Madhouse 「8」 (1987)

 廃盤が悔しい。祝。17年4月にMP3で再販を記念して、再掲載。
 プリンスの溢れる才能をさっくり凝縮した、疑似コンボ編成の傑作だ。

 
 とはいえ今もプリンスの才能は枯れる気配無いのだが。 16年4月、プリンスは永眠。無念。
 マッドハウスは"Sign O' The Times"発売のころ、パープル・レインの大ヒットで伸び伸び創作できる自由を名実ともに確立したであろうプリンスが、膨大な録音を行ってた頃の一枚。
 敢えてインストに着目し、疑似コンボ編成を取った。

 委細録音は不明、奏者も不明な一枚だが、なぜかPrince Vaultには96年9月28日から10月1日に録音と明記あり。どの情報根拠だろう。
 
 冒頭のぱっつんぱっつんに革を張ったスネアの響きに惹かれるため、コンボ編成のジャズ・アルバムと思いきや。既に1曲目からシンセのダビングが施されてる。さらに曲が進むにつれ音構造は練られていき、たんなるジャズにとどまらぬ幅広さを魅せた。
 本当にこれが数日間で録音されたならば、あまりの幅広さに呆然とする。

 クレジット上にプリンスの名前は無い。実在が確かなのは当時プリンスのバンドにいたエリック・リーズのみ。リズム隊のルイス兄弟と鍵盤でオーストラ・シャネルなる不詳の人物が記載されていた。
 輸入盤屋で当時、キッチュなセクシーさを持つLPが何枚も棚刺しにされてたな。そのときは鍵盤のオーストラ・シャネルがプリンスでは、と取りざたされていた。今はサックス以外、すべてプリンスって説が定番になっている。

 マッドハウスは87年5月~6月の欧州"Sign O' The Times"ツアーで前座を務めた。その時のメンバーは、Eric Leeds:Sax, Dr. Fink:Keyboards, Levi Seacer, Jr.:Bass, Dale Alexander:ds。
http://www.princevault.com/index.php/Madhouse
 その際のセットリストは、(1)Mutiny(2)6(3)3(4)2が定番だった。(1)は、やはりプリンスの疑似バンド、ファミリーのレパートリー。

 改めて今回聴いてて、本盤はプリンスだけじゃなくほかのメンバーもダビングでかかわってたんじゃ、と感じた。Dr.FinkやLevi Seacerに、シーラ・Eも。楽曲によって複数の奏者がいたように感じた。

 特にドラム。タイトさとルーズなもの、曲によって個性が違う。
 プリンスのドラムの個性や手癖がよくわからない。でも(1)での突っ込み気味なタイトさと、例えば(3)や(6)でのルーズな響き。違う人なんじゃないかなあ、と感じた。でも、プリンスのやることだからなあ。弾き分けもできそうだ。

 本盤は隅々までアレンジされている。セッション風の(1)から、背後に薄くシンセがダビング。(2)は二種類のベースが交錯し、ホーンもダブル・トラックだ。これもルーズなベースと突っ込み気味の硬いベース、二人の奏者がいるかのよう。
 朗々とテナーが響く(3)も、バッキングは即興じゃない。プリンスのボーカルをそのままサックスに置き換えたみたいだ。

 (4)のうっすらラテン風味もピアノとサックスは吸い付くように譜面フレーズを奏で、ベースが速弾きで暴れる。ピアノ・ソロに至っても頻繁にサックスと譜割を合わせるあたり、即興要素は限りなく低そうだ。
 小品(5)はJBスタイルを軽やかにまとめ、ラテン・パーカッションのダビングも。この太鼓はシーラ・Eかもしれない。

 ファンキーな(6)の引きずるノリは前述のとおり(1)と同じドラマーか疑いたくなる。妙にこっちのほうがトロく聴こえてしまう。プリンスが曲ごとに表情を変えて叩いてるなら、本当にすごいテクニックだ。

 一転して疾走する(7)。タイトなドラムはティンバレスを聴いてるかのよう。サックスが伴奏と吸い付くアレンジが見事だ。当時のプリンスらしい、一瞬の隙もない緻密なアンサンブルに圧倒される。

 最後の(8)に至り、アルバム冒頭のジャズ・コンボ風味は全く姿を消した。むしろプログレのようにきっちり構築されたアンサンブル。男の吐息がシーケンサーでテクノな風味を施す。そのアクセントと、ちょっと拍をずらしてメインの曲が流れるリズムのセンスが素晴らしい。
 フルートが夢見心地にきらめき、シンセの華やかな音色がきらびやかに彩る。プリンスのインスト構築力をまざまざと見せつけた。
 のちに数枚のインスト盤をプリンスはリリースするが、この路線も美しい。

 惜しむらくは本盤が廃盤なこと。当時活動したペイズリー・パーク・レーベルから発売され、CD再発もされたが。契約の関係か。
 プリンスは膨大な作品をリリースし、いまだにバリバリに現役だ。にもかかわらず、過去作で何枚も手に入らず、歯噛みする。これもそんな一枚。確かに契約も重要だ。けれどリスナーとしては、聴きたいときにすぐ手に入る。そんな環境が欲しい。

 当時、(6)がシングル・カットされた。このA面"6 (End of the world Mix)"と、B面カップリングの"6 and 1/2"はCD化すら無いはず。マッドハウスの2nd"16"とそのシングル曲も合わせ、まとめて復刻してほしい。切なる願い。

Personnal Credit:
Eric Leeds : Reeds
Austra Chanel:key
John Lewis:ds
Bill Lewis:b

Real Personnel(?):
Eric Leeds - tenor saxophone, baritone saxophone, flute
Prince - all other instruments, except where noted (uncredited)
Unidentified vocalists - telephone conversation on Five


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