"Woman In The Wings" Maddy Prior (1978)

 まっすぐ伸びる歌声と、豪華なオケの融合がプログレ的なトラッドの傑作。


 マディ・プライアはスティーライ・スパンのボーカルをはじめとして、さまざまなトラッド系の歌を残してきたベテランの歌姫。本盤はクリサリスからの1stソロになる。
 時代背景的にはスティーライからの入れ違い的な位置づけか。
 "Hark! The Village Wait" (1970) からのスティーライが78年にいったん解散。その直後のリリースか。なお、やはり名歌手のジューン・テイバーと組んだシリー・シスターズの1stは、1976年と本盤の少々前になる。

 本盤は全曲がマディのオリジナル曲。しかしプロデューサーはイアン・アンダーソンやデヴィッド・パーマーたち。すなわち、ジェスロ・タルだ。がっつりジェスロ・タルが本盤へ襲い掛かり、一歩も引かずマディが魅力的な歌声で迎え撃つ。

 結果としてイギリスの厳かなトラッド風味へ大胆で大仰なアレンジが施され、渋くて派手な味わい深い音楽が生まれた。

 クラシカルなアレンジ、無伴奏ボーカルと多重コーラス、ロックの着実なビートと黒人音楽風味を配したトラッド風味。隅々までイギリスのアイデンティティを誇りにした。
 ここにはエイトビート以外、アメリカ文化は無い。
 そしてマディの透明な歌声がまっすぐ高らかに昇った。特に多重ボーカルでの甘く涼し気な響きが堪らない。
 変拍子っぽく唐突に変化する楽曲構造はスリリングだ。

 今回、聴きながら参加ミュージシャンを調べてた。どうやらそうそうたる顔ぶれらしい。
 ほとんどの曲でギターを弾くAndy RobertsはThe Liverpool Sceneなどに参加。Barry Booth(p)はパトゥのメンバーだ。
 Barriemore BarlowとJohn Glascock(b)、David Palmer(key)、Martin Barre(g)はジェスロ・タル組。

 しかしマディの作曲術は素晴らしい。キャッチーでみずみずしい旋律がいっぱいだ。たぶんこれをシンプルにアレンジしても、素敵なSSWアルバムかトラッド寄り作品に仕上がったと思う。
 けれどイアンがさらにオーバー・プロデュースをもたらした。いや、結果は抜群だから、オーバーって表現は不適切か。

 とにかく牧歌的なメロディと親しみやすいフレージングが詰まっていながら、音構造は凝っててプログレ寄り。今でも新鮮で興味深いアルバムだ。
 超傑作と思うが、Amazonではマケプレしか引っかからない。もしかして廃盤なの?プレミアはさほどついてないけれど。



Personnel;
Andy Roberts - guitar except on tracks 3, 5 and 6.
Barriemore Barlow - drums except on tracks 3, 5, 6, 7 and 11.
John Glascock - bass on tracks 1, 7, 9, 10.
David Palmer - keyboards on tracks 1 and 3.
David Olney - basson tracks 2, 4, 8, 11.
Martin Barre - guitar solo on track 2.
Barry Booth - piano on tracks 2 and 11.
Ian Anderson - flute on track 4.
John Halsey - drums on tracks 4 and 11.
Bob Gill - guitar on track 8.
Shona Anderson - backing vocals on track 10.
Cherry Gillespie - backing vocals on track 10.

Arrangements by David Palmer;
Leader of Strings: Patrick Halling;
Leader of Brass: Don Morgan

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