"Maju-2" 繭 (1999)

 前のめりな空気が心地よい、日本産のアンビエント。

 豪Extremeから99~08年に5枚のアルバムを発表し、活動を停止した日本のアンビエント・ユニット繭の2nd。ライナーによれば1stと2ndは同時期に録音して、その音源を2枚のCDへ振り分けたとある。すなわち繭の最初期な音盤と言ってもよさそうだ。

 繭は活動の中でメンバーが変わったようだが、本盤では5人のメンバーがクレジットあり。ただし実際は主催者の細海魚が強烈なリーダーシップを取っている。細海魚はアンビエントの分野では有名な人らしい。あまりアンビエントを聴いておらず、恥ずかしながらぼくは知識不足。

 本盤は11曲中5曲が細海魚の単独曲。ほかもメンバー一人一人と共演している。細海魚が不参加は(9)のみ。細海魚の価値観や美意識が隅々まで詰まったアルバムのようだ。

 特徴的なのはテンポでなく音像で寛ぎを演出なところ。アンビエントの累計イメージとしては、しっとりした音色が緩やかな譜割で浮かんでは消える。浮ついた気分を鎮めるべく、静かなムードを演出がアンビエントのありふれた手法。
 だが本盤のテンポはむしろ速め。けれども穏やかになれる、不思議なアレンジだ。
 電子音やギターを使った楽想は、ループっぽい展開から即興風の無秩序さまで幅広い。全体的にはミニマルさは風味にとどめ、自在に変化するイメージが強い。
 
 音の作り方が想像しづらいな。シーケンサーを基調に、色々とダビングをしてるっぽい。小節感やループ性を保ちつつも、くるくると音が増えては消えていく。
 むしろせわしない音の粒立ちだが、全体的なイメージはアンビエント。ノイズ寄りの音色を使い、ごおっと奥深い音像で空虚な虚脱感をも連想させるのに、アルバムを聴いていて不思議と心が落ち着いていく。

 スローテンポで強制的に身体のビートを冷ますのでなく、小刻みな目くるめく奔流に慌ただしい気持ちをより複雑にかき回すかのよう。
 そう、これは素直な静けさではない。生理的な渦と全く異なるパターンをあえて注入し、強引に身体のテンポ感を崩し、意表つかせて気持ちを変えさせる。
 
 しばらくぶりに本盤を聴き返したのは、通勤帰りな電車の中。くさくさした気持ちが、本盤へ耳を傾けてるうちに、すうっと未整理になった。行き詰まり澱んだ思考パターンが、行き場こそないものの再び描き回され、ふっと気分転換になった。

 面白く興味深い、音楽体験だった。

Tracklist
1.Within Time, Without Words 4:21
2.I Drew A Final Breath In The Dream 5:50
3.Yawning In An Afternoon's Monotony 5:44
4.Fading Is The Presence Of The Woman 4:53
5.Once Again, I Revert To That Perspective 6:00
6.Dust It Off And Make Sure Which Way Is Up 4:35
7.Measure The Angle Of My Neck 4:32
8.Rain To Sleet, Sleet To Snow 5:56
9.As I Turn Around, A Movement Catches The Corner Of My Eye 3:38
10.Drifts The Scent, Outside The Frame 4:39
11.That Is The Essence 3:23

Personnel:
細海魚,世奇音光,坂元俊介,成田真樹,中村公輔

Poetry reading and trasnslation into Chinese on 3 by Keiko Hosomi
Poems by 世奇音光

Produced by 細海魚

Composed & performed:
4,6,7,8,11 : 細海魚
3,5:細海魚 & 世奇音光
2:細海魚 & 坂元俊介
1:細海魚 & 成田真樹
10:細海魚 & 中村公輔
9:中村公輔


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