヒーリング音楽は、スピリチュアルな方向に向かわずとも耳にできる。たいがいは聴き流してしまい、むしろ単調に思えてしまう。
 これも情報を喰わず聴いたときは、その方向性。むしろアレンの声やギターが夾雑物となり、汚れにつながりそう。

 アレンの音楽だって意識したときも、シンセの音色がもどかしい。せっかくならいっそ、ギターだけで紡いで欲しかったって欲が出る。

 ともあれ本盤はアレンの音楽と意識した瞬間に、緩やかな即興性と濃厚サイケな酩酊感が魅力的に光る。
 リズムや強弱は控えめ。空白よりも白玉で音像を塗りつぶす方向を選んだ。広々と拡大、もしくは底なしに深く。どちらにも想像を膨らませられる。

 カラフルな変化を控え、立ち止まらず緩やかに進んでいく光景を描いた。自らの力を使わず、流されていくように。
 単調に思わせて、きめ細かく音像は変化していく。アレンの丁寧な音作りを楽しめる作品。

Tracklist
1. Hello Me 16:09
2. Hello You 14:48
3. Past Lives 23:09
4. Mystery School 5:49

Personnel
Guitar [Glissando], Voice, Composed By – Daevid Allen
Choir – Nimben Silly Symphony
Sounds – Harry Williamson
Synthesizer – Hakim Gilliam
Voice [Bespoken] – Gilli Smyth, Joe

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