TZ 7366:John Zorn "The Dreamers"(2008)

 ラウンジ路線を即興指揮の新形態で、スリリングに昇華させた一枚。


 ジョン・ゾーンは活動当初からゲーム・ピースにて「即興のシステム化」へ多大な興味を持っていた。
 一連の映画音楽やMusic Romanceシリーズにて、端正で滴るラウンジ的なアプローチにも食指を伸ばしていた。
 マサダという小編成で強力なコンボを率い、エレクトリック化など拡大したアンサンブル路線も始めていた。

 そんなさまざまな要素が集まったバンドの一つが、ドリーマーズだと思う。

 演奏する前にどっかり座り、ハンドキューで展開を操る。即興要素はありながら、構成はばっちりとゾーンの意思が反映されている。スマートに指揮へ応えられるミュージシャンのテクニックあってこそのサウンドだが、奏者の匿名性も増す。
 つまり。そのタイミングで、そのソロを演奏したのは、確かに奏者の意思だ。だが、ゾーンの指揮があってこそ。楽曲は明確にゾーンが作曲してる。ならばどこまでがゾーンの作曲と読むべきか。そんなことを、ドリーマーズ聴くたび考える。
 サウンド自体は、すごく耳馴染み良く柔かさと鋭さを兼ね備えた、抜群のかっこよさだが。

 エレクトリック楽器を持ち、ジャズ的なアプローチをとるけれど。根本は室内楽であり即興要素で揺らしてるダイナミズムがドリーマーズの本質だ。
 何も知らずに聞いたら、かなりのところが譜面に思える。演奏はかけらも破綻なく、ソロ回しとバッキングみたいに単純な二極構造ではない。リードと思しきフレージングの裏で、ほかの楽器が生き生きと動き続ける。鋭く場面転換し、停滞や放漫に陥らない。このアレンジはかなりのとこまで、ゾーンの指示と思うが。

 なおゾーンは本盤で指揮だけでなくサックスも吹いている。その場合でも、ゾーンが突出はしない。ネイキッド・シティみたいにアンサンブルの一部だ。この辺の変に突出しないバランス感覚も、指揮者っぽいなあ。

 なおドリーマーズはエレクトリック・マサダとメンバーがほぼ一緒。イクエ・モリがいないだけ。ゾーンはドリーマーズで、マサダってブランディングからも縛られず、自由に小編成アンサンブルを動かす場として本バンドを設定したのだろう。

 そしてゾーンが指揮する疑似バンドのコンセプトはNova ExpressやGnostic trioなど、どんどん拡大していく。すべてが関連しながら、どれもが尖ってる。ゾーンの活動は、本当に凄まじい。

 本盤で聴ける音楽は和音感やビブラフォンを筆頭とする音色が、まずねっとりした退廃性を漂わす。けれど背後にパワフルさを潜ませるため、けっして後ろ向きなBGMラウンジには至らない。
 さらにアルバムが進むにつれ、プログレっぽいタイトで構築度合いも増していく。無国籍であり、どのジャンルにもなかなかうまくハマらない。

 むしろ現代音楽、クラシックの室内楽が一番近しいと思う。前述のとおりロック的な楽器を多用し、ジャズ風のテーマからアドリブって構造をもつために、なかなか素直に室内楽って主張は気がひけるのだが。

 それにしても、本盤は隙が無い。おしゃれなBGMにぴったりで、聴きこむほどにアレンジの精密さと奏者の確かな演奏力に圧倒される。
 ジョン・ゾーンの入門盤にぴったりだと思う。やたらサックスを軋ませる30年前のパブリック・イメージは、もはや古すぎる。シンプルなメロディをふくよかなアンサンブルに仕立て上げる、ゾーンの作曲/指揮センスこそ、もっと彼の象徴イメージにするべきだ。
 
Personnel:
Cyro Baptista - percussion
Joey Baron - drums
Trevor Dunn - bass
Marc Ribot - guitar
Jamie Saft - keyboards
Kenny Wollesen - vibes
John Zorn - conduct,alto saxophone

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