Gene Carl 「Gray Matter」(1993)

 米人作曲家のミニマルな清涼感が漂う、現代音楽の盤。
https://www.discogs.com/ja/Gene-Carl-Gray-Matter/release/3890524


 53年にカリフォルニア生まれの作曲家/ピアニスト。クラシックとポップス両方のフィールドで活動らしい。以下のオフィシャルWebにプロフィール掲載あるが、文字が画像処理されており非常に読みづらい。現在も活動継続中が伺える。
http://www.genecarl.nl/www.genecarl.nl/About_Gene.html
 なおGene Carlバンド名義では、こういうジャズ風のアプローチだ。

 本盤はグロテスクなジャケット絵に惹かれて聴いてみた。93年にオランダのユトレヒトとアムステルダムで録音、オランダのレーベルX-ORから発売された。すべてジーン・カールの独奏。

 (1)~(4)は「ピンク組曲」と銘打たれたクラシックのピアノ独奏曲。冒頭はミニマル、次第にフレーズが現れる。現代音楽らしい跳躍と性急さを持った楽曲で、テクニカルに音が飛び交う。疾走一辺倒でなく、メリハリ効かせた構造と不協和音をあまり使わぬきれいな響きにアメリカ・スタイルを感じた。

 根底にどこか、ポップな色合いを感じる。あまりみずみずしさの無い、機械的な響きもあるけれど。
 作曲は91年。続く(5)と合わせて、ユトレヒトで93年6月14日のコンサートホールで録音された。

 なお(5)もパーカッシブな和音がミニマル風に展開する現代音楽曲。「ピンク組曲」とさほどテイスト変わらぬ楽曲だ。こちらは87年と「ピンク組曲」より古い作品。91年に改稿されている。
 中盤から静かな楽想へ。そんなとこも「ピンク組曲」と似てる。

 (6)は同年93年6月7日にアムステルダムのスタジオで録音された電子音楽。副題に「in memory of Deborah Feinberg-Hecht,for electric tape,2 synthesizers,ratchets,Zube Tube」とあり。Deborah Feinberg-Hechtの経歴は不明。

 Zube Tubeは商標登録の記載あり。スペイシーな音を出すおもちゃ楽器の一種みたい。
 製造会社はこの記事によればRitam International社の製造らしいが、会社のWebが見つからなかった。

 隙間の多い電子音楽で、リズミックなパターンもあるけれどダンス音楽とは無縁なベクトル。やはり現代音楽寄りのサウンドだ。音色の軽やかさから酩酊感は多少味わえる。これも91年の作品とあるが、今回録音が再演かは不明だ。音数はさほど多くないけれど、同時発音で製作したか、ダビング繰り返したかはよくわからない。でも一度に一人で全部演奏するには、ちょっと忙しすぎるかな。

 本盤の中で、最も楽しめるのがこの(6)。しかつめらしい現代音楽と捉えたら敷居が高いけど、アンビエントなエレクトロニカとして聴ける。ふわふわする揺らぎが、奇妙な酔いを誘発した。
 10分過ぎからオーケストラのサンプリングと、パッド音色のシンセが絡むあたりは奇妙に古臭い。でも再びミニマル・テクノな風景へ向かう。

 最後の(7)も電子音楽。83年の作品と本盤で最も古い。91年にMIDIバージョンで改作、本盤へはこの版が収められた。テキストに使ったA.R.Luriaとは、20世紀中盤に活躍した、ソ連の神経心理学者の草分けの一人、アレクサンドル・ルリヤのこと。"The Man with a Shattered World"(1987:未訳?)から引用とあるが、アルファベットや単語を断続的に叫んでるシンプルなもの。心理実験のフレーズかな?
 こちらはもう少し(6)よりビートが効いている。左右にパンするバスドラと、ちょっと歪んだエレべっぽい響きは、ミニマルながら古びたテクノみたい。
 本曲は(6)とことなり、93年5月25日にアムステルダムの別のスタジオで録音された。奇妙なサウンドで、サンプリングのネタに面白いかも。

Track List
1.Pink Suite - Sun Luck
2.Pink Suite - Candystripe
3.Pink Suite - Pagoda
4.Pink Suite - Lotus Eaters
5.Claremont Concerto
6.Kaddish
7.Gray Matter

Credit;
Electronics – Gene Carl (tracks: 6, 7)
Piano – Gene Carl (tracks: 1 to 5)
Vocals – Gene Carl (tracks: 7)

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