"Double Wide" Uncle Kracker(2000)

 白人ラップの象徴な一形態。カントリーとラップが自然に馴染む。


 ミシガン出身のシンガー/ラッパーなアンクル・クラッカーのデビュー作であり、全米7位でゴールド・ディスクな売り上げのアルバム。彼は今まで、4枚のアルバムを出してるが、09年にシングル"Smile"をヒットさせた以外は、今一つパッとしてないようだ。
 本盤をなぜ買ったか、全く覚えてなかったが、店内BGMに惹かれ買ったらしい。日記はつけておくもんだ。ひさびさに引っ張り出してきた。

 ラップは黒人文化が発祥だがアメリカでは当然、白人にも浸透した。いや、逆差別の象徴として、今や白人/黒人文化やアメリカ人/移民文化で語ること自体がナンセンスもしくはタブーなのかもしれない。
 リズム感が悪いのは民族や体質ではなく、個人的な資質だ。けれどもなぜか、文化や人種や地域によって好みや個性は出てくる。
 白人ラップと言えば、僕はエミネムでなくG Love。カントリー文化で濾過した吐き捨てるパンキッシュさと、無邪気な牧歌性を併せ持つ色合いをイメージしてしまう。
 本盤もそんな感じ。リズムはどうにも固く柔軟性に欠け、純朴な愚直さを根底に漂わす。
 
 とはいえ本盤のアンクル・クラッカーはエミネムのほうに親和性ある音楽性だ。もとはキッド・ロックのDJを務め、まさにエミネムと親交もあるらしい。その割に本盤の音楽性は、ぐっとC&W寄りだけど。
 本盤でアンクル・クラッカーは歌とDJのみ。ほとんどの楽曲作成はキッド・ロックが行い、作曲も二人の共作だ。
 もう一人のキーマンが、同郷のベーシストMike Bradford。作曲へも積極的にかかわった。

 それでも本盤は、あくまでもカントリー州が漂う。スケールは大きめでおおざっぱ。ハードなギターがおおらかにトラックに溶ける。打ち込みビートやサンプリングも密室風味は希薄で、広々した世界観が開けた。
 Stefanie Eulinberg、Jason Krause、Kenny Olsonといったキッド・ロックの新旧メンバーも演奏に加わり、ヒップホップ的な人工性と生演奏の双方が自然に並列した。

 シングル曲は二つ。大ヒットの"Follow Me"と、"Yeah, Yeah, Yeah"。
 

 当時聴いて、いいなって思ったのもたぶんヒットした"Follow Me"だろう。軽快なピッキングのカントリー・ギターに素朴な歌声。きれいなメロディにエレピののどかさが広がった。
 背後のビートはシンプルだが、きちんとジャストで打ち込みだ。つまり生演奏っぽく見せかけ、バリバリに機械製。なのに全体像はほのぼのと温かい。メロディの確かさや、サビのキャッチーさにも惹かれたけれど。無造作な整然振りにも無意識に惹かれてたってことも、なんとなく思い出した。

 ここには音楽性の悩みや挑戦は無い。自らのカタルシスと流行りをごく自然に表現したら、こんな風になったって無邪気さがある。ロックもラップもカントリーも混ぜこぜ、かっこよさの快感原則だけで作ったと思わせる。
 ジャンルってなんだろう、と考えてしまった。ぼくが音楽聞き始めた30年前は、ジャンルの壁って間違いなくあった。壊すべきもの、守るもの、基準となるもの、混ぜるもの、として。
 
 25年前にBECKがデビューしたときは、カントリーとヒップホップを"ミクスチャー"が、一つの売りであり特異性だったと記憶する。
 けれども今は、ここまで来たんだなあと感慨深い。混ぜることをこだわりすらしない。軽々と文化が混ざり合ってる。ここまで、ってのも変か。本盤ははるか15年前の盤だ。

Track listing:
1. "Intro" – 1:19
2. "Better Days" (Kenny Olson, James Trombly, Ritchie, Shafer) – 4:50
3. "What 'Chu Lookin' At?" – 5:12
4. "Follow Me" (Michael Bradford, Shafer) – 3:35
5. "Heaven (featuring Paradime and Kid Rock)" (Freddie Beauregard, William Maddox, David Moore, Ritchie, Shafer) – 4:19
6. "Steaks 'n Shrimp" – 4:13
7. "Who's Your Uncle?" (Beauregard, Ritchie, Shafer) – 3:56
8. "Whiskey and Water" (Bradford, Ritchie, Shafer) – 4:43
9. "Yeah, Yeah, Yeah" (Ritchie, Shafer, Trombly) – 4:59
10. "Aces & 8's" (Martin Gross, Bradford, Shafer) – 3:53
11. "You Can't Take Me" (Bradford, Shafer, Trombly) – 3:16

Personnel:
Uncle Kracker - lead vocals, DJ
Kid Rock - guitar, scratching, drums, programming, background vocals, lead vocals on "Heaven"
Paradime - lead vocals on "Heaven"
James Montgomery - blues harmonica
Mike Bradford - bass guitar, guitar, programming, background vocals
Jimmie Bones - keyboards, background vocals
Stefanie Eulinberg - drums
Jason Krause - guitar
Kenny Olson - guitar
Lynn Owsley - pedal steel guitar


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