"LOST CHICANO OLDIES VOL.2" V.A. (2006)

 解説の無いソウルの情報を、どこまでネットで情報追求できるかって試み。改めてじっくり聴いたが、良い曲ばかりの良コンピだ。解説は無いけど。


 発売元のLost Soul Recordsはカリフォルニアの再発レーベル。おどろおどろしいジャケットでローカル・ソウルを復刻するが、データ面の情報は希薄だ。マニアが手持ち音源を集めてぱっと出しただけってふう。音質も盤起こしだし、ラフなもの。
 マニアには二種類がある。蒐集に血道を上げるタイプと、周辺情報まで混みで追求する学究タイプ。海の向こうの盤に興味持つ日本人としては、多かれ少なかれ学究タイプにならざるを得ない。基本情報無いから、集める手がかりがない。

 けれどもアメリカなら、今はともかく40年前ならば、そこらに転がってる盤を聴いていけばいいだけ。もっと気軽に盤を楽しめたのかもしれない。それこそ日本でいう「幻の名盤解放同盟」のノリで。うらやましい話だ。
 ということで、後追いの外国人がインターネットで周辺情報をどのくらい集められるか試してみた。

Truck List:
1. You've Succeeded / Dimas 3 & Royal Jesters
2. To You / Generations
3. She Loves Me / The Third Position Trio
4. Wait Till I Find Her / Fabulos Filtrations
5. You're Mine / T.S.U. Toronadoes
6. You Need A Love / Players & Premiers
7. I Love You But You Don't Know Me / Escorts
8. What About One More Time / Bobby Rosales & Premiers
9. She's My Woman, She's My Girl / Four Singing Avalons
10. This Is TBy The Time I Get To Texashe Beginning / El Paso Premier
11. Nothing Can Change My Love For You / Bandits
12. By The Time I Get To Texas / Thee Runabouts
13. Brown And Beautiful / Jade

 (1)はここに解説あり。テキサス出身で58年から77年まで活動した。1965年にLP"We Go Together"を残した。この曲はバンド名義だが実際はDimas 3のソロ曲らしい。発売年度は不明。このグループは15年に単独コンピ盤が発表され、リンク先のページが書かれた。
 スロー寄りのテンポで緩やかに歌われる。メロディもハーモニーも寛いだ良い曲。ドゥ・ワップいうかソウル寄りのアプローチだ。60年代前半っぽい。ホーンがひしゃげてシンセみたいに薄っぺらいのが時代だ。オルガンも入りアレンジは分厚め。


 (2)は委細不明。音作りはドゥワップ寄りだが、ちょっとモダンな感じだ。音程はずれ気味だが、テナーサックス・ソロの入り具合はロマンティックでいい。ちょいと一本調子の歌声なので、すいっと聴き流してしまう。

 (3)はDiscogsにレーベル記載あり。 J.Hartnettの作曲でプロデュースもHartnett & New Approach名義だ。それ以外は委細不明。発売元なCele-Can Recordsの素性もわからない。楽曲は切々と歌いかける、低めのボーカルが愛おしい良い曲だ。70年代スイート・ソウル崩れって感じ。

 (4)も詳細不詳。こんなんばっか。Discogsにレーベル記載あり。1969年の曲らしい。サザン・ソウル的なアレンジだ。作曲はEd Townsendで、マーヴィン・ゲイ"Let's Get It On"のプロデュースにかかわり、作曲家としても活動した。
 発売レーベルD Clefも不明。いったん溜めて炸裂するイントロが良い。シンプルだが分厚いアレンジが心地よかった。

 (5)はDiscogsに発売年度以外は情報あった。テキサスのレーベルOvideのハウス・バンド。レーベルのオーナーSkipper Lee FrazierがArchie Bell & The Drellsのマネージャーを務めた関係で、バック・バンドもやってたらしい。
 本曲はスイートなバラード。60年代後半か。ドラムとギターのコンビがころころっと弾ませるアレンジで、甘く切ないソウルを聴かせた。歌声は意外に癖がない。

