"Bass on Top" Paul Chambers(1957)

 ベーシストのアイデンティティ全開な爽快ジャズ。

 4thリーダー作の本盤はギター入りのカルテットで、管を入れることで目立つ相手を増やさない。じっくりとベースを聴かせる演出を採用した。ポール・チェンバーズのリーダー作は56~60年の短期間で、最終的にアルバム10枚分の音源がリリースされた。
 ポールは盤ごとにメンバーを変え、自らの音楽性追求よりも、幅広いベースの可能性を拡大したかのよう。

 本盤はベースのテクニックを存分に披露し、とことんまで自分をアピールした。清々しい骨太さが楽しいアルバムだ。

 (1)からして、冒頭はアルコのソロ。雄大に力強いが、ビブラートをほとんどかけず弾くさまが、クラシックでは考えにくい奏法。荘厳ながら生々しい弦の響きが心地よい。イヤフォンでボリュームあげて聴くと、なおさら迫力を味わえる。

 たっぷり重々しく突き進んだ後、やはりスタンダードの(2)へ。ピアノもギターも添え物。指弾きでバカでかくバランスとったウッドベースが、ここぞとばかりにメロディへ寄り添った低音をばらまく。
 ベース・ソロでも、むやみな速弾きやテクニックひけらかしではない。着実にテンポをキープしながら、小気味よくフレーズをランニングさせた。ベースをリード楽器にすべく、やたら高音を使ったりしない。あくまでベースの立ち位置で、ぐっと存在感を増す。それがこの盤のテーマか。
 ピアノとギターがベース・ソロではわずかなフレーズで支え、するりとギター・ソロに代わる。とたんにベースが一歩引き、フレーズ感はそのままにバッキングに代わる。この役割分担のスムーズな転換が、素晴らしくかっこいい。
 やがてテーマに戻ると、ベースが朗々とテーマの旋律を弾く。主役と脇役の立ち位置変換が滑らかでいいなあ。

 なお本盤の録音時点で、ポールが22歳。若者ばりばりなのに、頼もしさがこの上ない。サイドメンはハンク・ジョーンズが39歳。ケニー・バレルが26歳。アート・テイラーが28歳。
 中堅からベテランを相手に、ポールが一歩も引かず暴れる趣向か。

 (3)はビバップでなく、モダン・ジャズにすっかり世界が変わってる。サイドメンは添え物でギターが短いソロを取った後は、ポールの独壇場。溜めや突っ込みを駆使したメロディアスなベース・ソロを堪能できる。
 そしてピアノがアドリブとった瞬間、すっとランニングへ。緩急ばつぐんのベースだ。
 (4)のトラッドは、明田川荘之のレパートリーで耳に馴染んでる。とにかくベースが芯となる曲と思う。テーマはギターに任せるが、ドラムと一体になったリズムのキメは、ベースがしっかり存在してこそ。良い選曲。
 ピアノがバックリフを弾き、一体となって下降してくリフがこの曲の肝。ディスコグラフィによると、この日の録音でまっさきに本曲を録音らしい。
 テイク順の記述が正しいなら、まずはバッキングとして助走をはじめ、最後に(1)や(2)のように自らを強烈にアピールするテイクを収録した様子を想像する。
 ここではギターがグンッと目立ち。軽快なアドリブを展開した。速い譜割で駆けた。ピアノの流麗なフレージングもきれいだな。
 
 (5)でもアルコ弾き。マイルス・デイヴィスのライブ・テーマ曲を、ほぼ自分が主役でたっぷり弦弾きした。(1)での我の強さと異なり、ここでは滑らかでスピーディなフレージングを紡ぐために弓を使った。ギター・ソロに代わると、するり指弾きに切り替える。
 ポールがマイルスのバンドへ参加してたのは、本盤録音の同時代。いわゆるマラソン・セッションの翌年に、本盤録音のタイミングだ。マイルスのライブでさんざん弾きなれたこの曲を、改めて自分を目立たせるアレンジで披露した。
 とはいえソロを独り占めせず、ギターとピアノに見せ場を作る。逆説的に、ソロとバッキングの双方でポールの存在感をアピールする趣向だ。
 
 (6)はむしろ地味。ベースがソロを取りはするけれど、ちょっとテンションを下げ気味。じっくりとグルーヴを紡ぐ。ここまで主役脇役を奏法変えてアピールしまくったのに、なぜか一歩引いてしまう。演奏は悪くないし、ダンディなムードを味わえるが・・・。
 こういう大人の演奏もできるんだぜ、の22歳の意地かな。

 (7)は共作ながら、唯一のポールの自作曲。冒頭から速い譜割で弓弾きユニゾンのビバップ的なテーマを奏でた。ギター・ソロで弾むベースは、軽やかに演奏を煽った。
 共作者は本盤に参加したケニー・バレル。当時のライブ記録が不明だが、このメンツでギグをこなし、その間に作った曲か。ケニーかポールのどちらかが、単にクレジットだけって可能性もあるが。フレーズ的にはギターが映える曲と思う。
 ベース・ソロではぐいぐいと速いフレーズを高音中心に弾き倒した。

 全編、ポールが目立ちまくり。縁の下の力持ちなベーシストが、ソロにバッキングに八面六臂の活躍だ。
 だが、嫌味がない。無理に自意識を溢れさせない。若者ゆえの激しさと、確かなテクニックに裏打ちされた着実さが、極上のジャズを生み出した。

 前述のとおり、ポールはセッションごとにメンバーを変えていく。例えば本盤のアプローチを、オリジナル曲中心でじっくり煮詰めても良かったな。

Track listing:
1."Yesterdays" (Harbach, Kern) - 5:53
2."You'd Be So Nice to Come Home To" (Porter) - 7:16
3."Chasin' the Bird" (Parker) - 6:18
4."Dear Old Stockholm" (Traditional) - 6:44
5."The Theme" (Davis) - 6:15
6."Confessin'" (Doc Daugherty, Ellis Reynolds, Neiburg) - 4:13
7."Chamber Mates" (Burrell, Chambers) - 5:08

Personnel:
Paul Chambers - bass
Hank Jones - piano
Kenny Burrell - guitar
Art Taylor - drums

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