"Light-Foot"(1959) Lou Donaldson

 ラテン風味で疾走する熱いジャズ。サックスが金管のようだ。

 前年"Blues Walk"に端を発したコンガ入りのカルテット編成な第二弾で、リーダー作の7作目。本盤に続く"Blues Walk"(1959)ではコンガが抜けるけれど、"Sunny Side Up"(1960)では再び、コンガが入る。リズムの複層化が、ルーは気に入ってるようだ。
 "Blues Walk"と比較したら、ドラムがDave BaileyからJimmy Wormworthに本盤では変わってる。その後にデイヴとルーは再録音してるため、本盤でジミーの起用は深い意味がなく単なるトラかも。

 オリジナルは冒頭2曲で、あとはカバー。多様な音楽を、ラテン風味の強靭なブルーズで包んだ。CDのボートラでは(2)のアウトテイクとして、間違った始まり方ですぐに中断する音源が収録された。
 ディスコグラフィによれば今日は14テイクが録音。(2)のアウトテイクがテイク8にあたる。 

 (1)のスピーディな熱気が本盤の勢いを象徴した。アルト・サックスのフレージングがハイノートを軽やかに紡いでく。サックスならではの流れる旋律もアドリブで出てくるのだが、高音をゆったりつなげる音使いにトランペットみたいな爽快感も連想した。

 (2)のアウトテイクは、録音の様子がわかる。やたら甲高い声で左チャンネルでアレンジを指示がルーか?誰もかれもが無暗にはしゃぐ。めちゃ高い声やひしゃげた低い声が飛び交い、楽しそうだが混乱の極みだ。全く聞き取れない。トークバックと思しき、ちょっと冷静な白人っぽいしゃべりが、途中から右チャンネルより聴こえる。
 熱気と寛ぎが同居する、そんなレコーディング風景が伺えた。

 そして始まる(3)。ばか騒ぎの(2)と対比的に、ダンディで落ち着いたグルーヴを響かせるのも面白い。
 本盤は1ホーン編成で、じっくりとルーがソロをとる。時折か細く響くが、基本的には明るくまっすぐな癖のない音色だ。サブトーンやずるずるした響きは少なく、芯のあるトーンが特徴か。
 
 アルバム全体で、ラテン風味を感じる。コンガの軽快さとは別に、楽曲の色合いとして。たとえばレイ・チャールズのカバー(3)は、本盤の数年前な56年のナンバー1ヒット曲。

 オリジナル曲もラテン的なタッチながら、本盤では洗練みを増した。コンガはまっすぐに小刻みなビートを繰り出し、リズムを煽る。だが流麗で滑らかなサックスのフレージングが、原曲以上に爽快さを演出した。
 後年のフュージョンに通じる涼しい響き。サックスのコントロールがわずかにラフなための荒っぽさこそあるけれど。真夏のビーチに流れるBGMに似合いそう。59年のハード・バップとは一線を画すアプローチと思う。

 (4)も何も予備知識なしに聴いたら、往年のナベサダやスクウェアとも誤解しそう。軽快で明瞭なアルトのアドリブは、やはりトランペットみたいにまっすぐな譜割を選んでる。
 オリジナルは1929年にスペインのAdolfo UtreraとNilo Menéndezの作曲。Wikiによるとアメリカでは41年にJimmy Dorseyオーケストラの演奏でヒットしたらしい。白人的な音楽を、敢えてルーは選んだようだ。
 
 続く(5)は原曲が不明。1950年にオリオールズがドゥワップ仕立てで吹き込んだ音源がYoutubeにあり、少なくともスタンダードとして取り上げてるみたい。この曲も軽快にコンガとドラムでリズムに厚みを持たせ、小粋なラテン風味で攻めた。ピアノのソロが、訥々とふんわり響く。


 (6)は本盤参加のピアノ、ハーマン・フォスターのオリジナル。4枚のリーダー作もあるが、主にルーのサイドメンをずっと務めたキャリアと見受けられる。本盤時点ですでに数年来の付き合いだ。
 これまでの明るい雰囲気から、ぐっとジャジーに沈む。暗闇と酒場が似合いそうなムードあるバラードで、ルーはゆっくりと丁寧にサックスを吹いた。わずかにエコーがかかってそうな、穏やかで深みあるムードが堪らない。
 本盤ではむしろ異色の楽曲ではあるが、心地よいジャズ・バラード。ここぞとばかりにカクテル・ピアノ風のしとやかなフレーズで味付けを施した。ドラムが引きずり気味にリズムをモタらせる。

 この日のセッションは(6)と(7)の順番で、続けて最後に演奏された。どうせなら(6)で静かに終わらせてもいいのに。あえて(7)でもう一度、テンションをほんのちょっと上げた。
 もろのスタンダードでLewis Allen監督の映画"The Uninvited"(1944)の曲だそう。だんだん前のめりに加速してくミドル・テンポのアレンジで、コンガは控えめに響かせる。
 これも手慣れた感じ。サックスはこれまでの金管的なフレージングは影を潜め、流麗にオクターブを上下する木管的な音使いだ。くつろいだ演奏って気がする。
 
 コンセプト的な主張はコンガ入りの編成にとどめ、耳ざわりはあくまでキャッチー。派手さはないが、さりげない温かさを感じた良盤だ。じっくり聞いて、やっと本盤の良さが分かった。
 
Track listing:
1. "Light Foot" - 5:35
2. "Hog Maw" - 7:39
3. "Mary Ann" (Ray Charles) - 6:41
4. "Green Eyes" (Nilo Menendez, Adolfo Utrera) - 5:21
5. "Walking by the River" (Una Mae Carlisle, Robert Sour) - 5:39
6. "Day Dreams" (Herman Foster) - 5:00
7. "Stella by Starlight" (Ned Washington, Victor Young) - 5:50

Personnel;
Lou Donaldson - alto saxophone
Herman Foster - piano
Peck Morrison - bass
Jimmy Wormsworth - drums
Ray Barretto - congas

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