"PERE FURU"(2001)

 冴えわたるアコースティックなインプロを堪能できる傑作。

 鬼怒無月と勝井祐二の主宰する"まぼろしの世界"からリリース。当時でも貴重なアルバムだった。入手性ではなく、彼らのインプロを堪能できる、の意味において。
 ここにあるように、すでに勝井も鬼怒も活発なライブ活動を、10年越しに繰り広げてた。ところが音盤で聴くすべが、ほとんどなかった。なおいまYoutube検索したが、PERE FURUで何も出てこない。昔も今も、本盤以外に聴くすべがないのはいっしょか。

 この当時、Youtubeなんてない。CDリリースも今ほど手軽じゃなかったと思われる。セッションではなく勝井と鬼怒のみ、しかも奔放なインプロ。CDはほとんど出てなかった。特に、鬼怒のアコギなアプローチの盤は。
 聴きたくなったら、ライブへ行くしかなかった。それはそれで、貴重な機会。だけどCDでも聴きたいなあと、しみじみ思ってた記憶がある。

 勝井と鬼怒の特徴は、音楽性ごとに異なるバンド名で立ち上げ、それを並行活動させたことだ。当時は西の山本精一ら、東だと吉田達也らが同種のアプローチをとっていた。そんな中、勝井と鬼怒は盟友として活動してたのが、大きな特徴だった。
 個人ブランドではなく、コンビとして。しかも常に帯同ではなく、それぞれが独自に活動してる。二人で幅をぐいぐい広げていくイメージ。いわば個人ブランドとは違う、頼もしさ。なんていうかな、ブルドーザーみたいなパワフルさを感じてた。

 鬼怒と勝井のライブでは、どこへすっ飛んでくかわからない脱力MCも特徴だった。本盤はそんなユーモラスさを脇に置き、スリリングで抽象的だが堅苦しくない。そんな即興が詰まった。
 
 本盤ではおそらく、どちらかが主導権ってわけじゃない。フラットな立場で演奏してる。吉祥寺GOKと、勝井の自宅スタジオで録音の音源を収録した。完全一発録ではなくダビングも若干してるような。それともフレーズをループさせ、さらに音を重ねる奏法か。
 鬼怒はこの直後、バイオリン・デュオではERAを壷井彰久と始動する。こちらは比較的、曲を変奏させるアプローチ。だがPERE FURUは完全インプロ。どこに向かうかわからぬ不安定さと、破綻することはない安定感。この二人ならではの信頼性が詰まってる。

 コード弾きと高速フレーズが自在に飛び交うギターと、軋み音がどんどん複雑に加工され旋律がリズムと溶けてくバイオリン。自由で、巧みで頼もしい。やはり抜群のコンビだ。日本の音楽界でも屈指のユニットだと思う。曲目は散文的な言葉が並ぶ。灰野敬二みたいだな、と当時思ったっけ。

 特に好きな曲が(7)。爽やかで複雑なフレーズがみるみる濃密に、高まっていく。軽快なギターと、加速するバイオリンのボウイング。攻守が素早く交代する。勝井が刻みに入ったとたん、するりとアドリブを始める鬼怒がかっこよかった。
 さらに勝井も鬼怒の呼吸を見事に読み、滑らかにソロがつながる。弛緩がまるでない。そして段取りもない。ライブを見るとわかる。二人は視線も交わさず、目を閉じてうつむき加減に楽器を奏でてた。
 そして音楽は、まるですべてが譜面みたいにカッチリ構築されてた。

 もう一度、書く。抜群のコンビだ。過去形じゃない。それが、嬉しい。ペースこそかなり下がってるものの、またPERE FURUのライブを聴くチャンスは残ってる。
 しかしCDが出ないんだよな・・・鬼怒と勝井は比較的、多数のユニットを使い捨てずに継続活動させている。その一方で本ユニットは、全く音盤が出てこない。
 どうせならライブ盤がいい。スタジオの凝ったアプローチではなく、二人の対話が聴きたい。

Truck list:
1. そこに初めと終わりがあることを知るように
2. 扉は開かれている、夜
3. 日はまた昇る
4. 銀河に在る岸辺
5. 機械の中の幽霊
6. 道標
7. 眼の高さにある太陽
8. まだ一度も見たことのない所から
9. 非望の歌
10. やまない雨を待ちながら
11. 追い越してきたものたちの声は既になく
12. 砂漠で犬が死んだ

Personnel:
勝井祐二 /violin,synthsizer,percussion
鬼怒無月 /guitar,synthsizer

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