"Tongue In Groove" Joey Baron (1992)

 NYのドラム怪人ジョーイ・バロンの初リーダー作。

 ジョン・ゾーンがらみで名を轟かすバロンの初作はテナー・サックスとトロンボーンによる変則トリオ編成だ。3曲のカバー以外はすべて自作を投入した。70年代後半から録音をはじめた彼にしては、ずいぶん遅いリーダー作になる。

 本盤はドイツのレーベルJMTから発売された。バロンはこの編成にこだわってBarondownとバンド名を持って、本盤に続く2nd "RAIsedpleasuredot"(New World, 1993),3rd "Crackshot" (Avant, 1995)と数年にわたり活動をつづけた。
 なおサイドメンの二人は、各々のリーダー作も多数あるベテランを配置した。TZADIKとの関係は特にない。ゾーン人脈とは違うジャズメン仲間、かな。バロンもゾーンとの親和性がファンに浸透は十分に理解のはず。あえて自己名義では異なる人脈を選ぶ気持ちはなんとなく想像できる。

 フリー寄りだが完全フリーではなくテーマからソロに向かうスタイル。きちんとソロを回さないので、オーソドックスではないけれど。
 Youtubeには96年ポーランドでのライブ映像が二種類あり。一曲は本盤収録の(14)を演奏してる。
 

 バロンの特徴はちょっとタイミングを外すリズム感。もたり気味に引っ掛け、グルーヴをバタつかせる。本盤でも引きずるようなパターンでノリを揺らした。
 中低音楽器の二管編成で、バロンが狙ったのはゴツッと骨太な耳ざわりだろうか。本盤には16曲を投入し、じっくり長いインプロよりも目まぐるしい展開を選んだ。かといってゾーン仕込みのミクスチャーやカットアップではない。

 あくまでフリー寄りのセッションが主軸だ。マーチング・バンドやディキシーランドも連想する、素朴で野太いムードも感じた。リズムは全く違うのに。
 リフはきっちりとアンサンブルを決め、かなり譜面要素が強い。けれどもざらついた音色や深い響きに荒っぽさを連想するのか。

 カバーのうち(3)は詳細不明のトラッドで、(6)は"いそしぎ"(1965)、(10)はイリノイ州出身のスイング楽団McKinney's Cotton Pickersが1930年に発表がオリジナル。ずいぶん古めかしいセンスだ。


 奥行きあるフロアタムの響きと、対照的な乾いたスネア。手数多くまくしたてるドラミングは、シンバル要素が意外に少ない。またリズムもシンプルな刻みではなく、縦線は外さぬが様々に長いパターンを提示した。

 全体を覆うムードは、スリリングなむさ苦しさ。スマートや洗練とは無縁、フリーの緊迫感とも違う。だが形式ばった古めかしさもないし、型にはまらない。独特で自由で、男っぽい。
 耳慣れない編成と凝った構造。それゆえに、なかなか掴みづらい。決して激しく難解じゃないのに。不思議な魅力を持つ。先鋭ではないが、ノスタルジー色は皆無。なのに耳へすうっと馴染む。演奏はけっこうフリーなのに。でもテーマはしっかり。実は様々な要素を詰め込んだ音楽だ。

Track listing:
1. "Blinky" - 3:18
2. "Yow" - 1:47
3. "Terra Bina Kia Jeena" (Traditional) - 6:31
4. "Guzzle" - 3:38
5. "Spoo" - 3:27
6. "But, Cake" - 5:29
7. "Archives" - 3:14
8. "The Shadow of Your Smile" (Johnny Mandel, Paul Francis Webster) - 1:39
9. "Room Service" - 4:57
10. "I Want a Little Girl" (Murray Mencher, Billy Moll) - 4:24
11. "Sandbox" - 1:38
12. "Response" - 4:09
13. "Trunk" - 2:18
14. "Go" - 3:11
15. "Scottie Pippen" - 2:21
16. "Mr. Pretension" - 0:36

Personnel:
Joey Baron - drums
Ellery Eskelin - tenor saxophone
Steve Swell - trombone

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