"Night And Day II" Joe Jackson (2000)

 内省的な都会の曲であり、諦念を静かにポップスへ封じ込めた盤。

 最大のヒット・アルバム"Night And Day"(1982)から18年後。クラシックの世界へ向かってたジョー・ジャクソンが、再びロックな世界に戻ってきた盤だった。16枚目のソロ。
 彼の全盛期は80~86年ごろと思う。
 クラシックに興味示した"Will Power"(1987)あたりから、どうもピントがずれてきた。"Blaze of Glory"(1989)は未聴く。"Laughter & Lust"(1990)は、今一つ覇気がない。この辺からジョーをすっかり聴かなくなっていた。そういえば今なら、この盤はどんなふうに耳へ響くだろう。

 その後もジョーは独自の路線を追求。ライブ盤を挟み、久しぶりにポップスの世界へ帰ってきた感が、本盤だった。
 "Night And Day II"はたぶん、歌詞込みで聴くべき盤。音だけで感想書いてる、今の僕は邪道だ。おそらく夜が忍び寄る時間帯、洒落て元気よくちょっと病んだNYを描いたのが、"Night And Day"(1982)。本盤はさらに夜が更けて、闇のNYを静かに表現した。
 
 音楽的には"Night And Day"(1982)って、ギター無しのアンサンブルと、ちょっとラテン寄りなパーカッションを効果的に使ったアレンジだった。
 本盤でも踏襲し、ギターは無し。それっぽい爪弾きはシンセ音色だ。さらに本盤ではほとんどがジョーの多重録音になってる。

 往年の音楽仲間、グラハム・メイビー(b)やSue Hadjopoulos(per)は参加してるけど、全面的ではない。バンドっぽいアレンジながら、実はジョーの多重録音。耳触りの良い響きを聴かせながら、実に寂しい風景をじっくりと作った。

 "Night And Day"の名を本盤へ冠したのは、もちろんコンセプトや音楽性の共通性もあったろう。ビジネス的な打算があったかもしれない。だが根本のところで、当時の陽気な明るさは本盤から、ジワリと抜けている。そんな時を経た変化が実に寂しく、そしてタフだ。
 ジョーは復活を遂げつつ、NYへ見切りをつけた。そんな心機一転のパワーが本盤から滲んでいる。打ち込みビートゆえのメカニカルさは、親しみを込めにくい諦めを表現してるかのよう。

 収録曲は"Night And Day"を連想させる曲もいくつか。(5)や(6)では"Night And Day"収録の"Into the night"を、(10)では"Steppin' out"に通底する音楽モチーフが見え隠れする。
 実際当時のライブだと(10)は"Steppin' out"とメドレーで演奏された。本当なら、最も華やかで盛り上がる楽曲だったのに。静かで消え去りそうなバラードを"Steppin' out"にかぶせることで、本盤はとても切なくひそやかなムードで幕を下ろす。

 本盤はとても内省的だ。だが冒頭の数曲へ代表されるように、決してセンチメンタルな憐憫には浸らない。あくまでも全体はキャッチーなムードに覆われており、ぱっと聴いても楽しく聴ける。余韻はさすがに、ちょっと切ないかも知らんが。
 ジョーはひとすじなわではいかない。常にひねくれたテーマやアプローチを持っている。
 ポップに仕上げることも、多分できたはず。けれども創作者の意地を見せ、自らの信条投影を行ったうえで強引にポップと融和させる。そんな、ひねったジョーの創作が昇華した一枚だ。

 本盤はゲストもさりげなく投入した。イランのボーカリストSussan Deyhim、さらにマリアンヌ・フェイスフルも一曲で歌っている。
 シングルとしては(3)が発売された。とはいえ特にヒットはせず。

 その後のジョーはロックのフィールドで踏ん張りつつ、着実にアルバム・リリースを続けてる。2012年にデューク・エリントンのカバー集っていう、またもやひねくれたコンセプトを提示したものの、"Fast Forward"(2015)で方向修正した。って、まだこのアルバムは予告編でしか聴いてないのだが。

Tracklist;
1.Prelude 1:57
2.Hell Of A Town 3:18
3.Stranger Than You 4:16
4.Why (Vocals – Sussan Deyhim) 3:54
5.Glamour And Pain (Vocals – Dale De Vere) 5:59
6.Dear Mom 4:12
7.Love Got Lost (Vocals – Marianne Faithfull) 6:59
8.Just Because... 4:45
9.Happyland 5:12
10.Stay

Personnel:
Piano, Keyboards, Synthesizer [Basses], Sequenced By, Drum Programming, Written-by, Arranged By, Producer – Joe Jackson

Bass – Graham Maby (tracks: 5, 7, 8)
Cello, Soloist [Solos] – Dorothy Lawson
Drums – Gary Burke (tracks: 7)
Featuring [String Quartet] – Ethel
Percussion – Sue Hadjopoulos (tracks: 1 to 3, 9)
Viola – Ralph Farris
Violin – Mary Rowell, Todd Reynolds



関連記事

コメント

非公開コメント