"Wools"Wools (2015)

 初期衝動より知性や理性の組み立てを感じるシティ・ソウルのEP盤。

 バンドっぽいが実際はソロ・ユニット。リーダーの宗像芳明は菊地成孔の私塾ペンギン大で彼に師事した。ペン大はその折々で様々なプログラムを設定してきたが、理論系を学んだのだろうか。全般的にロジカルで整然とした音作りを感じる。
 とりあえず作曲してみた、もしくは歌ってみたらこんな風になった、ではなく緻密に自分の表現を考え、理論を意識しながら作り上げた、冷静な視点が常に漂った。
 菊地成孔の影響を感じる。すなわち、アナライズや理論の面白さをエンタテイメントに昇華し、初期衝動を丁寧に飾り論理だてる点において。音楽的にもスパンク・ハッピーやぺぺの匂いも香った。(2)の感想はマーヴィン・ゲイの色もあり。

 本ユニットは宗像の打ち込みが基本だ。
 脇を固めたのは、大谷能生(as)、中西道彦(b,Yasei Collective)、渡邉恭一(ts,cl) 、真部脩一(g,ex;相対性理論)、三輪裕也(Horn arrangemet,Informel 8/ペン大助手)、SAKKO(tp,たをやめオルケスタ)。バンド的なサウンドだが、あくまでサポート。ミックスはパードン木村が務めた。
 さらにゲストで安藤明子(vo)や、フレネシ、JAZZ DOMMUNISTERS(菊地成孔/大谷能生)がクレジットされる。
 つまり人脈的にもペン大生ゆえの人脈が伺えた。

 サウンドは打ち込みビートを軸に、上物を生でグルーヴを出す。歌の線が少々細いのが難点だが、達郎やピチカートを通過したシカゴ的なシティ・ソウルの風景が浮かんだ。極端に歌や楽器を目立たせぬミックスなため、なるたけでかい音で聴いたほうが本盤のパンチ力は増す。
 全編を覆うのは密室的な内省さ。ライブハウスの熱狂よりも、緻密なスタジオ作業の理性が先に立つ。いわば艶めかしく歌い上げるサウンドを、内にこもった繊細さで構築する屈折差が独特の空気を生んだ。
 たとえば英ソウルの涼やかさとも違う。もっと毒をもっている。マーケットや観客を意識せず、聴き手を躍らせようとした。そっと、ぎこちなく観客の身体を揺らがせようと。
 (5)が顕著。ホーン・アレンジはあくまで緩やかに揺れ、熱狂をあからさまに出さない。ささやき越えの女性ボーカルと、ハイトーンに叫ぶ男性ボーカル。
 おもむろに現れるジャズ・ドミュニスターズ。大谷の実に腰に来るひそやかな低音と、軽やかに弾みダブル・トラックで揺らす菊地の対照的なラップが、アクセントをぐらぐら揺らす。
 打ち込みビートが畳みかけた。ダブのホーン隊とボーカルの対話も夢見心地に跳ね、汗は滴らせない。エンディングで転調(かな?)で風景が変わり、どんどん音が細かくアレンジされていった。ここには初期衝動ではなく、冷静にプロデュースする知性がくっきりと刻まれた。

 その曲のPVがこれ。

 

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