 (6)の詳細は不明。盤起こしのボロボロな音質(って、この盤はすべて盤起こしだが)を突き抜けて、絞り出すハイトーンの歌声が愛おしい。シンプルなベースのリフに、オルガンとギターがアクセントをつける。ドラムはすっかり埋もれてシンバルの残骸のみ残った。
 白玉が上下にふわふわと揺れるハーモニーに、輪をかけた情感たっぷりのリード。さらにトランペット?オルガン?な感想の切なさも畳みかける。良いなあ。

 (7)はDiscogsに記載あり。ここにも記載あった。
 エスコーツと言えば刑務所グループが有名だが、これは全く違うバージニア州の出身グループ。本盤は68年のシングルB面曲だ。愛情ある盤堀り起こしがうれしい。作曲はメンバーの二人。65年にLP"Bring Down the House"には未収録でシングルのみの発売となる。
 フレーズの後ろでくうっと下がるコード進行が気持ちいい。メリハリある明るさを持つ楽曲だ。

 (8)はDiscogsの記載を見つけた。本盤以外にもう一枚、シングルを出している。発売年度は不明、写真から発売レーベルSouled Out Recordsはテキサス州の所在と読み取れる。60年代に活動のローカル・レーベルらしい。Discogsには本グループ以外に、もう2枚のシングルが掲載あり。
 アレンジはすっきり。タイトな演奏で丁寧なサザン・ソウルを披露した。ボーカルは上ずり気味だが、ホーン隊も加わった確かなバッキングで安心して聴ける。

 (9)は意外と情報あり。メモとしてDiscogsのリンクを貼っておこう。
 作曲はArchie Bell & The DrellsのArchie Bell。アトランティックのサブ・レーベル、アトコから68年発売なシングルB面。やはり時代を経て味わえるのは、B面のバラードか。もしかしたら(5)のメンツが演奏してるのかも。
 本盤全般に言えるが、ボーカルはやたら喉を潰さず、丁寧に伸ばす声質が僕の好み。

 (10)は一転、詳細不明。音はきれいだが音楽スタイルはドゥ・ワップ風のアプローチが残る。あんがい演奏はまとまってるし、中盤の語りも無難にまとめる。派手さは無いが、そこそこのクオリティは保ってる。そういやこの曲、ハーモニーがないな。
 最後の最後で、ちらっと太い声がコーラス取るだけ。へんなの。全編にわたってハーモニーつければいいのに。

 (11)もドゥ・ワップ風だが音質がそこそこなので、60年代のシングルか。よくできた曲だ。破綻なくスムーズにハーモニーを聴かせる。少しボーカルのみが強くミックスされてるとこを除けば、演奏もアレンジも言うことない。丁寧な作りのミドル・テンポ。
 典型的なドゥ・ワップを楽しめる。

 (12)はYoutubeの写真が正しいなら、白人ソウル・グループ。タイトルからして、テキサスのバンドかなあ。ドラムとベースにホーン隊。ゴージャスなアレンジだがしょぼい録音のため、太さは伝わらない。線の細い丁寧なハーモニーを付けた。
 軟弱な響きだけど、じわじわくる魅力あり。


 最後の(13)はDiscogsにhttp://www.discogs.com/Jade-Viva-Viva-Tirado/release/2624052" target="_blank" title="写真記載ある">写真記載あるが、ボケてクレジットが読めない。発売年度は不明。レコード番号から69年あたりっぽいが。これも白人バンドかな。発売元のCentury City Recordsは、シングルやLPを何枚もリースしてるローカル・レーベルだ。
 中盤のコード進行や軽いビート感は、ソウルというよりサイケっぽい。

 こうして調べても、テキサス中心のローカル・グループを集めたらしいってとこしかわからない。聴いて楽しければ細かいデータはどうでもいいとはいえ。
 山のように、しかしこじんまりと地元で活動と思われる当時のシーンが、詳細に分析の機会はもはやあるまい。けれどもこういうシングル盤が、当時の現地でどんなふうに取引され、ラジオで流れてたのか。妙にロマンティックで興味ある。
 たぶんこれらはいわゆる大量生産なヒットソングとは違う。地に足がついた手売りベースだったろう。そんな素朴な音楽シーンの様子を生々しく追想し味わいたい、ひねくれた志向ではあるけれど。


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