June Tabor "Rosa Mundi"(2003)

 そぎ落としたアコースティック・アルバム。凛々しい歌を堪能できる傑作。


 ピアノと、バイオリンと、チェロ。そして歌。シンプルな編成へ突き詰めた。ピアノとバイオリンは何枚もの過去アルバムに参加してきた昔なじみ。チェロも前作へ参加してる。
 つまり馴染んだミュージシャンからリズム隊を抜き、涼やかで凛としたトラッドの世界をじっくり描いた。ジューン・テイバーの歌声は、ビブラートを効かせない。メロディをフェイクもしない。ごく素直に、まっすぐにメロディを歌う。
 この潔さが、魅力だ。
 そして時折、ふっとメロディを揺らす。その変化も楽しい。

 さらにヘッドフォンでボリューム上げて聴いてほしい。英語の子音がぷちぷちと耳にはじける感触も妙に心地よかった。それくらい、生々しさを味わえる。

 幕開けはもろにクラシカル。続く曲でバイオリンはトラッド寄りに風景が変わる。フィドルって呼びたくなる響きだ。連綿と流れる歴史の二面性、正統と民衆の雑駁さを鮮やかに表現してるように思える。

 取り上げた楽曲は基本的にトラッド。(9)はチャイコフスキー"16の子供のための歌 op.54"より。なぜここでロシア、と思うがイギリス人には親しみある歌なのかも。
 オリジナル曲は(6)のみ。英トラッド曲に詳しくない身としては、トラッドとオリジナル、どっちを聴きたいと思うか難しいところだ。どっちも新曲みたいなものだし。

 曲によっては、バイオリンはダビングあり?エコーをふくよかに聴かせた音像は美しく、厳粛ながら堅苦しくない。難しく構えず、素直に歌へ向かい合ったジューンの懐深さが気持ちよく聴けた。
 トラッド特有の節回しは、続けて聴いてると食傷気味になる。だが本盤はそんなことない。

 バラ、にテーマを持たせた様々な歌を、シンプルな生楽器の響きがしとやかに描いた。縦線を無理に合わせず、微妙にずれながら溜めていく弦の響きが、ほんと綺麗だ。

Track list:
1.Roses of Picardy (4.08)
2.Belle Rose (2.47)
3.Deep in Love (4.58)
4.O My Luve's Like a Red Red Rose (Roud 12946) (3.18)
5.Rose in June (Roud 1202) (4.42)
6.Paint Me, Redouté (5.26)
7.Rhosyn Wyn / Winterrose (4.24)
8.The Rose Is White, the Rose Is Red / Dargason (2.26)
9.The Crown of Roses (Tchaikowsky's Legend) (3.59)
10.Barbry Ellen (Roud 54; Child 84; G/D 6:1193) (5.37)
11.Maybe Then I'll Be a Rose (4.21)

All tracks trad. arr. June Tabor, Huw Warren, Mark Emerson, Richard Bolton except
Track 1 Fred E. Weatherly, Haydn Wood;
Track 4 words Robert Burns, tune trad. arr. June Tabor, Huw Warren, Mark Emerson, Richard Bolton;
Track 6 words Les Barker, music Mark Emerson, June Tabor;
Track 7 Huw Warren / trad. arr. June Tabor, Huw Warren, Mark Emerson, Richard Bolton;
Track 9 words Plechtcheev, music Tchaikowsky arr. June Tabor, Huw Warren, Mark Emerson, Richard Bolton;
Track 11 words Les Barker, music Savourna Stevenson

Personnel:
June Tabor, vocals;
Huw Warren, piano;
Mark Emerson, violin, viola;
Richard Bolton, cello

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