"Good Vibrations" Kings Singers (1993)

 いまいちコンセプトが謎な、ポピュラーカバー集。


 キングス・シンガーズはイギリスのコーラス・グループで1968年に活動開始。
メンバー交換を繰り返し、オリジナル・メンバーは一人もいない。クラシックからポピュラーまで幅広いジャンルの無伴奏コーラスを聴かせる。
 聖歌隊っぽいクリーンなハーモニーが持ち味で、シンガーズ・アンリミテッドやフォー・フレッシュメンとは立ち位置が異なる。達郎がアカペラをメジャーに押し上げるまでは、無伴奏コーラスの第一人者なグループの一つであり、いわゆるアカペラ・ファンの視点ではメカニカルな派手さはあるけれど、グルーヴの黒っぽさは薄い。

 膨大なディスコグラフィーあり、discogsによれば49thアルバム。

 後述のように幅広いジャンルのポピュラー・ソングを選曲したが、基準やアレンジのコンセプトが謎だ。(1)で器楽的なハーモニーをびしりと決めてメカニカルに完コピしたのに。
 ほかの曲ではいわゆるアカペラを強調したハーモニーで、聴く分には楽しいが特にオリジナルをコピーではない。キングス・シンガーズらしいアレンジが施されてる。
 クイーンのカバー(6)は、メカニカルなハーモニーが映える名選曲と思うが、例えば"ボヘミアン・ラプソディ"みたいなベタな曲芸をハモりもしない。

 ボイパ中心かと思えば、白玉をじっくり聴かせるアレンジをかましたり・・・何がしたかったんだろう。しかもポール・サイモンがらみを4曲も投入など、かなり偏った選曲だ。
 タイトル曲に惹かれ入手して、一曲目の派手で技巧を凝らしたハーモニーに大喜びして、そのあとの選曲で首を傾げ続ける、不思議なアルバム。歌はうまいから、聴いて楽しいのは間違いないが。

 カバー曲を整理しておく。
 (1)はビーチ・ボーイズの代表曲で、66年の発売。"スマイリー・スマイル"に収録され、ビーチ・ボーイズのレパートリーでも特に凝った構成の名曲だ。
 (2)はサイモン&ガーファンクルの"Bridge Over Troubled Water"(1970)収録のシングル。(4)も同じアルバムからの代表的なシングル曲。
 いきなり時代が飛んで、(3)はフィル・コリンズ"...But Seriously"(1989)より。特にシングルなわけでもない。

 (5)はランディ・ニューマン"Little Criminals"(1977)に収録。これも非シングル曲。本盤は讃美歌みたいに白玉強調のアレンジで、低音が効く一方に主旋律はハイトーンの歌声と対比が良い。
 クイーンのカバー(6)は"A Night at the Opera"(1975)より。非シングル曲だが、フレディの滑らかで多重ボーカルを、うまいことキングス・シンガーズはカバーしてる。
 (7)はビリー・ジョエルのシングルで"Storm Front"(1990)に収録。これも厳かなカバーが心地よい。全米チャート37位どまりの小ヒットで、ビリー・ジョエルの代表曲とも言い難い。なぜこの曲を選んだのか。

 (8)はドン・マクリーンが1971年に飛ばした大ヒット。原曲は8分以上だが、なぜかキングス・シンガーズは6分強の若干短縮なアレンジ。(1)みたいに完全コピーしてもいいのに。
 再びポール・サイモン祭りが(9)から。"Still Crazy After All These Years"(1975)収録で、(10)も同様。後者は大ヒット曲だから選曲も不思議じゃないが、前者はシングルすら切られてない。なぜこんなポールをもてはやす。

 (11)はジェイムズ・テイラー"Dad Loves His Work"(1981)収録で、やはりシングルではない。
 レイ・スティーヴンスの(12)はアルバム"Gitarzan"(1969)より。時代が前後するなあ。
 最後の(13)も意外な選曲。U2"The Unforgettable Fire"(1984)だ。

 やはり通覧しても共通項やコンセプトが見えないアルバム。謎だ。繰り返すが、歌は悪くない。ヘンテコごった煮として楽しむ盤か。

Track List:
1.Good Vibrations 3:49
2.Cecilia 2:57
3.Father To Son 3:22
4.The Boxer 4:01
5.Texas Girl At The Funeral Of Her Father 2:37
6.Seaside Rendezvous 2:25
7.And So It Goes 3:09
8.American Pie 6:34
9.Some Folks Lives Roll Easy 3:16
10.Fifty Ways To Leave Your Lover 3:25
11.That Lonesome Road 2:38
12.Freddie Feel-Good 4:09
13.M.L.K. 2:05

Personnel;
Vocals - Alastair Hume, Bruce Russell, David Hurley, Jeremy Jackman (tracks: 13), Robert Chilcott, Simon Carrington, Stephen Connolly

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