"Open Sesame"(1960) Freddie Hubbard

 次世代のハード・バップを高らかに歌い上げた一枚。力任せでなく、知性を感じた。

 フレディ・ハバードの初リーダー作な本盤は、ミュージシャンとして本格的に活動を始めて2年後に吹き込まれた。ハバードが22歳の録音だ。当時36歳のサム・ジョーンズ(b)と28歳なティナ・ブルックス(ts)のベテラン勢、を抑えに起用は、ブルーノート側の意向か。
 今の目だとマッコイ・タイナー(p)の参加に目を引くが、彼もまだ22歳とフレディの同世代。クリフォード・ジャヴィス(ds)に至っては19歳の若手だ。

 フレディとしては50年代のハード・バップをさらに洗練させた音楽を、同世代のメンバーと構築したかったように聴こえてならない。
 本盤が60年6月19日の録音。同年11月に早くも2ndリーダー作"Goin' Up"が吹き込まれるが、本盤との共通メンバーはマッコイのみ。翌年11月の3rd"Hub Cap"(1961)では誰もメンバーがかぶらず、4th"Ready for Freddie"でもマッコイが復帰するだけ。
 すなわちメンバーを固定させず、さまざまなミュージシャンと共演しながら自らの音楽を深めていった。

 のちの盤では自作曲をふんだんに投入するフレディだが、本盤での自曲は(6)のみと遠慮深げ。カバーを3曲と、ティナの曲を2曲も演奏。収録曲の観点だと本盤ではフレディの色合いは薄めだ。その分、フレディのトランペットは熱い。
 なおCDではボートラが2曲。(1)と(3)のアウトテイクが収められた。(1)はソロの小節数が決まってたのか、アウトテイクでも5秒と時間が変わらない。甲乙つけがたい出来。若干リズムが抑えめかな。
 (3)のアウトテイクは1分ほど長い。こちらのアウトテイクの出来も、どうこういうほど悪くはない。若干間延び、くらいかな。
 ぶれずに録音を進めた様子が伺える。

 本盤収録曲はごくわずかのラテン風味をこめて、よりスマートなハード・バップを仕立てた。演奏の巧みさもあるだろう。(1)は高らかにテーマが奏でられる。ブレイキーのメッセンジャーズで映えそうな楽曲だ。整った演奏っぷりが、精錬された様子を滲ませる。
 むしろドラムの勢いが、本盤へ奇妙な前のめり感を出した。ベースが着実にビートを支えるのをいいことに、かなりドタバタしたドラムだ。裏拍でハットを踏みながら、毎打でタッチを変えてライド・シンバルを丁寧に鳴らすさまがかっこいい。

 ピアノが小さめにバランスされた録音は、軽やかなシンバル・ワークの手腕がたっぷり味わえる。タムかな?エコー感深く、ずどんと鳴る響きが素晴らしく爽やかなかっこよさ。
 フロントのソロもスマートだ。フレディのペットが清涼かつ高い音を多用して駆け抜けると、テナーはちょっと危うく音色を軋ませつつブルージーさをわずかに滲ませた。滑らかなペットに対し、若干詰まった譜割でノリを断続させるテナーの対比が目立つ。
 
 (2)のバラードは、ペットのビブラートが心地よい。まずはまっすぐ、ぱあんと伸びる。一呼吸おいてフッと音程が揺れ、次第に振幅が早まりビブラートに溶けていく。この美しくも緩やかに変化するさまが面白かった。
 金管を吹いたことがなくビブラートの付け方がわからないけど、これってテクニック的にどうなんだろう。
 あとはドラムが印象に残る。ハットをやはり裏拍で踏みながら、手はブラシでスネアをこすり続けた。手でハットを叩かず足だけで鳴らすのが彼流か。右手が金物を鳴らすときは、ハットでなくライドだ。

 (3)はわずかにラテン風味。この辺の印象はフレディの持ち味でなく、ティナの曲が滲ませる香りかもしれない。やはりライド・シンバルを丁寧に音色変えつつ鳴らす、ドラムのタッチがいいなあ。
 
 (4)はマッコイがロマンティックに短いイントロを弾き、いっきに黒く雪崩れるアレンジだ。アップテンポの痛快感が良い。それにしても本盤ではドラムや管に耳が行ってしまい、あまりピアノを聴きこめていない。
 この曲もアレンジが巧みなハード・バップ。ペットが上で張りつめ、テナーが突き上げる。ドラムがアクセントを入れて疾走感を煽る楽曲のスリルが堪らない。
 もとは39年にArthur Altman作曲したシナトラのレパートリー。小粋な雰囲気を、見事に熱気あふれるジャズに仕立てた。コンボ編成でカバーは、フレディが比較的早めに発掘したようだ。ほかにはコルトレーンの"Ballads" (1962)など、ほかにもカバーあり。

 
 (5)は本盤録音の約10年前、51年にクローヴァーズが吹き込んだドゥ・ワップ。このタイミングでカバーの目利きは、やはりフレディのセンスか。レイ・チャールズがカバーして全米ナンバー1に叩き込むのは、本盤の翌年61年のこと。
 ちょっとけだるげなブルージーぶりのクローヴァーズのテイクを、もう少し軽やかでスピーディな雰囲気にフレディは仕立てた。より大人っぽく、と言ってもいい。フレディが子供のころに聴いたであろう懐メロを、こんな洒落た再解釈するセンスが興味深い。泥臭くやらないんだ。


 LPでは最終曲(6)は、単音ベースからテーマへじわじわと盛り上げるハード・バップ。メロディが丁寧に構築され、凝ったとこを伺わせる。2管は単純なユニゾンにとどまらず、ハーモニーも考えられてる。
 ペットのソロは走り抜けず、時に詰まったりリズムを変えて揺らしたり。譜割がころころと魅力的に変わった。ソロをたっぷりスペース取ってる。
 テナーは本盤を通じて変わらぬ、スマートでほんのりブルージー。ペットに釣られたか、この曲では上のほうの音程を使って軽やかに仕立てた。
 やはりドラムのアクセントが魅力的。ハットやスネアを巧みに織り交ぜた。

 匂い立つ熱気と荒っぽいハード・バップの50年代から、よりダンディで知性を込めたジャズへ。世代交代を感じさせる一枚だ。

Track listing:
1. "Open Sesame" (Brooks) - 7:11
2. "But Beautiful" (Burke , Van Heusen) - 6:26
3. "Gypsy Blue" (Brooks) - 6:28
4. "All or Nothing at All" (Altman , Lawrence) - 5:36
5. "One Mint Julep" (Toombs) - 6:04
6. "Hub's Nub" (Hubbard) - 6:51
(Bonus)
7. "Open Sesame"(alt.take) - 7:16
8. "Gypsy Blue"(alt.take) - 6:28


Personnel:
Freddie Hubbard: trumpet
Tina Brooks: tenor saxophone
McCoy Tyner: piano
Sam Jones: bass
Clifford Jarvis: drums


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